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第三十話『月明かり 迎撃』

 先制攻撃は、まずは私から。


「ふっ!」


 跳躍して一気に距離を詰めた私は、地面を穿たんばかりの震脚を打ち鳴らし、同時に魔力を込めた寸頸(ワンインチ・パンチ)を叩き込む!


「ごえあ」


 胃の中身を逆流させながら、体内を渦巻く爆発的エネルギーを受けた忍者は身体をくの字に折り曲げ、脚を宙に浮かせたまま数メートル後方へと、弾丸のように放り出される。


「貴様ッ!」


 叫びとともに、別の忍者が放った剣先が迫ってくる。

 突進の勢いに右足で急ブレーキをかけ、威力と体重を乗せた渾身の刺突だ。

 迫り来る刃に、私は頭を横へずらす。

 僅か二センチの距離で、切先が頬をかする。


「しっ」


 気合もかけず、ただ歯の隙間から息を吐いただけの殴り返しを打ち込んだ。

 それだけで、忍者は仰向けに吹っ飛び、頭から建物に激突して、床に落ちた。


「なっ__がっ⁉︎」


 驚く別の忍者に、震脚を打ち鳴らして当て身を放つ。

 吹っ飛ぶ彼と入れ違いに、


「ぅおおっ‼︎」


 別の忍者が、躍り掛かってくる。

 私は突き出される剣の柄を掴むと、そのまま背負い上げの要領で、驚いた表情の彼ごと地面に叩きつける。


 じん、と拳が痺れるので見ると、手の皮が剥けて、血が滲んでいた。


『殴るのはやめた方が良さそうだ』


此奴(こやつ)ら、布の下に鉄の鎧を着ているでござる』


 __なるほど。


 頷き、私は腰に吊っている【ソード・オブ・アゾット+5】に手をかける。


「いぃいぃぃぃぃいやぁあぁあああああッ‼︎」


 背後からそんな叫び声と、ぶん、と空気が鳴った。

 私は屈んで攻撃を(かわ)すと、相手の胸部へと左の回し蹴りを叩き込んだ。

 足跡を刻印されて、地面から五センチばかりも浮き上がった忍者が、そのまま真後ろに吹っ飛んで仲間に激突する。


 __前々から思ってたけど……私の戦い方に、剣はむしろ邪魔か。

 じゃあこの魔導剣はあとで違うモノに錬成し直すとして__


「お姉ちゃん!」


 私は同じように忍者軍団と対峙しているアルエさんへと、鞘から抜いた【ソード・オブ・アゾット+5】をぶん投げた。


「ご、ぁ、っ……!」


 回転し風切り音を立てながら飛んでいった魔導剣は、今まさに剣を振り上げていた忍者の脇腹に分厚い鎧を貫通して突き刺さる。


「使って!」


「判った!」


 アルエさんは、突き刺さったままの【ソード・オブ・アゾット+5】を逆手に引き抜く。

 そのまま床を蹴り、宙を跳ぶ勢いで、女騎士が走る。

 左右の腕にそれぞれ大小の剣を持ちながら。


「はあっ‼︎」


 その両手の武器と、さらに両脚をも使って、アルエは矢継ぎ早の攻撃を繰り出した。

 右の刃で突くと同時に、左の脚が出る。その脚を引き切らないうちに身をひねって左手の刃が逆手で襲う。回転運動はそのまま右脚の蹴りへと繋がり、さらに右の刃が前へ出る。


 卓抜(たくえつ)、という言葉でさえ足りぬ動きであった。


 __ああ、あんな感じでやれば良かったのか……。


「ありがとう、助かったよ。良い剣だな、コレは」


 こちらまで後ろ向きで跳躍したアルエさんは、言いながら剣を差し出してくる。

 この場に集まっていた忍者軍団は、ほとんど倒していた。


「……んー……あげる」


「いや、しかし……」


「じゃあ、貴女の剣、ちょっと貸して?」


「……? あ、ああ……」


 私は彼女から二振りの剣を受け取ると、それを中心に手早く錬成陣を描く。


「ヒート、ハヤテ。お願い」


『ああ』


『承知!』


 精霊たちのチカラも借りて、私は二振りの剣を一つの剣へと『合成』した。


「はい、コレでこの剣は貴女のモノ」


 言いながら、私は一振りの長剣を渡した。


『魔導騎剣【ダイナスト・パニッシャー+5】を作成しました』


『新たなスキルを獲得しました』


 スキル

【合成】New!


 アルエさんはしばらく呆気(あっけ)に取られた顔をしたのち、


「全く……しょうがない()だな。じゃあこの剣は有り難く使わせてもらうよ」


 そう言って、ため息混じりに笑った__

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