3
眠い
~3~
「さてと…それじゃ、始めますか」
少年はおもむろにそう言うと、立ち上がり、近くの大木に両手を当てる。
「[素材加工EX]開始」
短くスキル名を唱えると。
ゴゴゴ…という音と同時に大木の中にポッカリとかまくらのような形の部屋が出来た。
「よし、まずはここを拠点としてやって行くとして。まずは、この辺りの地形と素材集めかな…」
ひと通りやることを決めた少年は拠点から外へ行く。
拠点から出て数分たったころ。
「ん?ゼリー?」
思わず口に出てしまった。
正確に言えば、ゼリーのようにプルプルしている物体。
「いや、違うか…ってこれスライムじゃん!」
突然の出会いに興奮していると。
ドスッ!という音がした。
「え……はぁ!?」
自分の左手を見ると、氷柱が刺さっていた。
「な、なんで…」
訳が分からなくなるのも無理はない。スライムを目で認識した瞬間にはもうすでに事が起きていたのだ。
「やべぇ…あれ絶対普通のスライムじゃないだろ」
苦しみながらも、[素材加工EX]で付近に生えていた雑草を包帯にして止血していた。
「逃げるか、それとも戦うか…」
(今のステータスを見る限り、agi(速さ)が高い方か。この職業の長所って逃げ足か…)
少年は即座に考えた。
(1、逃げて隠れる。2、落とし穴作成。3、生き埋め)ムフフフ
おっと、思わずにやけてしまった。
そこからの少年の行動は早かった。
スライムに向かって叫んだのだ。
「こいよクソスライムー!ビビってんのか!?」
こちらの言葉にのせられ激怒したのか、スライムの色が薄い水色から真っ赤に変わる。
「来たきた…そんじゃ、鬼ごっこと隠れんぼの始まりだぜ!」
少年は広い森の中を駆け始める。
~40分後~
「はぁ〜疲れた。」
スライムの死角となっている木の影にいる少年。
「スライムって初心者用のモンスターじゃなかったっけ…」
ボヤを吐いていた。
「だけどまぁ、巻けたらこっちのもんだ。」
と言い、地面に手を当て。
「素材(土)、形状(深さ3メートル、幅3メートルの正方形)[素材加工EX]開始!」
と唱える。
「それと、[初級罠設置]を併用してと…」
ボコボコいう音と共に、[初級罠設置]の効果で、周囲の小枝が組み込まれていき、その上に落ち葉が被せられた。
「よし、初めてにしては上出来だろ。あとはここにさっき止血した時の包帯を入れてと」
ちゃくちゃくと準備をする少年。
「完成!お、説明付きで表示されるのか?」
<<罠師なら誰もが、1番に思いつきそうな罠。罠としては足止めとしか機能しそうにないが及第点を与えよう。*なお、1度作成した罠、または素材加工はリストに記され、素材さえあればすぐさま作成可能>>
と、表示されていた。
「なんか、上から目線でイラつくな」
表示されたコメントが目についた。
「ま、いいや。さっさとスライムを倒そ」
スライムの方へ歩きだす。
木の影から出てきた少年を目にしたスライムは、先程左手に受けた氷柱を撃ってくる訳でもなくて、少年に突進してくる。
「確かに、それだけ怒っていたら向かって来るよな…」
うつむく少年。
止まる気配のないスライム。
「だが…」
少年が何かを言おうとした直後…
スライムが落ちた。
「よっしゃ!かかった!」
落ちたスライムは何が起きたか分からないという表情を捉えることが出来るほど動揺していた。
「今からお前を生き埋めにする訳だが…、それじゃ経験値が貰えるか分からない」
スライムを見下ろしながらそう口にする。
「だから俺は普通に倒すことにする」
近くにあるロープ結び目を少年は解く。
「そんじゃ、あばよ…スライムさん」
ズドンッ!っと、先端が尖った木の棒を複数付けた物が落ちた。
穴の中を覗くことは出来ないが、光の粒が天に登って行った。
「よし、終了!拠点に帰ろ」
拠点を出る前に計画していたこととは違うが、思わぬ収穫があった少年。
あのスライムが少年に絶大な影響を与えた事は、また次回の話。