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第四話『あの人はもう気づく頃よ』


 服をあげる、と言ったサラマンダーは、放心状態の私をそのままに、自分はさっさと脱皮し始めた。

 どーゆう代謝をしているのか、サラマンダーは続けざまに脱皮を繰り返し、気がつくと辺り一面、このトカゲの抜け殻まみれになっていた。

 ちなみに何故このサラマンダーとフツーに喋っているのかと言うと、このトカゲが喋れるのではなく、私の生来スキル【言語翻訳機能】が発動しているからのようだ。


『こんなもんかな』


 言いながら、今度は抜け殻を裂いて行く。

 さけるチーズを裂いた時みたいに、白い繊維が、蜘蛛の糸のように拡がった。


「……なに、してるの……?」


 明らかに『火属性』以外の『元素』を使って『道具の作成』をしているサラマンダーに、私は訊ねる。

 __アンタ、さっき自分で『錬金術』は使えないって……加工は『錬金術』には入らないのだろうか?


『知らないのかい? サラマンダーの革繊維は丈夫な衣服になるんだよ』


 白くなった皮を次々と繊維に換えながら、サラマンダーは呟いた。


「ああ……そういうコト」


 忘れていたコトを思い出すかのように発動したホムンクルスの知識が、私の脳内にさまざまなコトを教えてくれる。


 __つまりサラマンダーの革は、竹取物語で言うところの『火鼠(ひネズミ)皮衣(かわごろも)』だ。

 ちなみに、火鼠の色は純白らしい。

 だからか、と知識を閲覧し終えた私は思った。

 だから、このサラマンダーの抜け殻も白いのか__


『ちょうど、ここには色んな素材があるからね。錬金術で色々、混ぜてしまおう』


「……あまりのんびり出来ない。あのお爺さんが来る」


 もうそろそろ、私が『錬成』された部屋に着いている頃だろう。


『ソレもそうか。じゃあ、このカバンの中に、そこの棚にあるモノを色々と詰め込めばいい』


 __この部屋にカバンなんてあっただろうか?


『さっき作ったんだ。道具入れは必要だろう?』


 __なるほど。

 ほんのりと温かいレザーのショルダーバッグを受け取った瞬間、


『インベントリアイテム【錬金術師のカバン】を入手しました』


 という羊皮紙色のウインドウが、脳内に表示された。

 取り敢えず、言われた通り私は棚にある道具や何かの素材をカバンに詰め込んでいく。

 大きさはカバンに入るサイズまでしか入らないが、どれだけ入れてもパンパンにならないし、重さを感じない。


『服も出来たよ』


 言われて、何故か丁寧に畳まれている衣服を受け取る。

 受け取りながら、そー言えばこの世界ってRPGゲームみたいな世界だったな、ということを今更ながら思い出す。


『入手した防具アイテム【火蜥蜴(トカゲ)と元素のアルケミストローブ】を自動装備しました』


 という表示が出た途端__


「うっ⁉︎」


 私は、一瞬だけ光に包まれた。

 光が収まると、私の姿は変わっていた。

 チュニックワンピースの上から、裾が足首までのローブコートを羽織っている。

 __ちなみに下着と靴下付きだ。

 ついでに靴まで作ってくれたのか、脛までのハーフブーツを履いている。


  __よーやくスッポンポン状態から脱出した。

 ほっと安堵の息を吐いた時、地面が揺れていることに気づく。


「げっ⁉︎」


 こ、()()()()()()……!


『ゴーレムども! 全ての扉を開けるのぢゃ!』


 遠くからお爺さんのそんな叫び声と、命令を受けたらしいゴーレム達が、ガチャガチャ扉を開ける音が聞こえる。


「や、やば……!」


『急いで逃げた方が良さそうだ』


 背中の皮膜で羽ばたいたサラマンダーは、私の肩に留まる。


『走るのは得意かい?』


「……あなたは得意じゃないのね?」


『大きさと歩幅の問題さ』


「あ、そう……」


 というか、疲労の制限を受けないゴーレム相手に鬼ごっこは、こちらが圧倒的に不利だ。

 だったらせめて何か機動力のある乗り物があれば……かと言って、自動車なんて複雑なモノ、短時間で錬成なんてできないし、そもそも材料が足らない。

 バイクも同じ理由で却下だ。

 せめて人力で動かせるくらい簡単な構造のモノが望ましい。

 そう、例えば__


「あっ……」


 __思いついた。


「ちょっと手伝って」


『うん? ああ、いいとも』


 私の右目が赤きティントゥクラ__つまり『賢者の石』ならば、コレを触媒に鉛などの卑金属を『金』に錬成することが可能なはずだ。


 金__つまり『金属』に!


 破壊した檻の残骸と扉を素材として、サラマンダーの炎で熱され元素がほぐされたたそれらを、水と土と風を組み合わせた錬成術式で、水飴細工のように新たなカタチに構築し直す!


「……あれ?」


 完成した自転車のグリップを握って、気づく。

 手の火傷は、いつの間にか跡形もなく治っていた__


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