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03 宇宙船にて不老不死になりけり

 下校時間。

 タケは部活に所属してない為、直帰である。

 琴葉も帰宅部で、普段はタケと共に下校しているが「今日は日直で遅くなるので先に帰っていてください」と言われ、タケは一人で下校している。


 一年の廊下を通りかかった時、ユヅキが一人で居残りさせられているのを目撃し「べーッ」と舌を出されたが、鼻で笑いタケは通り過ぎた。

 「先輩のバカぁーーー!!」という声が廊下に響いたが、聞こえないふりをした。


 タケは校門を出て、帰路につく。


 しばらく歩いていると、今朝の事を思い出す。

 ユヅキの事ではなく、自称月の姫の事だ。


「無事、お巡りさんに届けられただろうか」


 今思えば少しだけ可哀想な事をしたな、と思うタケ。

 しかし、そんな思いもすぐに消えた。


「あっ――」


 何故なら、今朝の竹の前にルナが立っていたからだ。


「……」


 目が合った。


「あ、あなた!」

「――人違いです!」


 タケは走って逃げようとする。


「ちょ、逃がさないわ! 月の姫秘伝、ドロップキック!!」


 物凄い跳躍だった。

 彼女のドロップキックが描く放物線は綺麗な弧を描き、タケの背を貫いた。


「うごッ!?」

「私、あなたに会えなくてとても寂しかったわ!」


 夕暮れに染まる竹林を背に、美少女が言うセリフはロマンチックものだった。

 タケは五メートルは吹っ飛ばされている。

 タケは思う、それってもっとロマンチックな展開で言ってくれない? と。


 背中を摩りながら起き上がるタケに近づくが近づく。


「なんで居なくなったの?」

「学校に行ってました……」


 そう言えば、待っててと言われてた気がするタケ。

 だが、中二病の頭のおかしそうな女の子の話を本気で聞いている訳もない。


「私、寂しかったんだから!」


 ルナは涙目になりながら、手をぶんぶんを振り回して言う。


「それ、ドロップキックする前に言ってくれない?」

「それは……あなたが逃げようとするから……その、大丈夫?」


 申し訳なさそうに心配しながら近づいてくるルナ。


「まぁ、見た目よりは痛くなかったけど……」


 ルナは体重が軽いため、ダメージはそれほどでもなかった。


「で、でも、あなたが逃げようとするのも悪いのよ!」

「なんか反射的に逃げてしまった。前世はシマウマだったのかもしれない」

「私は肉食動物か何か!?」

「近しい物はあるだろ。いきなり襲い掛かってくるし」

「もう、その事は謝るから! はい!」


 倒れているタケに手を差し伸べるルナ。

 少しだけ顔を赤くして、恥ずかしそうにしている。


「何?」

「手よ手。腰、痛いでしょ? 手を貸してあげるわ」

「……おう」


 照れながら手を差し伸べるルナを不覚にも可愛いと思うタケ。

 何故だかタケの方まで顔を赤くしてしまう。


「何照れてるの?」

「いや、照れてない」


 強がりである。

 照れてるのはお前だろう、とツッコミを言いたいが、自分も照れている為何も言えない。


「そう、顔赤いけど? もしかして具合悪いの?」

「だ、大丈夫だって! ほら、こんなに元気!」

「本当に……?。あっ、そうだ! 私の宇宙船には月の風邪薬もあるの! 凄く効くんだから! ついて来て!」


 ルナは強引にタケの手を取り引っ張る。

 今回はタケが拒否をする間もなく、引っ張り竹林に入る。


 この子は一体何を考えているんだろうか。そう思うタケ。

 タケはずっとルナを中二病の少女だと言っているが、彼女が全て本気で言っている事も気づいていた。


 だが、言っている事があまりにも突拍子がない。

 そもそも、何故彼女は自分にここまで執着しているのだろうか。


「それにしてもあなた、あの時、嘘をついたの?」

「嘘?」

「ほら、タネガシマ? に宇宙船があるって! 探し回ったのに無かったわ!」

「いや……そういえば交番には行かなかったのか?」

「コウバン?」

「……」


 本気で交番を知らない態度のルナ。

 そんなルナをタケは不思議そうに見る。


「あ、もしかして黒い服を着た人達の事?」

「ん、あぁ、多分それ」

「それなら、何か私を連れて行こうとしたから返り討ちにしたけど……駄目だった?」

「……いや、まぁ、そうか。ははは」

「なんか、変な反応ね」


 なんと反応していいのか分からないタケ。


(それがもし本当なら公務執行妨害とかそんなレベルじゃない気がする。いや、もし宇宙人なら人間の法律なんて関係ないのか?)


 なんて、ルナが宇宙人である事を少しだけ信じているタケにタケ自身気づいていない。


「全然。ん、そう言えば宇宙船を探しているって言ってたけど見つかったのか? 俺、こんな山奥までついて来てるけど」

「いえ、まだよ。でも、一度反応を受信できたから辿ってるの」

「……ガチガチだな」


 ここまで本気の厨二病を見た事のないタケは感心してしまう。


「ガチガチ?」

「いや、何でもない。ここまで来たんだし、とことん付き合ってやるよ!」

「つ、突き合う!? きゅ、急に何を言ってるの!? 変態!!」

「なんで!?」


 顔を赤くして怒鳴るルナに困惑するタケ。


「あっ、宇宙船があった――わ……」


 しばらく竹林を歩いていると開けた場所に出た。

 そこには巨大な残骸が落ちていた。


 鉄くず、鉄くず、鉄くず。

 前も右も左も残骸の山だった。

 残骸はクレーターの中にあり、その残骸が空から降ってきた物だと証明していた。


「これは……大気圏を越えた衝撃でバラバラね……あの耳――!!」

「おいおい……これ、マジかよ……」


 残骸の中に埋もれている長い耳を見つけたルナは、その耳の方に走っていく。


 流石のタケもその光景を見て、まだ疑えるほど鈍感ではない。

 タケは口をあんぐりとさせ、周りを見渡す。


「やっぱり、ラヴィ! 良かったわ。無事だったのね!」

「……なぁ、その子」


 ルナが瓦礫の中から助け出したのは少女だった。

 それもただの少女ではなく、うさ耳を生やした白髪の美女。


 付け耳かと思い近づいてみると、その耳は微かに「ぴこぴこ」と動いていた。


「あ、この子はラヴィ。私の従者よ」

「その頭から生えてるのって……ウサギの耳か?」

「え、月のウサギなんだから耳くらい生えてるでしょ?」

「いや、月のウサギ知らんけど……」


 そもそも、月にウサギが居るという事にタケは驚く。


「そう、地上は遅れてるのね」

「……秋葉とか行けば、いっぱい居そうだけどな」


 うさ耳のコスプレイヤーが。と心の中で思うタケ。


 タケは立ち上がり、再度残骸をみる。

 見れば見るほど、SFチックな見た目をしている。

 残骸も良く見てみると地球にはないメカばかりだ。


「マジに宇宙船……」

「マジに宇宙船よ……やっぱり、信じてなかったのね」

「ん、これってなんだ?」


 タケは残骸の中に一つだけ綺麗な状態で残っている箱を見つけた。

 それを手に取り見てみる。


「ちょっと、あまり勝手に触ったら――」


 ルナが止めようとした時、事件は起こった。

 箱が突然開き、青白い煙がもくもくと噴出したのだ。

 それを顔にダイレクトにくらうタケ。


「――うわッ!?」


 驚きの声を漏らした。

 そんなタケに詰め寄るルナ。


「ちょ、ちょっと――あなた今の煙吸った!?」


 タケの肩を掴み揺さぶり、問いかけるルナ。


「けほっ、けほっ……あぁ、なんだ今の煙……!」

「ま、マズいわ……それは最高にマズいわ……あぁ、ど、どうすれば……!」


 ルナはタケが煙を吸い込んだ事を確認すると、頭を抱えて取り乱す。

 タケは「煙を吸ったくらいだろ」とルナを落ち着かせようとする。


「落ち着けよ。なんでそんな焦って……」

「落ち着いていられないわよ! 今のは富士の煙と言って、不老不死になる薬なのよ!? あなた、不老不死になっちゃったのよ!? マズいわ! 本当にマズいわ!!」


 ルナは再度、タケの肩を掴み睨みながら言った。

 それは、衝撃の一言だった。


「――は?」

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