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深部の探索と力の結晶

 騎士団が残した野営の跡と掘り返された壁。彼らがこの「試練の洞窟」で何かを探していたことは、もはや疑いようがなかった。俺たちは警戒を強めながら、彼らが進んだと思われる通路の奥へと足を進めた。


 ダンジョンの深部は、入り口付近とは明らかに様相が異なっていた。通路はより複雑に入り組み、空気も重く淀んでいる。そして、出現する魔物も格段に手強くなっていた。


「グルォォォ!」

 硬い岩石の体を持つゴーレムが、鈍重だが破壊的な拳を振り下ろしてくる!


「リンド、ブレスで動きを止めろ! プル、ゴーレムの足元に粘着液!」


 俺の指示に、二匹は即座に反応する。リンドが放つ熱波がゴーレムの動きを一瞬鈍らせ、その隙にプルが《粘着液》で足元を固める。動きを封じられたゴーレムのコア(弱点)目掛けて、俺は強化した剣撃を叩き込んだ!


 他にも、毒液を飛ばしてくる大型のケイブスパイダーや、冷気を纏うスケルトンナイトなど、厄介な敵が次々と現れる。戦闘は激しさを増し、俺もプルもリンドも何度か危ない場面があったが、プルの《ヒール》と【収納∞】から取り出すポーション、そして何より、これまでの戦闘で培ってきた三人の連携によって、なんとか切り抜けていく。


 戦闘を繰り返す中で、俺たちのレベルは着実に上昇し、プルとリンドも目に見えて強力になっていた。リンドのブレスはもはや単なる熱波ではなく、明確な炎の形を取り始めており、低空飛行からの突進はオークすら吹き飛ばす威力を持つ。プルも回復力が向上し、時折、水の刃のようなものを飛ばす新しい攻撃の兆候を見せていた。


 やがて俺たちは、洞窟の中でもひときわ広い空間にたどり着いた。その場所は、まるで何かの儀式場跡のようだった。中央には風化した祭壇があり、壁には解読不能な古代文字がびっしりと刻まれている。

 そして、ここにも騎士団の痕跡が色濃く残っていた。祭壇の周囲は念入りに調べられた跡があり、壁の文字も何かで擦ったような跡がある。さらに、床には激しい戦闘があったことを示す傷跡や、壊れた罠の残骸のようなものも散乱していた。


「奴らは、ここで何かを見つけようとして、そして何かと戦ったのか……?」


 この場所自体が、彼らの目的だったのかもしれない。あるいは、この先に何かがあるのか。

 俺は周囲を注意深く観察した。騎士団はかなり乱暴に探索を進めたようで、掘り返された土砂や瓦礫があちこちに散らばっている。


(ん……?)


 その瓦礫の山の中に、微かな光が点滅しているのに気づいた。俺は慎重に瓦礫を取り除き、光の源を探る。

 そして、見つけ出したのは――手のひらサイズの、淡い青色の光を放つ結晶石だった。ひんやりとしていて、内部には複雑な模様のようなものが揺らめいている。


「なんだ、これ……?」


 俺がその結晶石を手に取った瞬間、脳内に直接声が響いた。いや、声ではない。情報が流れ込んでくるような感覚だ。


《スキル【収納∞】に親和性の高い魔力結晶を検出。取り込みますか? YES/NO》


(スキルに取り込む!? こんなこと初めてだ……!)


 危険な罠かもしれないという考えもよぎったが、この結晶石からは悪意のようなものは感じられない。むしろ、心地よい魔力の波動を感じる。そして何より、俺のスキルが「親和性が高い」と言っているのだ。


(……YESだ!)


 俺が心の中で応じると、結晶石は眩い光を放ち、俺の手に吸い込まれるように消えていった! 直後、俺の意識に新たな情報が流れ込む。


《【収納∞】スキルが進化しました。以下の機能が追加・強化されました。》

《・経験値貯蓄効率が向上しました(取得経験値の75%を貯蓄可能に)。》

《・経験値分配時のロスが軽減されました。》

《・収納スペース内に『時間停止空間』領域を作成可能になりました(容量制限あり)。生鮮食品やアイテムの劣化を防ぎます。》

《・収納スペースへのアクセス速度が向上しました。》


「なっ……なんだこれ!?」


 思わず声が出た。経験値の貯蓄効率が50%から75%に上がり、分配ロスも減る? それだけでも破格の強化だ。さらに『時間停止空間』だと? これがあれば、食料の保存はもちろん、例えば採取したばかりの薬草の鮮度を保ったり、あるいは……使い道は無限にありそうだ!


「ぷる? きゅる?」

 プルとリンドが不思議そうに俺を見上げている。


「すごいぞ、二人とも! なんだか分からないけど、パワーアップした!」


 俺が興奮気味に伝えると、二匹も嬉しそうに鳴いた。

 この結晶石……もしかしたら、騎士団が血眼になって探していたのは、これだったのかもしれない。彼らはこれを見つけられず、あるいは見つけたものの起動できずに撤退したのだろうか?


(どちらにせよ、これは僥倖だ!)


 この新たな力があれば、騎士団が相手だとしても、対抗できるかもしれない。いや、やり方次第では……。


「よし、今日の探索はここまでだ。一度村に戻って、この新しい力を整理しよう」


 俺は興奮を抑え、プルとリンドに声をかける。

 思わぬ収穫を得た俺たちは、意気揚々と、しかし警戒は怠らずに、ダンジョンの入り口へと引き返し始めた。

 騎士団の影は依然としてちらついているが、今は手に入れた新たな力への期待感がそれを上回っていた。この力が、俺たちの未来をどう変えるのか――胸が高鳴るのを感じていた。

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