4
眠い
~4~
ある日の朝、少年は自宅のベッドで目を覚ました。
「は〜、朝か…」
どこか気だるそうにそうつぶやく。
「やべぇな、体バッキバキだわ」
腕を上げ、グッと伸ばす。
「……。てか、俺なんでログアウトしてんだ?」
何気ない違和感に気づいた。
「たしか変なスライムを倒して、拠点に戻っている最中だった気がするんだけど…」
しばらくうつむきながら考え始めた。
「まぁあれだろ、ゲームの設定で長時間のログインは危険だから、強制的にログアウトさせられたんだろう。そうに違いない」
決めつけるようにそう言うと。
グゥゥ〜…
「腹減ったけんなんか食べるか」
ベッドから起きあがり、部屋を出て階段を降りる。
「簡単に済ませて、またゲームやるか」
そう言いながら食材を探していると。
机の上に置いていた携帯にメールが届いているのに気づいた。
「誰だ…?なんだあいつか、え〜と内容は」
【よお!あのゲームどうだった?お前のことだから、あまり縛られずに自由をやっていると思うが…━━━
「そうだったな。このゲーム薦めてくれたのあいつだったけ…」
過去を思い出していると、メールの続きに目が止まった。
━━━お前に謝らなくちゃいけないことがある…。罠師オススメだよって俺言っていたじゃん?実はさ、あの職業、ネットで調べたんだけど…。人気職業ランキング最下位だったわ。すまん。】
( ´△`)アァ-
思わずこんな顔になってしまう。
「な、何がそんなダメなんだ。確かに戦闘狂のヤツらにとっちゃ、ゴミみたいな職業だが…」
ピコン♪
続けてもう1つメールが届いた。
【ちなみに、理由としては、こんな感じだ。(レベル上がらないしゴミかよ)とか、(何が罠だよ。あんな安っぽいやつ作っても子供すら引っかからないよ。)ってな感じだ。】
追い打ちをかけるかのような内容だった。
「そんなにキツいかな、普通にモンスターとか罠にかかったけどな…」
そんなメールを見ながら考えていると、料理を作り終えた。
「うん、上手い。やっぱ自分で作った方が上手いな…ん?」
何かまた考え始めた少年。
「あのゲームって料理できるかな…」
また変なこと言い出したよ。
「よし、やろう。…イノシシは当分ほっときゃいいや」
そう言い、階段を駆け上がり、ゲー厶の電源を入れる。
「そんじゃ、行きますか」
目をつぶり、深呼吸する。
「スキャン開始」
「━っと、またここからか」
そこは、少年がゲームを起動させた時、初めにアバター作成をしたところであった。
「なんであなたがここにいるのですか」
「うわっ!」
真後ろから声をかけられた。
人がいる気配がまったくしなかったため、腰を抜かしそうになる。
「だ、誰だ??」
振り向くと仮面を付けた少女が立っていた。
だが、少年はその姿に見をぼえがある。なんなら声にもだ。
「お前、俺が最初に会った、ロリだろ?」
チッ…
(んな!?また舌打ちしやがったこのロリ)
そんな事を口に出さずに言っていると。
「もう1度聞きます。なぜあなたがここにいるのですか」
「いや、それを俺に聞かれてもなぁ…」
自分でもここに来た理由が分からないのだから仕方がないだろ、そう思った。
「あぁ良かったですね。あなたがここへ来た原因が分かりましたよ」
こちらに向かって言ってきた。
「で、なんだったんだ?早くログインしたいから手短にしてくれ」
その一言にロリの眉がピクッと動いた。
「言っておきますが、このエリアでの権限は運営側より、この私に譲渡されています。この意味分かりますか?」
「うん?それがどうした?」
「つまり、私はここでは何でも出来るのですよ」
「あ…」
ロリの表情が変わっていく。
「あなたの持ち物、レベル、スキルを全て削除する事も可能なんです…よ?」
「申し訳ございませんお嬢様!!いやぁお嬢様ってめっちゃ可愛いですねー!」
人はこんなにも早く口調が変わるものなのだろうか。
「それはそうと、あなた、ちゃんと寝床やテントでログアウトしていなかっでしょう。あれが原因です」
「え、ダメなの?」
「ダメです。次からは気をつけてください」
あれ、以外に優しい?
「ちなみに強制ログアウトを行われた方には、
罰金として、所持金が半分となっております」
はい、気の所為でした。
「説明は以上です。それでは送りますがよろしいでしょうか?」
淡々と言われる。
「ああ、頼む」
金を失ったのは痛いが、稼げばいいことだ。
「それでは逝ってらっしゃいませ」
「おい今、不吉なこと言って━」
最後まで少年が口にする事はなかった。
目を覚ますと、前回少年が作った拠点の中だった。
「あのロリ…」
呟きながら、今日やることを考える。
「…そういえば、この前のスライム倒したけど、あんなんでレベル上がんのかな」
ステータスを表示させる。
そこで少年は目を疑った。
「おお!レベルが1から30に上がっている!あ、スキルも増えてる!」
テンションが高い少年。
「ステータスの振り分けは、後でいいとして。スキルの確認か…。罠師でも使えるものがいいなぁ」
そう言いスキルを確認する。
new[観察眼Ⅲ]、new[逃走術Ⅳ]、new[隠密Ⅲ]、new[錬金術Ⅱ]、new[調合術Ⅳ]
「いっぱいスキルを手に入れはしたが…。ザ、生産職って感じだな」
手を下に振り、スキルを閉じる。
次に開いたのはステータスだった。
「振り分けはどうしようか」
この世界では、筋力、知力、硬さ、敏捷、器用さの5つにステータスポイントを振り分けることが出来る。
「筋力はまずないな、前線で戦う職業でもないし。あと、硬さ、これもいいや敏捷と器用、それに少し知力に振り分けてと」
満足げに頷く少年。
「ひと通り終わったから、ぼちぼち出るか」
立ち上がり、拠点を出て歩き始める。
しばらく歩いた少年は、スライムを倒した罠の前に立って、悩んでいた。
「この罠、どうやってどかそう…」
見下ろしながら言う。
「作ったものを分解できるスキルなんて持っている覚えなんてないし」
スキル欄を見て確認する。
「これを試しにみるか…」
スキルを1つ選ぶ。
「[観察眼Ⅲ]、使用」
そうつぶやいた少年の前にタブレットサイズの画面が開かれた。
「えーと」
書いてある内容を見る。
<<作成者→少年。罠名→落としてから、グサリ>>
書かれていたことに戸惑う少年。
「作成者の部分はいいが、この罠名ってなんだよ…。ダサ!運営側のセンスなのかこれ?」
ツッコミを交えつつ、少年は前回初めて作った罠のことを思い出した。
「そういや、1度作った罠って出し入れ可能とかあったな…」
<メニュー>から、新しく追加されていた<罠>の表示を押す。
「なるほど、ちゃんと追加されている。」
先程の罠名が載っている。
「じゃあ、ここを押してしまえばいいのか」
少年が手をかざすと、目の前にあった罠が消え、ポッカリと空いた穴だけが残った。
「そういう事か…。罠全体が追加されるんじゃなくて、罠の設計図的な物に変化されるのか…」
改めて少年が[観察眼Ⅲ]を使い罠があった場所を見ると、<<ただの穴。ドロップあり>>と表示された。
「ドロップ?」
穴の中に入り見てみると。
「なんだ、このブヨブヨやつ。あのスライムのか?」
スライムの素材らしきものを拾い上げる。
「まぁひとまず持ち帰って考えよ」
拠点に戻り、アイテムバッグに入っている素材をだす。
「わりと集まったな」
ドサッと音をたてて、アイテムが置かれた。煌びやかに輝く鉱石から、禍々しい色をした植物など様々だ。
「さてと、ここからは[調合術Ⅳ]と[錬金術Ⅱ]を使って、装備ど道具作りか…。まずはコイツから」
そう呟き、帰る途中に採掘した、<爆煙石>を手に取る。
「[錬金術Ⅱ]使用。分解」
その言葉とともに、<爆煙石>が光輝き、2つに分かれた。
「よし、[観察眼III]」
分解された2つの物体を見ると。
<<火薬>>と<<粉塵>>になっていた。
「まるでモン○ンみたいだな…」
危ない発言だ。
その後他のアイテムも同様に分解して、ため息をついて言う。
「最後はスライムかぁ、うえっぬるぬるして気持ち悪いなぁ」
想像以上の気持ち悪さに咄嗟に手を離そうとする。
「とりあえずコイツもスキルで見てみるか」
[観察眼III]を使う。
「やっぱ便利だな〜」
そう口にし表示を見る。
<<モンスター名:リファクションスライム。レア度7。この世界に多く生息するスライムの中の上位種。身体の周りに分泌されている液体には、他者の眼を欺く力があるとされている。>>
「……」
思いがけない文に言葉を失う。
「よし、防具行きだな」
即決であった。
「えーと、まずは、帰る途中に採ったミストツリーの幹を材料に大まかに防具(上下)を[素材加工EX]で作って。その後に、[錬金術Ⅱ]で分解した、スライムの体液と防具を合成。そして[観察眼Ⅲ]を使い、確認してと…」
<<作成者:少年。レア度5。周囲からの光を屈折させることによって、隠密性に長ける。しかし匂いなどは消すことができない。>>
「まぁまぁの出来だな。この調子で、またどんどん作っていけたらいいか…」
そう言って少年は、ログアウトをして、一眠りにつくのであった。
次色々やります