アレルギー
わたくしが初めてアレルギー症状を起こしたのは猫だったと思います。
小学校からの帰り道、見知らぬ家の飼い猫に出会いました。
人懐こいその猫にわたくしはどこかで耳にした、鼻と鼻をくっつけると仲良くなれる、というのをやってみたくなりました。されるがままの猫を抱き上げ、顔の白いその子のピンクの鼻と、ヒゲがなんとなくくすぐったかったのを憶えています。その後も体を撫でたりしてその子と戯れ家に帰る道すがら、もうくしゃみと鼻水が止まりません。家に帰って母に症状を訴えると、外に居る猫に顔を近付けてはいけないと注意されました。しばらく時間が経つと症状は治まり、あれはなんだったんだろうと思った記憶がぼんやりとあります。
その猫は外を散々歩き回っていたのでしょうから、何か別の要因もあったかもしれません。あれは四十年以上前の話ですから、当時アレルギーという言葉は一般的ではなかったでしょうが、母はなんらかの知識を持っていたのでしょうか。
それからわたくしは、猫に顔を近付けることはしなくなりました。でも、猫が屋内に居る場所に行くと鼻がムズムズしてくるので猫アレルギーだと思います。
ちなみに、積極的に触れないだけで猫は好きです。
その後しばらくアレルギー症状とは無縁だったと思います。
ですが二十一歳のときでした。わたくしはこの年に車の免許を取ったのですが、人命救助講習の人口呼吸の演習中に右肘を痛めてしまったのです。なんで?と疑問に思われるかもしれませんが、そこに至るまでの長い長い説明は今回は省略さていただきます。
とにかく、病院に行き痛み止めを飲む生活が二週間ほど続きました。
薬がなくなる頃合いに診察のため病院に行って手を診せると、途端に先生が慌て始めました。むくんでいると言うのです。ほかにも違和感があるところはないかと問われ、そういえばここ数日足が異常にむくんでいるが生理中だからだと思ったと伝えました。ですがそのむくみはどうやら、痛み止めによるアレルギー症状だったらしいのです。急いで準備をされ、三十分程度の点滴を受けました。混む時間を避けようともうすぐ昼休憩という時刻に病院に行ったせいで、病院のみならず薬局の方にまで迷惑をかけてしまいました。
以来、その系統の痛み止めは飲めません。
それからも歳を重ねるにつれ、ちょこちょことアレルギー症状が出てはいました。
が、いちばんショックだったのは、トマトアレルギーになってしまったことです。
わたくしは幼少の頃からトマトが大好きでした。二、三歳頃の白黒写真に、顔と同じくらいの大きさのトマトにかじりついているものがあるくらいです。
もう十年以上前でした。その日も夫の実家に行き、トマトやレタス、ゆで卵の入った義母の手作りサラダを食べ、家に帰る車中、くしゃみと鼻水が止まりません。そのときはまさかトマトが原因だとは思っていませんでした。
でもその数日後、今度は家でトマト入りの冷やし中華を食べてから症状が出ました。
あまりに激しい症状に、後日アレルギー科のある病院で検査を受けました。そのときはゴマが原因だと思っていたのですが、後日出た血液検査の結果、トマトに反応していることがわかったのです。
衝撃でした。大好きなトマトがもう食べられない……。
信じられないわたくしは、無農薬なら大丈夫だろう、とミニトマトを食べました。ダメでした。
その後もつい、自分がトマトアレルギーなことを忘れ、習慣的にトマトメニューを頼んでは症状が出る始末。ひどいときはケチャップすら食べられませんでした。
今は生のトマト以外は食べられますが、なんとなく寂しい日々を送っています。
わたくしはさほど酷い症状ではありませんのでこの程度で済んでおりますが、もっと重篤な症状に苦しんでいる方もいらっしゃるでしょう。
年齢を重ねると、思わぬアレルギー症状が急に出てくることもあります。
皆さま、充分にお気を付けくださいませ。