一蓮托生
『…………、は?』
「さっき、警察から襲撃を受けたんだ。ブラッドハウンズの連中に逃がしてもらったけど、彼らは全滅状態。でも、警察側も相応のダメージを負ってるはずさ。しかもアラビカの右腕のジャッジマンも始末した。好機が目の前まで来てる。だったら挑むしかない」
電話越しのルキアはしばし黙り込み、やがて言葉を発した。
『……分かったわ。アラビカと対峙すると決めたときから、もう貴方と私は一蓮托生だものね』
「うん。ごめんね」
『謝るのは、負けたときにして。私は武器を用意して警察署の近くまで向かうわ。ところで、カルエ』
「なに?」
『アラビカのギアは把握してるのかしら?』
「うん」あっさり言い放ち、「ヤツは、災害を従える男だ。ランクはAAA。雷鳴、火災、風災の3つを操る。マルガレーテが逆らうなって言った理由も分かるだろ?」
『……、勝てる見込みは?』
「ギアのアウェイクニングに賭けるしかない。さっき、ジャッジマンと闘ったとき、確かにおれのギアは覚醒したはずなんだ」
アウェイクニング。ギアが完全に脳内へインストールされたときに現れる、隠し能力。カルエは最前の戦闘で、無効化を通り越して既存のルールを塗り替えることに成功した。それがアウェイクであるのなら、勝ち筋はそこに見いだせる。
『もう貴方を信じるしかないわね。開き直ってるとも言えるけど』
「どっちにしても、おれがなんとかするのには変わらない。さあ、ルキア。人生を変えてやろう」
カルエはニヤリと笑う。
*
夜の第3警察署。閑古鳥が鳴くほど、ひとけは薄かった。
中はきっと、お通夜会場みたいになっているだろう。虎の子のジャッジマンが撃破されたのだから。
そんな中、適当に盗んだ車の中で、カルエとルキア、カリナは最後の作戦会議を行っていた。
「カリナ、この位置から電子機器を破壊できる?」
「できるよ~。なんか、身体軽いし!」
「助かるよ。でも、能力をフルで使ってるときは無防備になるでしょ?」
「うーん。分かんない……」
「なる可能性のほうが高そうだね。よし、マルガレーテかジーターに護衛してもらおうか」
「私は貴方についていけば良いの?」
「うん。シックス・センスで敵性の位置を知らせてほしい。雑魚はトラマーから奪ったビームで吹き飛ばすからね」
「分かったわ。カルエ、終わらせましょう」
「もちろん」
カルエはジーターにメッセージを打ち、カリナの護衛を任せる旨の文章を打ち終わる。
深呼吸し、カルエは、カルエに入り込んだ少年は、
(ここまで来た……。カルエ・キャベンディッシュを勝たせるっていう目標の一端に。でも、ここからがスタートだ。勝利へ向けてのスタート。よし……!!)
「行こう」
カルエとルキアは最低限の武装と『M2011』に12発入りのマガジンをふたつ持って、警察署の入口へ歩み寄っていく。
「ねえ、ルキア」
「なによ」
「愛してるよ」
ルキアは鼻で笑いつつ、顔をやや赤らめ、
「死にに行くわけじゃないんだから」




