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第二話『Q.探し物はなんですか? A.それは服です』


 どーやらこの世界は、よくあるファンタジー物のゲームや漫画やその手の小説の中のような『ゲーム的要素が組み込まれた』異世界らしい。

 スキルや種族と言ったパーソナルデータ……よーするにプレイキャラクターのメニュー画面よろしく、自分のステータスが見れるのだ。


 ちょうど、こんな感じに__


 種族:ホムンクルス

 属性:霊

 職業:錬金術師

 階級:エレメンタリー

 戦闘特技:【体術】【マジック・ブロウ】

 生来スキル:【暗視】【水中呼吸】【毒・疾病耐性】【魔力上昇】【魔法耐性】【言語翻訳機能】

 初期錬金術:【物質変成】【治癒】

 体力:100

 魔力:150

 スタミナ:100


 私にはこのステータス表記が、黄ばんだ羊皮紙を模したメニューウインドウとして目の前に浮かんで見える。

 表示の仕方は簡単で、天井のシミだか模様を見ながら考え事をする時みたいに、上を向いて何処(どこ)か一点を見つめていればいい。


「……人生は小説より奇なり、か」


 言って、自嘲(じちょう)気味に笑う。

 思い出したことだが、私はこの世界とは違う、別次元に住まう人間だった。

 戦争を知らない、平和な日本という国に生まれた、普通の一般人だった。

 それが今では女性型ホムンクルスである。

 うん、まあ、理由は覚えてないから判らないンだケドさ。

 どーやら私、異世界に『転生』したらしい。


 __さて。私の種族であるこの『ホムンクルス』というのは、錬金術によって人工的に生み出された人造人間のことで、長くなるので造り方は割愛させてもらうが、本来ならフラスコの中から一生出られないはずの小さな人間のことである。

 それが人間サイズな上に、フラスコの外でこうして自由に動き回れている。

 ただし、感覚神経が麻痺でもしているのか、肌に触れる気温や触覚などの体感が、まるで布一枚(へだ)てているかのように、ビミョーに鈍い。


 職業の『錬金術師』とは、簡単に言えば錬金術という『化学、医学、薬学の素』となった呪術的な要素が含まれた、れっきとした学問を取り扱う人のこと。


 下にある階級の『エレメンタリー』は、初歩的な、という意味だ。


 そのまま繋げると『初歩的な錬金術師』になるので__つまり私は『新米錬金術師』ということだろう。

 だが、なんだ『属性:霊』って……?


 錬金術にある属性は『火・土・水・風』の『四大元素』か、あるいは『木・火・土・金・水』の『五大元素』もしくは『硫黄・水銀・塩』の『三大元素』くらいなハズだが……。

 いや、確かに『天界の元素』として想定された『第五元素』に『エーテル』というモノはある。


 __ちなみにこの世界でではどーなのかは知らないが、実はただのアルコールのことだったりする。


 だがソレだと、属性表記は恐らく『天』になるはず……。

 この『霊』というモノを『生命』と捉えると、あともう二つほど、思いつくのがあるのだが……いや、()()()ね。

 ()()()()()、そう簡単に生成できるハズが__


「あれ……?」


 思考に(ふけ)りながら、何か着るものはないかと室内を散策していた私は、ひび割れた壁際で倒れていたはずのお爺さんの姿が、いつの間にか消えている事に気づいた。


「……逃げた?」


 いや、独り言から推測するに、自尊心というか、自惚(うぬぼ)れが強そうな人だったから、このまま逃げたとは考えにくい。

 自己顕示欲の塊みたいなあのお爺さんからすれば、飼い犬に手を噛まれた気分だろうから、仲間とか援軍でも呼びに行ったのだろう。

 つまり、また戻ってくる。

 問題は、どーやってこの部屋から抜け出したかという事だ。

 ざっと見渡してみたが、壁も床も天井も、積み合わせた煉瓦(レンガ)みたいな石で囲まれているだけで、出入り口はおろか窓すらなかった。

 私が『錬成』されたカプセル__水槽の周りには、医療機器と制御盤みたいな謎の機械と、床にはその機械と水槽を繋げるコードが伸びている。

 あとはポエムっぽい内容の研究日誌が詰まった本棚と、化学の実験に使うビーカーや試験管が収まった薬品棚が、幾つかあった。


「む……」


 ふと、(くら)い石積みの壁の、一つだけ色と配列の違う石に目が止まった。

 長方形がキチンと重なった壁の中で、この石だけ『正五角形』な上に大きさが人の身長と肩幅くらいまである。


「なるほど」


 隠し扉__というコトは、ここは隠し部屋か。


 どーやらあのじーさん、私の『錬成』を、よほど他人に見られたくなかったらしい。

 あれだけ自意識過剰に騒いでいた人間が、こっそりとする理由。

 後ろめたさ以外で考えるなら、それはつまり、バレたら拙いモノで__あれ、私って……もしかして、けっこー『ヤバイモノ』だったりする?


 __などと、ひとり震えながら。

 色違いの石の隅にある窪みに指を差し入れて、引き戸の要領で動かすと、隠し扉は意外なほどあっさりと開いた__

烏滸がましいとは思いますが、もしよろしければコメント&評価ボタンなどしてくださると嬉しいです!

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