31.ままあること
「な…んなの!あの子!」
コリンくんが出ていった扉を見ながら、ポプリは怒りに身を震わせている。
唐突に向けられた悪意に呆然としながらも、私はふと前世を思い出した。
「でもまあ、言われ慣れてるか…」
思わず溢れた言葉に、ポプリは驚いたように振り返る。
「そんな酷いこと、慣れるほどに言われたの!?」
「あ、そんな、慣れるほどってわけでは…少しだけ、よ」
私の答えに、ポプリが抱きついてきた。
ぎゅーっと抱き締められ…というか半分締め上げられつつ、私はクレナになる前のことを思い出していた。
私物をゴミ扱いはともかく、気に入らないというのはよく言われていた。
学生の頃もままあったけど、社会人になってからはそれこそ色々な人から言われた。
男女年齢問わず。
暗いとか可愛いげがないとかできる女ぶってるとか融通がきかないとかいう理由だったと思う。
大概は陰で言っていたけど、たまに聞こえるようにいう人間もいた。
今にして思えば、確かに可愛いげのない人間だった。
日々の仕事に、生活に必死で、周囲を気遣う余裕なんてなかったし、一人の方が気楽だったのもある。
誰かに感情を揺さぶられるのがめんどくさかった。
そのくせゲームにはそれを求めてた。
矛盾してた。
そんな人間、気に入る方が珍しいだろう。
ただ、クレナになってからは言われることはほぼなかったし、あんなに真っ向から言われたのは前世でもなかった。
だから衝撃も大きかったのだけど、冷静になった今ではドラマチックな展開すぎてちょっと笑えてくる。
そんな私に、アンゼリカがふむ、と頷いた。
「そうですわね。気に入らないなんて、わたくしもよく言われますわ」
嫌がらせは小学生並みでも勉学は優秀で、更に侯爵令嬢であるアンゼリカでさえも「気に入らない」と言われることがあるという。
まあこれだけ目立つ人だから、嫉妬も羨望も大量に受けるのだろう。
「貴女、余程生ぬるい世界で生きていらしたのね!」
「ええ、ありがたいことに!」
思いっきり舌を出したポプリに、アンゼリカが「まあ、はしたない!」と声を上げる。
そんな二人のやりとりを微笑ましく眺めつつ、私はコリンくんから嫌われた理由を考えていた。
でも、いくら考えたところで答えは出ない。
クレナが目立ってきた、というのが気に入らないにしても、それがコリンくんに何の関係があるのか分からない。
私は小さくため息を吐いた。




