21.クーデレの第一声
※レイヤード視点
王家の人間は、本来学校には通わない。
全国から選りすぐりの教師陣を集め城で教育を受けるのだ。
しかし、それでは国を、世界を直に感じることができないからとレイヤードは身分を偽ってゴールデンロッド学園への入学を決めた。
さて、ゴールデンロッドの学生はもれなく寮へ入るという決まりがある。
一方、レイヤード自身は生まれてこの方ずっとお城暮らし。
城外の生活に早めに慣れようと、誰より早く入寮することにした。
学園の入寮期間は1週間ほどある。
期間中なら各生徒が都合のよい日に入寮することができるのだ。
あまり護衛が付きすぎるのも不自然だと考え、幼なじみであり一つ年上で学園の上級生でもあるルイ一人を伴うことにした。
馬車が門の前に停車し、ルイが扉を開く。
初日の、それも早朝に入る生徒はさすがにおらず、門の前に警備員がいるだけだった。
馬車から降り、学園の門に目をやった瞬間、唐突に彼の頭の中で音楽が流れ始めた。
かけてあげるよ
不思議な魔法
僕らはただの草じゃない
君を癒す力がある
聴いたことがないような種類の曲だった。
だが、何故か懐かしさと共に胸がぐっと高鳴る。
いつ聴いたんだこの曲。なんだこの微妙に恥ずかしい歌詞。
城ではいつも壮大なクラシックや柔らかなピアノ、美しいバイオリンの……
さあ手を伸ばして
一緒にいこう
僕と君との
「恋するハーブガーデン♪」
気付いたら最後のフレーズを声に出して歌っていた。
これはそう、ゲームの、自分がプレイしていた乙女ゲーム『恋するハーブガーデン』のOP…
自分の一挙一動が周りに与える影響の大きさをレイヤードは重々承知している。
だからこそ、物心ついた頃から軽々しい言動、感情さえも不用意に出さないよう心掛けてきた。
まして歌などほんの幼い頃歌ったくらいで、今や鼻歌すら歌わない。
それなのに、気付いたら歌詞が口をついて出ていた。
しかもおおよそレイヤードの口から出るとは思えないワード。
隣に立っていたルイが、驚きすぎて無表情通り越した真顔になっている…
これが、レイヤードが前世の記憶を取り戻した瞬間であり、記憶を取り戻して初めて発した言葉であった。




