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6.俺様教師


 レイヤードとは、また図書準備室で会おうと約束して別れた。

 そしてうっかり一時限目をサボってしまったのだけど、まさかの展開なんだから仕方ない…は、周りには通用しないわけで。

 いや、別にレイヤードといたことがバレたわけではないのだ。

 あっちはルイ先輩と言う協力者がいるので、体調が優れないから一時限目は休むと担任に伝わっていたらしい。

 だが私には誰もいない。

 友達はいるけどそういう協力者はいない。つまり…

 

「俺の授業をサボるとはいい度胸してんじゃねぇか、あぁ?」

 

 やーさんかよ。

 というツッコミは心のなかに止めた。

 これで教師、どころか侯爵家三男だなんて思えないほど口調が粗い。

 

 後頭部で一つに束ねられた長い金髪は、下手すれば縦ロールになりそうなほどの巻き毛である。

 気性の激しさを現したようなガーネットの瞳……妹も同じ赤い瞳だけど、あの子の瞳はどちらかと言えばルビーだ。

 そして、妹はいじめが小学生レベルだけど、この俺様教師は性格そのものが小学生レベルだ。

 そう、この俺様教師、キャラウェイ=ワームウッドは、悪役令嬢アンゼリカ=ワームウッドの兄にしてなんと攻略対象キャラクターなのである。

 

「おいこら聞いてんのか小娘」

 

 黙れ小僧!前世の私からすれば貴様などまだ社会に出たてのヒヨコちゃんだわ!

 

 と、思いはするが、申し訳なさそうに「すみません」と謝るだけに止めた。

 ハブガの世界を楽しむためにも、ここで目立った行動は取りたくない。

 何しろ私はモブだ。

 そして何よりこの俺様教師に目をつけられると大変…たいっへんめんどくさいから。

 

 提出物やら配布物やら持ってけだの配れだの集めろだの言われる。

 雑用もさせられる。

 喉が乾いたとかお腹空いたとかいう理由で呼び出される。

 1回の授業で3回は当てられる。

 なんならいるだけで絡まれる。

 

 友達いないの?ねえ、友達いないの?!

 

 しかもタチが悪いのが、あんな小学生みたいな中身でも顔も身分もいいからおモテになるわけで。

 そんなやつに頻繁に指名されたら、ハイ、妬まれますよね。

 しかもあの俺様はそれを分かっててやるから本当に性格が悪い。

 

 なんにせよ、しおらしくしていれば問題ないだろう。

 自分の言うことを大人しく聞く人間に、この俺様は興味をもたないはず、だった。

 

「……お前さ、なんかちがくね?」

 

「はい?」

 

 キャラウェイの唐突な問いに、思いっきり眉が歪む。

 

「お前、もっとなんかこう、なんも考えてなさそーなやつじゃなかったっけ?ただただ毎日楽しいですわーみたいな」

 

「え…」

 

 驚いた。

 私がそんな毎日アホみたいに楽しく過ごしてたという見解はともかく、この人、私のこと認識してたんだ。

 

「おいクレナ=ローゼル、そうだろ?お前なんか違うよな?」

 

 フルネームだと…!?

 

「せ、先生、私の名前覚えてらしたんですか…!」

 

「受け持ちの生徒の顔と名前くらい覚えてる!天才だから!」

 

 天才かどうかはともかくとして、ちゃんと教師らしいところがあったことに感動すら覚える。

 

「すごいです!さすがキャラウェイ先生!」

 

「だろ?俺すごいだろ?」

 

「先生が素晴らしすぎて、私のちっぽけな悩みは晴れました」

 

「お、そうか?なんだ悩みがあったのか。素晴らしい俺にいつでも相談しろよ?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 感動したのでそのまま褒めて持ち上げたら上手く誤魔化されてくれた。

 キャラウェイが単純で本当に良かった。


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