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48.避けていた場所
私の言葉に、ルイ先輩は目を見開くと慌てて謝った。
でも私は失礼しますとだけ言い置いて退室する。
ごめんなさい、ごめんなさいルイ先輩。
私、先輩にあたってしまった。
先輩に頭を撫でられて嬉しかったのに。
謝らせた挙げ句、それを受け入れないで出て来てしまった。
真面目で優しい人だから、きっと心を痛めたに違いない。
でも…
聞きたくなかった。
好きな人の想い人であるルイ先輩から、あの行動に…ひいてはあの言葉に、励まし以外の意味がないことなんて、聞きたくなかった。
ぐちゃぐちゃな思考のまま、私は玄関を足早に通り抜ける。
そしてそのまま寮に戻ろうとして、鞄を持ってきていないことに気付いた。
教室に置いたままだ。
方向転換しかけて、ふと足を止めた。
──温室にいこう。
唐突に思い付いた。
そこは私が今まで避けていた場所。
でも、今、無性に行きたい。
それ以外考えられなくなった私は、ふらりと足を踏み出した。




