表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塩対応の騎士が甘すぎる  作者: 北里のえ
62/94

誘拐

*ルーク視点です。



教会では司祭らが待っていた。辺境伯の無事が分かり心から喜んでいる様子だ。


「本当に…本当にご無事で良かったです…。おお、神よ…。しかし、ジェラルドがこんなことをするなんて…信じられません」


ジェラルドがしでかしたことは大きな衝撃だった。複雑な心境のようだ。


俺は抱えていた辺境伯を寝室に移動させ寝台に横たわらせた。


何か神経毒のような薬を嗅がされたと言っていたので、しばらく自由に動くのは難しいかもしれない。


司祭たちに辺境伯のことを頼み、急いでリアの部屋に向かった。


夜遅いからもう眠っているかもな…と思いつつ、控えめに扉をノックする。


するとクロエが顔を出してシーっと言いながら指を口に当てた。


「ユリア様はついさっきまで無理に起きていらしたんです。でも大変お疲れのようだったのでベッドに横になるようお勧めしました。ようやくお眠りになれたばかりなんです。どうか起こさないであげてください」


そう言われると無理にリアに会うのは憚られる。無事な顔を一目でも見たかったんだが……。


仕方なくすごすごと辺境伯の部屋に戻り、アルバーノが息せきって戻ってくるまで奴の警護をしたのだった。


***


幸い辺境伯の容態はすぐに回復し翌朝には普通に起きられるようになった。


夜中遅くまで捜索していたので午前中の予定は全てキャンセルしたと騎士団の副団長から聞かされた。ユリウスは徹夜で後片付けに奔走していたらしい。


俺も休んでいいと言われたので、少し休息を取ろうと自分の部屋に戻る途中で女の悲鳴が聞こえた。


これは…クロエの声だ。


咄嗟にリアの部屋の中に転移する。するとそこには部屋を警護していた騎士が呆然と立ちすくんでおり床にクロエが倒れていた。


窓が大きく開いてリアが寝ていたはずの寝台はもぬけの殻だった。


ベッドに触れると微かに温かい。


まだ近くにいるかもしれない。


俺は夢中で窓から外に飛び出した。後悔と絶望で頭がじんじんと痛む。


どうしてリアが?!


くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!! くそっ!!!


無我夢中で町中を駆けずり回ったが何の手がかりも得られなかった。


誰に聞いても不審な人間は見かけなかったというし、誰かが連れ去れたのを見た者もいなかった。


……転移魔法を使われたのかもしれない。


悔しさで歯を噛みしめるとガリっと嫌な音がした。奥歯が少し欠けてしまったようだ。


徒労感にまみれて教会に戻るとユリウスたちも戻っていた。


皆一様に昏い顔をしており雰囲気がピリついている。


しかし……教会に侵入してリアを攫ったのに近隣住民の誰も気づかなかったというのはあり得るのだろうか?


クロエから話を聞きたいが、彼女はまだ意識を取り戻していない。


辺境伯やアルバーノも握った拳がブルブルと震えている。俺も気がおかしくなりそうだった。


「鳥たちを招集して周囲を捜索している。手掛かりがあれば鳥たちがすぐに持ってきてくれるだろう」


ラザルスが俺の肩にポンと手を置くと、その手が震えていることに気がついた。


弟も心配で堪らないんだ。ユリウスも眉根を寄せて苛々と親指を噛んでいた。兄のこんな様子は初めて見る。


リアが俺たちにとってどれだけ大切な存在かを思い知らされる。


リア、リア、どうか無事でいてくれ……。


その時オウムが窓から飛来した。嘴に何か加えている。


あれは…!? リアがつけていたイヤリングではないだろうか?


「よし、オウムの後を追うぞ!」


俺たちは立ち上がった。


しかし、ティベリオだけはオウムを追いかけようとして、アルバーノに涙ながらに止められていた。


「これ以上俺を心配させないでください。夕べのことがあって、まだ体も本調子じゃないんです! ルキウスたちに任せれば大丈夫ですから!」


取りすがるアルバーノにティベリオも反駁できないらしい。


「ルキウス、ユリウス、ラザルス…どうか、ユリアを、ユリアを助け出してくれ。頼む!」


辺境伯に頭を下げられて『言われなくても!』と内心叫び、俺たちはオウムの後を追って走りだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ