根比べ
「ぐゥ!!」
あと数メートルのところで、アラビカは膝をつく。だが、この程度でくたばるタマでもないのは、原作で履修済みだ。
「やってくれるじゃねェか……。オマエは!!」
アラビカは手に炎を巻き起こし、それをカルエに向けて発射した。当然カルエは右手で触れ、それを無効化するが、その動作が命取りとなる。
「──うッ!!」
(分解しきれていないッ!?)
あまりにも巨大な炎の塊は、カルエの無効化をも貫いた。分解しきれなかった炎が、カルエの改造された右腕に当たり、ジジジ……と機械音が聴こえる。その頃には、カルエの右腕は動作不能になってしまった。
「あちぃ!! クソッ!!」
「ははッ、そうさ。ギアには限界がある。おれの本気の火災が無効化できると思うなよ!!」
そう言い放ち、アラビカは手を空に向ける。すこしずつエネルギーが溜まっていき、やがて溶鉱炉のような炎が集結した。
「おらァ!! おれを倒してェんだろう!? だったら気合い入れねェとなぁ!!」
冗談じゃない。こんな攻撃をまともにくらえば、カルエの身体は溶けてなくなる。穴が空いた天井を包み込むほどの炎を、無効化できるわけがない。
そうであれば、もう四の五の言っている暇はない。
カルエは、アウェイクニングで手にした“ルールを捻じ曲げる”必殺技を使う。
(捻じ曲げられるルールにも限界がある……。本当はアラビカを消し炭にしたいけど、ヤツに炎は効かない。ギアもルールを捻じ曲げて発生する以上、ヤツのギアが関与しないところで攻撃しなくちゃならない。だったら──!!)
そして、
カルエに太陽のごとく膨張した炎が直撃した。
「くくッ、ははッ……ぎゃはははははははは!!」
腹部から血を垂らすアラビカは、勝ったことを確信し、カルエを嘲笑する。
「威勢の良い無法者だったと覚えておいてやるよ……、カルエ・キャベンディッシュ!!」
そのとき、
寒気がアラビカの身体を襲った。その違和感の正体を、アラビカはしっかり見据える。
「てめェ……!!」
アラビカは身体を改造してある。そして、ギアと身体改造は相容れない。そうであれば、カルエはアラビカの身体のルールそのものを変えてしまえば良い。
彼はありとあらゆる火災や雷撃でダメージを負わないが、それは身体改造によってもたらされている。
よって、アラビカの身体のルールは変更された。いま、アラビカの身体には火がまとわりついている。自分で出した炎が、彼を包みこんでいる。
「クソッ!! チクショウ!! あちィ! あちィ!!」
身体に数百度の炎がまとわりつき、アラビカは倒れ込んでのたうち回る。
しかし、この状況はあくまでも“カルエが意識を保っている”状態でないと発生しない。カルエの身体はすでに限界寸前。あんな巨大な炎をくらったのだから、当然である。
「さぁーて、根比べと行こうぜ……? アラビカ署長!!」




