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塩対応の騎士が甘すぎる  作者: 北里のえ
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事後処理

そんな中、久しぶりにティベリオの執務室に呼ばれた。


そこにはルーク以外の主要メンバーが勢ぞろいしている。ここでもルークに避けられるようになっちゃったのかな、と寂しい気持ちになった。


「ユリア…大丈夫か?」


ティベリオが心配そうなので慌てて笑顔を作った。


今は非常時だ。心配かけちゃいけない。


「大丈夫よ!」と言っても、ティベリオやユリウスたちは気遣わしげに見つめてくる。ただ何かを察してくれたのかもしれない。誰も言葉は発しなかった。


ティベリオはすぐに仕事の話に入った。


大雨が降り止み、徐々に辺境伯領の被害の全体像が判明してきた。


準備をしていたおかげで被害は最小限に抑えられたという。怪我人はいたが洪水による死者や行方不明者は出なかったそうだ。


「ユリアが考案した堰も効果があったと地元の領民たちが言っていたぞ」


ユリウスに頭を撫でられて、ほっと胸を撫でおろした。物的損害はあるものの復興にそれほど時間はかからないだろう、とティベリオ。


この世界が生き延びる希望が大きくなった気がする。うん、いい感じだ。


アルバーノさんの報告によると、今後は国軍や騎士団が各地に向かい復興の手伝いや町や村が襲撃されないように自警団の訓練などを行うという。


アルバーノさんは少し痩せた。顎の線がシャープになって以前の軽い雰囲気が無くなった。代わりに男らしさというか力強さが出てきたようだ。


無理をしているような悲壮感はないので、もしかしたらクロエさんのことも乗り越えられたのかもしれない。


とても辛い思いをしたと思う。それを正面から受け止めたアルバーノさんはとても強い人だ。ティベリオもきっと支えになったに違いない。もう、その話題には触れないほうがいいだろう。


次に立ちあがったのはラザルスだ。王都からの知らせで女王が着々と軍備を整えているという報告をした。


王都を守る騎士団は辺境伯領への攻撃を完全に拒否したらしい。


また、王太子は私を逃がした咎で女王から酷い罰を受けたそうだが、カントル宰相が彼を保護し命に別状はないそうだ。


女王はカントル宰相や騎士団に怒りを爆発させた。結局彼らも人々を逃がした後、王都から逃げ出す手筈だという。いずれこの城に到着するそうだ。


既にほとんどの一般民衆は魔物が跋扈する王都から逃げ出しファビウス公爵領で保護されている。最後の一人まで無事に保護すると断言するファビウス公爵は頼もしい。


今や王都には女王一派か、破落戸、魔物たちしか住んでいない。


女王は魔物たちに辺境伯領を侵略したあかつきには、自由にそこの領民を食べてもいいと約束しているらしい。破落戸には略奪し放題だと唆しているそうだ。


相変わらず残酷で卑怯なやり方だ。人々が苦しむのを何とも思っていない。絶対に女王との戦いに勝たないといけない。


ザカリアス王国の他領でも私たちに味方する領地があるようで、ある程度の軍勢がこの城に集まってくる予定だ。


私には人数が増える分の食料の確保と城の防御の仕事が任された。


「最善を尽くします!」と力強く握りこぶしを高くあげる。


いよいよ女王との最終決戦が近い。


城全体の空気が張りつめたものとなった。


***


洪水からの復興と臨戦態勢を整えるために、城の全員が毎日忙しく働いている。


私の主な役割は食糧の補給や調理だが、王都から逃げ出してきた民衆も受け入れているのでどんどん仕事が増えていく。


残念ながら畑は洪水で全滅したけれど、新たな畑を作って魔法の力を活用し再び多くの野菜を収穫できるようになった。


ユリウスとラザルスは任務の合間を縫って狩りにいき、大物を獲ってきてくれるので非常に助かる。貴重な蛋白源だ。


アガタ、モニカさん、ディアナ様も毎日調理場で料理人たちに混じって立ち働いている。城中の全員が一致団結して頑張っている状況だ。


ルークは相変わらず私を避けていて落ち込む時もあるが、忙しいおかげでそればかりに気を取られずに済んでいる。


そして、王都から逃げ出してきたカントル宰相と騎士団が到着した。

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