6話
6話
皆実夫婦のメールは留まるところを知らず延々と繰り返され入院してから7か月目にようやく退院したのだが、ここで様子は変わった。何故か? 麻美があと数日で退院と言う時、皆実からメールの返事が来なくなった。「ピタリ」と、止まったメールだったがそれ以降、皆実からは永遠に返事は来なかった。
皆実の妻の麻美が病院から一人で退院して帰宅して「ただいまー♪ 貴方ーー♪」麻美は皆実が居るであろうリビングそして皆実の部屋のドアを開けた。すると皆実の部屋からは何かが腐ったような凄まじい匂いがして麻美の足を止めさせた。そして目の前を見ると椅子に座ったまま白骨化している誰かを見つけた。
「け! 警察ですか!!!!」と、妻の麻美。
「落ち着いて下さい事件ですか? 事故ですか?」
「おっとの部屋に誰かの骨があぁー!!!」
「と!! とにかく住所と名前と電話番号を!!」
麻美は一瞬止まった空気の中で言葉を探していた。
「住所は… 名前は… 電話番号は…」
麻美は頭の中が真っ白な状態で、まるで機械のように警察に伝えていたが自覚はなかった。そして10分後に何台ものパトカーのサイレンが麻美の耳に聞こえて来たが、麻美は椅子に座る白骨を前に崩れていた。麻美は瞬きを止めて床に散らばった髪の毛に呆然としていたが正しいだろうか。
警察が麻美の居る家のドアのノブを回しつつチャイムを鳴らし「奥さん! 入りますよ!」と、警察官が大声で駆け付けると警察官の一人が大声を出す「な!! なんだこれは!!」そして麻美の横に数人の警察官が近づく。そして他の警察官達は無線で警察署と話しをしていた。
数十分後、麻美の居る家の中は警察官と刑事と鑑識で溢れた。その間、麻美は警察官の質問に答えられない状態でそのまま病院に運ばれた。そして数時間後、麻美は落ち着いて事情を刑事達に話した。それから一週間が過ぎたが麻美は病院に入院していた。折角、退院したのに病院に逆戻りの麻美は自分の家でみた白骨死体を思い出していた。
だが不思議なことが起きた。
「ああ、麻美かぁ♪ 元気にしてたか~♪」と、一本のメールが麻美のスマホに来たのだった。麻美は自分の目を疑った。何処かへ消えてしまった皆実から突然のメールが来たのだ! そして慌てた麻美は皆実に電話したが繋がるはずも無いままに何度もくるメールの着信音に耳を疑い急いでメールの返事を返した。
「あなた!! ああ、あなた!! 今、何処にいるの!!」
「何処って家に居るよ~♪ どうした? 変なヤツだなあ~♪」
麻美は再び皆実の携帯に電話したが通じなかったことで再び皆実にメールで確認した。
「貴方帰ってたのね♪ よかった~♪ 私、家に行ったけどね、変なの見たの。椅子に座った白骨・・・」
麻美は皆実にメールしつつ異様な何かに困惑していた。
「ねえ私ねw 何度か貴方に電話してるけど繋がらないのよw 変でしょ♪」
麻美は皆実にそうメールした。
「ああ、今は手が離せないから電話は後にしてくれ」
皆実から麻美にメールが入った。
「そう? 分ったわ♪ メールで話しましょうw」
麻美は皆実にメールを返した。すると皆実からも楽し気なメールが頻繁に入り麻美も負けじとメールを返した。そんなメールのやりとりは延々と続き寝る時は「おやすみ」朝は「おはよう」と、二人のメールは信じられない量になっていたが夫婦は時間を忘れてメールを楽しんだ。
「ねえ貴方、いつ帰って来るの? 私も明後日は退院するけど」
「ああ、もう帰ってるが仕事で明後日から出張だ~ 付いてない♪」
「そう… 残念… じゃあいつ会える?」
「ああ、仕事が終わったら連絡して帰るから」
「分ったじゃあ家で待ってるわあ♪」
二人の他愛もないメールだが二人を常に繋いでるのはメールなのである。そして麻美も退院して皆実からの連絡を待っているものの皆実からは連絡はなく、メールも来なかったことで不安になっていた。そして三日が経過した頃、一本のメールが届いた。
「すまん! 連絡しないで! すまん! 仕事が立て込んでて連絡出来なかったんだ」
皆実から来たメールに安心の表情を浮かべた麻美だったが「もう何か月も声聞いてないな…」と、ポツリとつぶやいた。
「ねえアナタ。もう何か月も声、聞いてないよ!」
「すまん。心配かけまいとして言わなかったが実は喉を傷めて声が出ないんだ…」
「ホントに? ホントなの?」
「ああホントだよ。お前に嘘ついてなにになる?」
麻美は「考えすぎだよ~ いくら何でもあの人が浮気してるなんて…」と、左手で髪の毛をサラリと触った。そんな時にでも一時間に数本の皆実からのメールは確実に来ていたことで麻美は疑うことはなかった。