ブラッドハウンズ
「良いだろう。おれは客を選ばん。乞食から大統領まで、カネを持ってくるヤツは相手してやる」
原作通りの嫌味な言い草と表情だ。なんとなく安心感を覚えてしまう。
そんなレイ・ウォーカーの部屋に、カルエとルキアは招き入れられる。薄暗く煙たい部屋には、無数のモニターが並び、様々な情報が羅列されていた。レイは椅子に腰掛け、カルエたちに向き直る。
「良いか? オルタナは小悪党だが、問題はヤツの持ってるギアだった。もっとも、それがどこにあるか知らないがな」
白々しい演技とともに、レイはモニターのひとつを指差す。
「ブラッドハウンズ、を知ってるか? 暴力主義者どもだ。連中はオルタナを襲撃し、重要なギアを奪おうとしてた。だが、オルタナは死亡。デバイスはどこにもない。では、連中の狙いはなんだと思う?」
「そのギアを奪ったヤツらへの襲撃だろ?」
ブラッドハウンズ。レイが語るように、暴力でありとあらゆる問題を解決する荒くれ者の郎党だ。それでいて、情報筋をしっかり持っているのだからタチが悪い。また、原作でも主人公サイドやカルエと抗争することとなる。
そして、カルエは話がだいぶ進んだところで、この組織と引き分ける。引き分けと言っても、ファンの中ではカルエの負けだと認識されていたりする。
「もちろん。ただ、君たちはとても運が良い。ブラッドハウンズのボスはある情夫に入れ込んでいて、護衛も最低限しかつけずに行動してることを知れたのだから」
「情婦?」ルキアが怪訝そうな顔になる。
「あの外道も愛がほしいのさ。さて、おれはいまからトイレに行く。くれぐれもブラッドハウンズに関する情報を見ないように」
つまり、いますぐ情報収集しろという合図だ。カルエとルキアは目を合わせ、パソコンからブラッドハウンズの情報を漁っていく。
「随分小洒落たビルね。ブラッドハウンズのボスの女がいるとも思えない」
「だな。しかも確かに、護衛がろくについてない」
「これなら簡単に獲れるわね。だけど、問題は……」
「どの組織になすりつけるか、だな」
ウィング・シティには腐るほどの地下組織がある。カルエとルキアはそのどれにも属していないし、原作通りに進めば属すこともない。
なら、オルタナからギアを奪ったことが発覚する前に、混乱を起こしてしまえば良い。現状睨み合っているだけの裏組織が本格的な抗争を始めれば、カルエとルキアの安全は保障される。
「あ、連中と係争しそうな組織、見つけたわ」
「どれ?」
「ブルームーンよ。アイツら、ブラッドハウンズとシマを奪い合ってるわ。あれの情報が正しければね」
ルキアとレイの折り合いは良くない。これも原作どおりだ。ツンデレというわけでもなく、本気で毛嫌いしているのである。
そんなルキアの態度を見て、カルエは思わず鼻で笑う。
「なによ」
それにしても可愛い子だ。ムスッとした態度なのに、ここまで愛らしい子もいない。
「いや……、その図面で行こう」




