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男の娘いいよね
~6~
「よっしゃー!またレベルが上がってるぜー!」
自身のステータスを見て、少年は叫んだ。
「あいつの倒せてよかったなぁ」
前回、森の主であろうと思われるイノシシを倒した少年。次の目的を決める前にステータスの確認と持ち物の整理をしていた。
「お、スライムを倒した時よりも、経験値が多いな」
<<Lv30→75>>と、表示されていた。
「…貰いすぎじゃないかな、一応初心者なんだけど」
自身のレベルの変化を不思議に思う少年。
「まぁいっか。そんじゃ、次はドロップ品を見ていこうかな」
そう言って、アイテムボックスからイノシシが落とした素材を手に取る。
「よし、ここは一気に[観察眼III]で…」
手に取ったアイテムを次々と見ていく少年。
「えーと、<獣牙>とか<獣骨>ばっかかぁ」
強敵だったとはいえ、思いのほかショボイアイテムにガッカリする少年。
「その他はと…っ!」
少年が手に取ったアイテムが突然光り始めた。
「な、何これ??」
そう言いつつ[観察眼III]を使う。
「アイテム名は<狩る者>?」
首をかしげながら詳細を見る少年。
《森の主の毛皮。あらゆる生物をなぎ倒して成長し、この森の主になっていた。━━
「あいつやっぱ、主だったんかい…ん?」
詳細を読んでいると、最後に気になる部分があった。
━装備者に、スキル1[森の眼]:エリアの生物の視界を借りることが出来る。2[主の所有物]:エリアの主を倒したものはそのエリアのものを意のままにできる。3[主の庭]:いかなる生物もそのエリアでは主の命に従う。ただしプレイヤー以外。また、自身がその土地の主を倒さなければ使用不可。》
「………」
しばらくの沈黙を経て。
「キターーー!ぶっ壊れー!」
少年は大きくガッツポーズをして叫んだ。
「マジかこれ、装備するしかないだろ」
即座に装備する少年。
「よし、これで整理終わりだな」
広げ出していたアイテムをしまい、次の目的を考え始める。
「主を倒したけんやっぱ街に行かないとな…」
そう言い、自身のメニュー欄を見る少年。
「うわ、マジか。あったよ…」
少年の目の先には、『マップ』と書かれていた。
「『マップ』」
少年の前に地図が広げられた。
「そりゃないよ…」
追い打ちをかけるかのような出来事に跪いてしまう少年。そう、目的の街はこの森のすぐ近くにあったのだ。
「いざ、街へ!」
~始まりの街 ローリ~
「おおー、スゲーな!人がいっぱいだ!」
周りを見渡して言う。
「まずはやっぱ、ギルドかな」
そう言うと露店の人にギルドがある場所を聞き始める。
「すいません」
「いらっしゃい!どうだい兄さん、これ買ってかないかい?」
「こ、これは?」
露店の人から差し出されたものを見る。
「串焼き?」
「あぁそうさ。美味いぞ!」
「すまない、今ちょっと持ち合わせがなくて」
「そうか、それじゃぁまた買いに来てくれよな!」
そう話していると、本来の目的をわすれかける少年。
「あの、ギルドってどこにあるか教えてもらえるか?」
「それならこの道を真っ直ぐ行って、大通りに出た所にあるよ。デカいから目立つよ」
「ありがとうございます」
お辞儀して立ち去る。
少し歩くと
「ここか」
ドアを開け中に入り、受付嬢みたいな人がいる所まで歩き出すと
「なんだあいつ?」
「うわ、マジかよ」
周りからチラホラ少年を卑下する声が聞こえた。
(はいはい、無視無視)
そう思いながら受けまで行く。
「ようこそ、本日はどのようなご要件で?」
金髪の受付嬢が話し出す。
「あのぅ、冒険者の登録をしたいんですけど」
「はい、登録には銀貨3枚かかりますがよろしいですか?」
「今持ち合わせないんですけど、モンスターって売る事って出来ますか?」
「はい、可能です。しかし値段が少々お安くなりますがよろしいですか?」
「大丈夫です」
「では、こちらにアイテムをお出し下さい」
そう言われ、少年はアイテムボックスの中から倒したイノシシや道中狩ってきた魔物を置く。
「なっっ!?」
受付嬢の表情が変わる。
「買取お願いします」
少年がそう言うと、
「少々お待ちください!マスターを呼んできますので…」
走り出し奥の部屋へと入っていった。
その後すぐに、後ろにいた3人組のパーティが動き出した。
「よぉ、あんちゃん。ちょっといいか?」
少年の肩に手を乗せ話しかけてくる。
「な、なんですか?」
戸惑う少年。
そんな事は気にせずに話しかけてくる男達。
「うちら3人で今から珍しいアイテムを採りに行くんだが…あんたもどうだい?」
「そんなアイテムがあるんですか!行きたいです!」
食いついた少年を見て男達がニヤリと笑う、そんな事には気づかずに少年はまたあの森に歩き出した。
~森の中~
「それじゃあ、珍しいアイテムを取りに行きましょう」
少年が再びそう口にしたが、男達は少年を囲み武器を構えはじめた。
「あの、アイテム…」
最後まで話しをしようとしたが、男が遮る。
「そんじゃ兄さん、身ぐるみ全部置いてきな」
と、少年を指さして言う。
「え」
「言っとくがこっちは3人、レベルも50だ、馬鹿な真似はしない方がいい」
(あーこれあれだ、追い剥ぎだ)
心の中でそう思う。
今までだったら戦闘前は敵の行動パターンなどを探っていく少年だったがこの時は違った。
「よし、分かりました。殺してあげますよ」
にこりと笑いながら少年が男達に言う。
「おいおい、なんか言ってるぜ、リーダー(笑」
「ザコ職業のプレイヤーが(笑」
大柄な男に他の2人が話しかける。
「それじゃさっさとやってしまえ!」
男が2人飛びかかってくる。
(1人目はナイフで2人目人はセスタスか…)
と少年は、すぐさま地面に閃光玉を投げつけた。
「ぐっ!?」
「…っ!」
男達の視界からすぐさま外れた少年。
「さぁ、ここからは一方的な狩りの時間だよ」
即座に男達から距離をとり、スライムアーマーで身を隠しす少年。
「おい!何やってる、探せ!」
怒鳴り散らすようなひと言に他の2人は少年を探しに向かった。
~ナイフ男~
「今回もこいつで倒しますか」
そう言いだし、少年はイノシシ戦に使った、樽爆弾が降ってくるトラップと対人ように改良したトラバサミを仕掛ける。
「あとは、[素材加工EX]で、ちょっと深めの穴を作って、水と捕獲しておいた<<エレキウナギ>>を入れて、表面を隠してと」
少年が手早く準備している時
ドーンと爆発音がした。
「まず1人誘うか…」
そう言って爆発があった場所に向かう。
「あのガキ、絶対殺してやる!」
丸焦げになったナイフ男がいた。
「お〜い、こっちだよー」
と、声をかける。するとすぐさま少年の方へ向かってきた。
「あ、ちなみにそこは」
少年が最後まで言おうとした時、
「ぐわぁぁー!」
ナイフ男の右足にトラバサミがくい込んでいた。
「だから言ったのに。どうする?まだやる?」
男の前でそう言う。
「死ね!」
トラバサミがくい込みつつも動き出した男、それを躱して少年は先程の落とし穴に突き落とす。
「ログアウト1名はいりまーす!」
次の瞬間、男が落ちた穴の中に落雷が落ちた。
「ちょっとやりすぎたかな…」
~セスタス~
「助けてくれーー!」
その声を聞きながら少年は、次の準備をしていた。
(なるほど、いくら身体強化したからといって、深すぎる穴には登って来れないと…メモメモ)
「ナイフ男よりもあっさりいったな」
そう言って穴を覗きセスタスに話しかける。
「おーい!どんな死に方したい?」
「ふざけんな!ここから出せー!」
「いや、そういうのいいから」
「そんなことしてるから友達いないんだろ陰キャ!」
その一言に少年の、なにかが切れた。
「ほいっ」
少年はバケツいっぱいの虫を穴の中に入れた。
「いぎゃーー!」
直後、セスタスの断末魔が聞こえた。
(楽には殺さない)
ちなみに、先程少年が穴の中に入れた虫は、<アシッドアント>という、蟻である。その蟻は強力な酸をお尻に溜め込む性質があるのである。なお、穴の中にはその部分が弾ける寸前のものばかりである。
「はい、2人目ー」
~大柄な男~
(あいつはどこにいんだ?)
少年は3人組のパーティのリーダーの男を探していた。
「見つからないなぁ…そうだ!あれ使おう!」
スキル欄を確認する。
「早速使いますか、スキル[森の眼]発動!」
その直後、少年の視界が次々と切り替わる。
「おお!飛んでる」
ある時は空へ、またある時は湖へ。
「いた、アイツだ」
大柄な男を見つけた。
移動し出す少年。
「あれは強いな…」
男を見つけ、木の上から様子を見ていると、
「な、なんだ!?」
少年が乗っていた木が倒れた。
根元にはあの男がいた。
「いよぉ、待ってたぜ」
(完全にバレでいたな…)
少し間がありその瞬間に少年はまた閃光玉を投げたが…
「……!?」
強烈な閃光をものともせずに、男が斧を持って突っ込んできた。
(逃げっ…)
逃げようとしたとき、少年の右腕が切り離された。
「やば、死ぬ」
思わず呟く。
「ここで死ね、ルーキー」
男がもう一度斧を振り下ろそうとした時、
「ぐふっ!」
横から鹿のような動物が男に角を突き刺した。
(隙が出来た!)
その瞬間を逃すまいと少年は男の足元に深さ10メートル以上の落とし穴を作った。
「おわぁぁー!」
足元が急になくなった男はすぐさま落下していった。
「まだ終わらせねーぞぉ!」
すぐさま少年は、新しく入手したスキルを使う。
「[主の所有物]発動!ヤドクテングタケをもってこい!」
そう言い集めた毒キノコを加工して、持っていた太めの針(もはや槍)と合成する。
「カスリでもしたら即死だぜ!」
そう言い、ちょうど穴がすっぽりと隙間なくなるくらいの感覚に敷き詰めて針を落とす。
「くそったれーー!」
激しい怒鳴り声と共に最後の1人は消え去った。
「あぁ〜疲れた…、ギルドはまた今度でいいや」
と言ってまた街へと戻る少年であった。