物語の歯車をぶっ壊し
「アラビカ、だぁ?」
マルガレーテは露骨に訝るような口調と表情になる。彼女は続けた。
「オマエ、アラビカがどれだけ強えのか分かって言ってるのか? この街の裏社会のクズどもにも、アイツだけには逆らわないって不文律があるんだよ。歯向かえば最後、全員魚の餌だからな」
「知ってるよ。でも、アイツがいなくなれば、おれらのビジネスはもっとやりやすくなる」
「そりゃそうだけどよ──」マルガレーテの言葉を遮り、「そして、おれたちが組めばアイツを打倒できる──」そんなカルエの発言を妄言だと思ったのか、「バカバカしい。だいたい、なんの根拠があってそれができるんだよ?」マルガレーテは呆れ返っていた。
されど、「できるさ。アラビカは所詮、雇われの警察だろ? だったらアイツが警官でいられないような大騒ぎを起こせば良い」カルエには確固たる計画があった。
この世界には原作がある。その原作において、アラビカは主人公勢に敗北することで退場する。
とはいえ、その方法は“主人公補正”ありきだ。補正によってアラビカが何度も失態を繰り返し、やがて追い詰められ主役と対峙するものの、そこで負けて全権限を剥奪され、彼は捕まる。
それは言い換えると、主人公補正がなければ勝てないほど、署長アラビカという人物は実力・権力をともに持ち合わせているわけだ。
であれば、カルエはどのようにアラビカを攻略するか。当然、ここで攻略方法を出さなければ、マルガレーテは納得しないだろう。
そんな中、カルエはオーバーヒートが収まったため、ふらふらと立ち上がる。
「良いか? アラビカは昔ながらの汚職と賄賂が大好きなクソ野郎だ。知っての通り、な。だけど、この街はもう一度立ち直ろうとしてる。おれたちみたいな無法者や、汚職警官を排除してな。となれば、アイツの椅子は決して安泰じゃない」
「そうか? アイツ、市長にも取り入ってるって話じゃねえか」
「実のところ、市長がアイツを排除したがっていたら?」
「……!」
「確かな情報筋だよ。ウィング・シティの市長は、表面上はアラビカと癒着してる。けど、アラビカのやり方は野蛮。アンタも部下が逮捕されてるはずだから知ってると思うけど、アラビカの暴力性は異常だったろ? で、話は簡単だ。市長の再選の話、知ってるよな?」
マルガレーテは腕を組み、カルエの話に真剣に耳を傾け始めた。まだ疑念はあるようだが、カルエの言い草には一理あることにも気がついているようだった。
「市長が再選するには、アラビカみたいな暴力者はいらない。この街は表向きだけでもクリーンになる必要があるからね。おれたちは結託し、野郎の汚職の証拠を探し出す。たとえ警察署を襲ってでも、な」
物語の歯車をぶっ壊し、カルエたちが勝負する。そのターンは直ぐ側まで来ている。
シーズン1おしまいです。次章『The Hitman 汚職警官をぶちのめせ!!』をお楽しみに。
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