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「こ、このアイテムはなんだ…誰が持ってきた?」
白いひげを生やし、豪勢な部屋で、あるアイテムを持つ老人がそれを持ってきた受付嬢に聞く。
「はい、そのことなのですが…初心者のプレイヤーらしいのです」
「なん!?」
受付嬢の言葉に老人が即座に反応した。
「そ、それは本当か?」
「はい、確かに最初に手に入る初心者用の防具を装備していました。それに彼は…「やっと街についた」と、言っていましたので間違いないかと」
その言葉を聞いた老人が椅子から立ち上がる。
「今すぐ彼を呼んできてくれ」
そう受付嬢につげた。
「かしこまりました」
そういうと自分が立っていたカウンターに戻っていった。
「あれ?あの子はどこに…」
先ほどまで少年がいた場所を見たが、少年の姿はなかった。
「ん?エリザさん、どうした?」
そばで酒を飲んでいたプレイヤーが受付嬢に声をかけた。
「いえあの、先ほどここにいた少年を知りませんか?」
「ああ、そいつならドンゾたちと森のほうに行ったぞ」
男が指をさしてそうつげた。
「嘘でしょ!なんでまだあいつらがいるのよ!」
受付嬢エリザの表情がくもった。
「どうした?一緒に狩りに行くだけだろ」
「あなた方にはまだ伝えていませんでしたが、彼…いや、彼らは初心者をターゲットにPKをしていたのよ」
「おい嘘だろ」「あいつらがまさか」
「まじか」
エリザと男の会話を聞いていた周りのプレイヤーたちがざわざわと騒ぎ始めた。
すると男が
「なんで俺たちギルドのメンバーにそのことを言わなかったんだ」
その言葉を受けてエリザはうつむいた。
そして小さくつぶやいた。
「壊したくなかったの…このギルドを」
「壊す?誰が?」
「私とギルマスよ。あんなにもあなた達と仲のいい人を脱退させたらメンバーの反感をかうと思ったから、だから…っ!」
最後にエリザがに一言発しようとしたとき、一斉に席を立つ音がした。
「よしお前ら、こうゆう時はどうするのが良い?」
バッと手が上がる。
「ドンゾ達をぶっ倒す!」土下座させる!」
「違うだろーー!」
と様々な意見が出たがメンバーに問いかけた男はそれら否定した。
「女が困っているのに助ける理由なんてない!否!」
その一言に周囲は一瞬静まり返りすぐさま激しい拍手と喝さいがおこった。
「それんじゃ、いくぞ!」
各々が武器おとり、ギルドから出ようとしたとき
「は~めんどくさかったな~」
そういいながら一人の少年が入ってきた。
血気盛んになっているプレイヤーたちの前を通り、エリザの方へ向かう少年。
「え、どうしてあなたが…」
少年を見たエリザはそう口にし、続けて少年に向かって
「いっ、一緒にいたドンゾ達はどうしたの!?」
と、少年に近づいて聞いた。
「え、あの人ってドンゾっていうんですか?」
「ええそうよ!あなたあいつらに乱暴されたでしょ?」
エリザは興奮するあまり、少年の肩をつかみ、揺さぶって話していた。
「おい、エリザ。落ち着け」
男がエリザと少年の間に入り、少年に向けて言う。
「すまない少年、ちょっとうちのギルマスとドンゾ達と何があったか話してもらえるか?」
「ええ別に構いませんが…」
「そうか、すまない」
そう言い男はエリザの方を向いた。
「ほら、連れてってやんな」
「取り乱しました…では、こちらへ」
そういってエリザと少年はギルマスが待つ部屋へ向かった。
「失礼しますギルマス」
コンコンとドアをたたき部屋の中に入るエリザ。
「うん?どうした?」
「例の毛皮を持ってきた少年をお連れしました」
そう言って少年を前に出す。
「初めまして、三毛猫といいます」
「おお!君があの毛皮思ってきてくれた少年か!」
興奮した様子で席を立った老人。
「おっと自己紹介がまだだったね」
コホンと咳払いをして服装を整えたギルマス。
「改めて、このギルドのギルドマスターをしているレビィーだ。よろしく」
自己紹介をしたお互いは握手をした。
「ところで…君の名前は本当はそれじゃないだろう?」
レビィーが少し笑いながらそう言う。
「先ほどから何故かお前さんのステータスにモヤがかかっているから、おそらく適当な名前じゃろ。あと、口調も楽にしてもらって構わんよ」
そう言われた三毛猫は少し息を吐いて
「嘘をついたのは謝るよ。あまり人の恨みを買いたくなかったからついな」
髪をかき上げながらそう言う。
「うむ、その方が違和感がないのう」
「あの…ギルマス、話を…」
「おおそうだったのう」
「そんなキャラつくらなくてもいいですよ、めんどくさい」
「つっ、つくってないし!」
「はいはいさっさとしてください」
永遠と続きそうな会話を遮り、本題に移らせるエリザ。
「三毛猫君、君にいくつか質問がある」
軽く椅子に腰かけるレビィー。
「まず一つ目に、この毛皮をどこで手に入れたのじゃ?」
三毛猫がもってきた毛皮を机の上に置く。
「あぁ普通にそこの森で狩ってきたんだよ」
「今なんと!?」
「そこの森で狩ってきたって言った。あの森って初心者用のエリアだろ?だからそこのボスを倒して手に入れたんだよ」
「まてまてまて!お前さんは勘違いをしている!」
座っていた椅子を勢いよく吹っ飛ばし、立ち上がったレビィー。
「ん?何が違うんだ?この街だってゲーム初心者が初めに送られる街だろ」
「確かに街はそうじゃが、そこの森は別じゃ」
そう言い、レビィーは三毛猫の前に地図を広げた。
「今わしらがいる街がここじゃ、そしてお前さんが狩りをしておったというのがここ、<獣の森>と言われとるエリアじゃ」
レビィーはそう言いながら、地図にピンを刺していく。
「このエリアはレベルが最低でも60はないと入ることができないんじゃ」
「え…俺はレベル1で森の中にいたんだが…」
「はあ!?」
一つの話で何回も三毛猫に驚かされるレビィー。
「それはいったいなんで??」
「さぁ、バグなのか仕様なのかわからないんだよな…」
「あの…ギルマス、本題はいつになったら入るのですか」
レビィーと三毛猫の話をずっと聞いていたエリザが話しかけてきた。
「すまんすまん、年を取るとついな」
「だからそういうのいいですって!」
「う…うむ。三毛猫君、なぜこの毛皮をうちに?」
机の上に置いてある毛皮に指をさすレビィー。
「金がないから売りに来たんだよ」
「か、金?」
「そう。食料とか装備とか金が必要だからな」
そう三毛猫が言った瞬間、机の上にあった毛皮をレビィーが三毛猫に投げつけた。
「バカもーーん!!!」
「な、なんだよ」
「金なんかなくてもこの世界は生きていけるわい」
そういうとレビィーは立ち上がり、三毛猫に向かって
「これは買わん。むしろ買えない」
「そうか」
三毛猫はそう言い、部屋から出ようと歩き出した。
部屋を出る直前にレビィーが三毛猫に
「せっかくのゲームの中なんだからやりたいことをやったらいいんじゃ」
そう言った。
レビィーとの会話の後、ギルドを出た三毛猫は次の目的を考えていた。
「やりたいことね~」
レビィーから言われたを振り返っていた。
「のんびりとした暮らしを目指すか」
そう言い三毛猫はまた森に向かうのであった。
三毛猫との会話後、レビィーはエリザに説教をくらっていた。
「なんで追い返してしまうんですか?」
後ろにゴゴゴと文字が付きそうな迫力を放ちながらレビィーに言う。
「私言いましたよね?ドゾンの事も聞いてくださいと」
「あ、あれ、そうだったかのう」
「そうです」
言い逃れようとしているレビィーにすぐさま言葉をかぶせるエリザ。
「わかったからこ拳を下ろしてくれ!次に出会ったら絶対に聞くから!!」
「ちっ、絶対ですよ」
(おお怖い怖い、美人は怒らせると怖いの~)
そう思いながら、ちっともこりてないレビィーであった。
テスト明け