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28.ツンデレがここにいた


「で、勢いで歩いてきましたけど、当てがあるのですか?」

 

 ずんずん先を歩くアンゼリカに、ポプリに手を引かれながら声をかける。

 

「もちろんですわ!」

 

 金色の巻き毛をぶん回しながら、アンゼリカがドヤ顔で振り返る。

 が、私とポプリを見ると、ぎゅっと表情が険しくなった。

 そしてつかつかと歩み寄ると、私とポプリの間に手刀をぶんと振り下ろす。

 左右に別れて手刀を避けると、アンゼリカはふん!と鼻を鳴らした。

 

「まったく、良い歳をしてベタベタと!恥ずかしくて見ていられませんわ!」

 

「良い歳をした淑女が手刀を繰り出す方がよっぽど恥ずかしいと思います!」

 

「ぐぬぬ」

 

 ポプリの反論に、アンゼリカがさらに淑女らしからぬ声を発して悔しそうに黙る。

 ぐぬぬってリアルに言う人初めて見た。

 

 ていうか。

 

 一つの可能性に思い当たった私は来客用スリッパをパタパタ鳴らしてアンゼリカに走り寄ると、失礼を承知でその手を握った。

 ほっそりとした長い指が、私の手の中でびくりと跳ねる。

 

「あな、な、な…!」

 

 面食らった様子のアンゼリカに微笑みを向けると、その白い頬に赤みがさした。

 先ほどまでの勢いがしゅんと萎んだのを見ると、私の考えはどうやら間違っていなかったようだ。

 

 アンゼリカは当初、想い人のレイヤードが元庶民のポプリに興味を示したことに嫉妬して嫌がらせをしていた。

 でも私とポプリが仲良くなってからは、レイヤードとポプリはクラスメイトとしてしか接していない。

 それなのに嫌がらせは続いている。

 私とポプリが仲が良いことが気にくわないのだろうとは思っていたけれど、先ほどからの態度を見ていて、気付いたのだ。

 あれ?これ、いわゆるツンデレじゃね?って。

 ほんとは仲良くしたいけど、素直に言えなくてついつい強く当たっちゃうってやつじゃね?って。

 

 思わずにやけた私に「な、なんですの!」と食って掛かりつつも手を振り払わないあたり、ほぼ確定だと思う。

 そして、そんな私達を見ていたポプリも無言でアンゼリカの隣に立つと、その手を握った。

 そして、私と顔を見合わせて悪戯っぽく微笑む。

 

「まったく、素直じゃないんですから」

 

「な、な、なんですの貴女達!」

 

 ぶんっと大きく手を振り払ってずんずんと淑女らしからぬ早足で歩き始めたアンゼリカを、私とポプリは笑いながら追いかけたのだった。


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