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第十五話『即席チーム』


 ホムンクルスに転生したとはいえ、気持ち的にはまだ『現代人』である私からすれば、それは前時代的な戦いだった。

 にも関わらず一瞬だけ息を呑んだのは、その生命(いのち)と生命のぶつけ合いに対する鮮烈な熱量を、肌で感じたからだ。

 互いに()るか、()られるか。生と死の、危う過ぎる綱渡り。

 あのレッサーオーガも、それに立ち向かう彼らも、()()()()()()()()()()


 だからこそ__


「……きれい……」


 こんなにも、世界が輝いてみえて__

 だからこそ__()()()


「ゴァアアア‼︎」


「う……おおおオオオオオ‼︎」


 繰り出されるレッサーオーガの拳を、私と身長の変わらない少年は、身の丈ほどもある大剣で迎え撃った。

 一合。二合と。

 撃ち合う剣と拳は互いに弾き合い、飛び散る鮮血が、風に舞う花びらのように散らばる。


「__僕のことも忘れないでくれるかい?」


 爽やかにウィンクを飛ばす長身の青年は、構えた円盾(ラウンドシールド)でレッサーオーガの膝を殴り、手にした片手半剣(バスタードソード)で足の甲を、地面に縫い付けるかのように深く突き刺す。


「ガァアアアアアアア!」


 苦痛に()えるレッサーオーガに、


「喰らいなさいっ!」


 魔法使いの少女は頭上に(かか)げていた両手を突き出す。


「【フレア・カスケード】!」


 唱えた少女の目の前に、光の魔法陣が描かれ、その中央から筒状の火炎の濁流(だくりゅう)が噴き出した。


「おわっ!」


「ふっ!」


 射線上にいた少年たちは横っ跳びし、迫り来る炎から逃れる。


「ゴァアアアアアアアア! ガァアアアアアアアッ‼︎」


 ごうごうと燃え盛る業火に全身を包まれたレッサーオーガの絶叫が、空間に響く。


 ()()()__


「ごふぅうううううう……ッ!」


 身を縮めるように(うつむ)き肩を落としたオーガは、息を吹きかけるような唸りをあげ、


「ごぉおおぉおぉおぉおおぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああぁあぁああぁあぁああ‼︎」


 身を反らせ、空に向かって()える。

 その瞬間。肉体から放出された魔力の衝撃波によって、巨躯(きょく)に纏わりついていた炎は四方(しほう)飛散(ひさん)する。


「クソッ! またかよ!」


 少年が叫び、


「でも効いてはいるんだ! 大丈夫、倒せない相手じゃない!」


 青年が、みんなを励ます。


『レッサーオーガはある程度の魔法に耐性があって、アイツ自身も多少の魔法を扱える厄介な魔物(モンスター)なんだ。今のは【マジック・ブロウ】の応用だね』


「でも、回復魔法は持ってないのね」


 言いながら、私は少年たちの方へ歩み寄った。


「あっ! お前! なんでこんなとこにいんだよ⁉︎」


「ア、アンタ……もう立って大丈夫なのっ⁉︎」


「うん、ありがとう。助かった」


 だから__


「今度は私が助ける番だ」


 半身に構えた私は右の小剣(ショートソード)を前に伸ばし、左の拳を腰の位置に引く。

 スッと目を細めると、レッサーオーガの【HP】と【MP】の残量を示すバーが、魔物(モンスター)の右斜め頭上に表示された。

 新スキル【ステータス視認化】は、自分以外の対象の状態を確認できる能力だ。

 __あと、二割くらいで倒せるな、コイツ……。


「た、助けるったってお前……」


「アンタさっきアイツにコテンパンにされたじゃない!」


 少年と少女の顔は、明らかに『お前戦えんのか?』と言っていた。


「むっ……アイツ私の自転車壊した。だから許さない」


「で、ですが……」


 心配そうに、僧侶の少女が私の顔を伺う。


「オーケイ__やろう!」


 成り行きを見守っていた青年が、私と少年の肩に手を置いた。


「ク、クリムさん?」


「オイ、マジかよクリム‼︎」


「この子にはこの子なりの理由があるのさ。それにね、アルト。女の子のお願いは黙って聞くのが、紳士ってもんだよ? ニアちゃんもアリアちゃんも、それでいいよね?」


「は、はい」


「わ、判ったわよ……」


 そう言って微笑を浮かべ、クリムと呼ばれた青年は爽やかにウィンクをする。


「オーケイ! 纏まったね! じゃあ、そろそろ始めよう!」


 それを合図に、私達は駆け出した。


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