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塩対応の騎士が甘すぎる  作者: 北里のえ
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両想い

*糖度高めです。苦手な方はご注意下さい。



その後のことは良く覚えていない。


ただ、私とルークはユリウスとラザルスに抱えられて辺境伯城に戻り、二人で同じ部屋で療養するよう言われたまま放置されている。同じ部屋といっても当然寝台は別々だし広いのであまり意識せずに看病に専念することができた。


ルークは戦の前から食事を碌に摂らず、栄養失調気味だったそうだ。


それを聞いた料理長がルークのために滋養たっぷりの食事を毎日三食用意してくれている。


何故かそれをルークに食べさせるのが私の役目となっており、今もスプーン片手に満面の笑顔のルークの口の中にお粥を運んでいる。


「はい、あーん」


素直にカパッと口を開けるルーク。子供……というかひな鳥のようだ。


はっきり言って可愛い。内心ドキドキしながら甲斐甲斐しく世話を焼く。


「なんか…こんな幸せでいいのかな?」


食事の後、ルークがふと呟いた。


「どうして?」


ルークの目がまん丸になった。


「どうしてって…。リアとこうして一緒に過ごせるだけでも幸せなのに、こんな風に、その…食べさせてもらえるなんて…すげー幸せだな…って思う」

「そんな…これくらい、いつでも…」


食器を片付けながら顔が熱くなるのが分かる。


「リアが戦場で言ってくれたことも夢みたいで…。本当にあったことなのかなって不安になることがあるんだ。…もう一回言ってくれる?」

「それは、恥ずかしいから嫌だ」


間髪入れずに答えるとルークががっくりと肩を落とした。


あんな台詞、非常時でもないと言えるはずないじゃないか!


「…でも、リアが俺を元に戻してくれた。本当に感謝しているんだ。リアが呼びかけてくれなかったら俺はもっと多くの仲間を傷つけていたと思う。あんなに簡単に操られるなんて情けない」


ルークは本当に落ち込んでいるようだ。


隣に腰を下ろして彼の肩に軽く頭を載せた。


ルークの体が緊張でカチーンと固まったのが分かったけど、まぁ、いいや。


「精霊王様が心に大きな渇望があると魔に憑かれやすくなるって言ってた…」


私の言葉にルークが反応した。


「俺は子供の頃からお前のことが好きで・・好きすぎて…。昔は…必死で諦めようと思っていたんだ。諦められると思っていた。だから、悪魔に魂を売ったんだ。でも、いざとなると未練がましくてさ。お前を見る度に『ああ、俺はリアが好きだなぁ』って思うんだ。誰にも渡したくないって…。ジェラルドとかクレメンスとか…他の男に物凄く嫉妬した。誰にも渡したくない、どうしてもリアを独占したいって。ドロドロした感情をあの鏡に利用されたんだな。あの鏡を覗き込んだ時、昏い欲望が止まらなくなった。あいつの言うことを聞けば欲しいものが全て手に入ると…リアが手に入ると…暗示のように言われて、その後はリアが呼びかけてくれるまでまったく記憶がない。リアの声が聞こえて、少し正気に返ることができたんだ」


「ルーク…ありがとう。ごめんね…。私を救うため悪魔に魂まで……。知らなくていっぱい傷つけてごめんなさい。私が本当に好きなのはルークだけだよ」


あの時、ルークを止められて本当に良かった。


体の力を抜いてルークの肩に身を預けると、彼の体が益々緊張するのが分かった。


「…そ、それで…リアは前世の記憶があるだけじゃなくて、生まれ変わる前に願い事を叶えてもらえる約束を神様としていたって…?」

「うん。神様というか、その部下みたいな人とね。一生に一度きりっていう約束だったの。ルークの魂を救えて本当に良かった」

「……それで良かったのか?」


不安そうに尋ねるルークが愛おしくて堪らない。


「私にとって一番大切な人はルークだから、役に立てて本当に嬉しい。それに、他の人たちの魂も犠牲にしなくて済んだし。一番良い使い方だったと思う」


そう言うとルークに優しく抱きしめられた。


ルークの大きな肩と力強い腕の中が心地よい。


「リア…結婚しよう。今すぐに。一生幸せにする」

「い、今すぐは難しいんじゃない? でも、嬉しい。私もルークのお嫁さんになりたい」


そう言うと、ルークの指が私の顎にかかった。そのまま顔を上に向けられる。


あ……


彼の乾いた唇と熱い吐息を感じてキスされていることに気がついた。


チュッと音を立てた後、唇を一度は離したものの何度も違った角度から繰り返し口づけされる。


あれ…?


さっきまで肩に頭をのせただけでルークは緊張していたのに……。


今度は私のほうが緊張してカチコチに強張ってしまう。ルークが体を離した時には、くたりとへたりこんでしまった。


「ごめん。我慢できなくて……」


私を抱えて背中を擦るルークに「お手柔らかにお願いします」と小声で呟いた。


とんっ


その時、微かな物音が聞こえてルークは即座に立ちあがり臨戦態勢に入った。


彼は怖い顔つきで私を背中に庇うように立ち、甘い雰囲気は欠片も残っていない。


「いや~、仲睦まじくて良かったの~」


聞き覚えのある声だ。ルークの背中越しに例のお爺さんがニコニコしながら手を振っているのが見えた。


「え!? お爺さん!? こんなところで何をやっているんですか!?」


驚いて大きな声が出てしまった。神様の部下みたいなお爺さんはこの世界に登場することもできたんだ?




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