26.ぶちかまします
前世の記憶を取り戻してから、私はこの世界を『ゲームの世界』だと心のどこかでずっと思っていたのだろう。
出会う人々も、すべてゲームのキャラクターであると。
でも、今私はこの世界で生きている。
それは他の人々も同じ。
そこには主役も脇役もモブもないのだ。
何より皆──前世の記憶を持つレイヤードでさえ、私のことをモブとしてなんか扱っていなかった。
私が勝手に線を引いていただけだ。
ならば。
私はぐっと顔を上げた。
「先生、私、ぶちかまします」
自分でも何をぶちかますのか分からないけど、そんな気分だった。
「おう、ぶちかませ!」
なんか知らんが!と、やはり何をぶちかますかは分からないキャラウェイ先生がノリで拳を振り上げた。
そして同じように拳を振り上げた私に、笑顔で告げる。
「ちなみにさっき授業開始の本鈴が鳴ったぞ」
「えええええ早く教えて下さいよ!!!」
がんばれよーと笑いながら手を振るキャラウェイ先生に礼を言って、私は教室へと走り出した。
足が何かに突き動かされるように前へ前へと進む。
いくらでも走っていられるような、そんな気分だった。




