MWFカルエVS署長アラビカ
「……、」
されど、アラビカは手応えを覚えていなかった。直撃したはずなのに、それを逸らされたような感覚につままれる。
やがて、暴風が鳴り止む。カルエ・キャベンディッシュは、当たり前のようにそこへ立っていた。
「おもしれェ。おれの一撃くらったのに、まるで響いてねェ。だがよォ、これしきでおれが怖気づくとでも!?」
アラビカの声が雷鳴のように響き、外から雷の音が響き渡る。つまり、アラビカは雷撃をくらわせようとしているわけだ。
そして、
アラビカはなんの躊躇もなく、警察署の一本道の廊下に雷を降らせた。
だが、
またもやカルエは無傷だった。
「なるほど……」冷や汗を垂らし、「オマエ、ギアによる能力を無効化できるな? オルタナから奪った代物だろ? 恐ろしいモンを手にしたな」
「わざわざ説明してやると思うか?」
「思わねェよ。対策ならあるからな」
アラビカの手に炎が巻き起こる。それらはカルエへ向かっていかず、あたり一面を燃やし尽くした。すでに天井へ雷撃による穴が空いているため、酸素欠乏になることはないが、ギアによる能力発現で起きた現象と副産の区別がつかなくなった。
「さあ、この場合どうするんだ?」
アラビカは災害を従える男。原作でも、炎や雷によるダメージを受けないのは明記されてある。それが自身で起こしたものだろうと、誘爆的に起きたことであろうとも。
では、災害を無効化する男と、カルエはどうやって闘うつもりなのか。
(さっき、ルールを捻じ曲げたけど……たった一瞬で動くのもきつかった。恐ろしいほど正気度が下がっちゃう。奥の手をいつ切るか、で決まるな)
カルエにはもうひとつギアがある。トラマーから奪ったものだ。それに、両脚と右腕を改造してある。脚にはブースターもついている。もっとも、空を飛べるのは数十秒程度だ。
対するアラビカは、ランクAAAの化け物。『火災』『雷撃』『風災』という災害関連のギアを3つ装着していて、身体改造も申し分ない。
普通にやれば、勝てるわけがない相手。挑むことそのものが、愚かしい敵。
だからこそ、アラビカに勝たなければ、話を前に進めることも、ハッピーエンドもつかめない。
「随分神妙な面ァしてるじゃねェか。命乞いのセリフでも考えてンのか?」
「ああ……、オマエが電気椅子に送られたとき、どんな面してるか考えてたんだ」
「はッ、馬鹿にしてくれるじゃねェか……!!」
刹那、カルエは一本道の廊下の果てまで吹き飛ばされた。メキメキ……と骨か改造パーツが情けない音をあげる頃、犬歯を見せるアラビカが距離を詰めてきた。
「クソッ……!!」
「だが、おれを電気椅子送りにしてェのなら、もうすこしやる気出さねェとなぁ!!」
まるでチーターのような速度で、アラビカは詰め寄る。直接届く距離になったとき、カルエの顔面は見るにも耐えないものに変化するだろう。
そして、
カルエは、馬鹿正直に真正面から向かってくるアラビカ相手に、エネルギービームを放った。碧い閃光は、アラビカの胴体を貫く。




