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7章 こんなに近くに トモキ編
ハッと気付くと、空になったお椀とニコニコ顔の店主。
「いかがでしたか?お味は。」
尋ねてくる。
僕は穏やかな気持ちで
「ありがとうございました。すごく美味しかったです。」と
「それは良かった。懐かしかったでしょう?」
ドキッとした。まるで頭の中を覗かれた感覚。
「はい。そうですね。懐かしかったです。」僕は素直に答えた。
「心が疲れた時は、またお立ち寄りくださいね?」婆ちゃん店主はそう告げて来た。
そのニコニコ顔に母の顔が重なる。少しウルッときてしまった。
「はい。必ず来ます。」
懐かしいような温かい気持ちで店を出ようとすると
「あの!」
先程までため息を吐いていた女性だ。
あれ?この顔はどこかで。
「あの、突然でごめんなさい。今から話すこと、笑わないで聞いてもらえますか?」
あ!わかった。
彼女は僕の....。
ふんわりと笑いかけると僕も伝えた。
「偶然ですね?僕も貴方に話すことがあったんです。僕の話しも笑わないで聞いてもらえますか?」