ホントにこんなことあるんだ
なぜかお酒にまつわる話しか思いつきませんので、本日はわたくしがお酒の席で実際に体験した「ホントにこんなことあるんだ」なお話しをしたいと思います。
一つ目は、今から三十年ほど前、まだわたくしが二十一、二歳の頃お話です。
わたくしと親友のF子ちゃんはちょっとお高いバーで二人で飲んでいました。結構広いお店だったのですが、お客さんがまばらだったので平日の夜だったかもしれません。
そんな中、わたくしたちはカウンター席に座って比較的静かに飲んでいました。
するとバーテンダーさんが、注文していないお酒をスッと出してきました。
わたくしたちが「注文してませんけど?」という顔でバーテンダーさんを見ると、
「あちらのお客さまからです。」
と、反対側のカウンター席で一人で飲んでいる男性に目をやったのです。
わたくしたちはもちろんこう思いましたよ。
『ホントにこんなことあるんだ!?』
でもこの先はなんとも格好がつかないことになりました。
「お礼を」とバーテンダーさんに促され、わたくしたちは、きちんとお礼をしなければ!と張り切り過ぎ……。席を立ち、その男性の元まで行って「ご馳走様です」と律儀にお礼を言ってしまったのです。
男性もバーテンダーさんも苦笑いです。
席に戻るとバーテンダーさんにしっかり、「ああいう場合は席から会釈すればいいのですよ。」と指導を受けてしまいました。
恥ずかしくも嬉しいこんな体験は後にも先にもありませんので、残念ながら教えを実行する機会は訪れていません。
もう一つは、さらに五年ほど経過してからでしょうか。
わたくしは後輩の男性と二人で五百円バーに入りました。もちろん色気のある関係ではありません。
この日は金曜日だったので店はとても混雑していました。店内もとても狭く、その中に可能な限りのテーブルとイスが詰め込まれているような有様でした。
ザワザワと落ち着かない雰囲気に、店選びを失敗したな、とお互い思いながらとりあえず一杯注文して飲んでいたときです。
「君の瞳に乾杯」(チリン)
隣のカップルの男性のセリフでした。
『はあ?!』
わたくしたちは顔を見合わせ、文字通り数秒固まりました。
不躾に男性を改めて観察したところ、ちっともふざけた雰囲気はありません。彼は至って真剣です。女性も目をハートにして恥ずかしそうに男性を見ています。
ここ、そんな雰囲気の店じゃないだろ!!
全力でツッコミたい衝動をなんとか抑え、わたくしたちは目で合図し合い、グラスを一気に空にし、全速力で店を出ました。
店を出た瞬間、『在り得ん!』と二人で盛大にツッコミました。
あのカップル、今も幸せにしているでしょうか。
皆さまも信じられないような体験、したことございますか。