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20.図書準備室


 図書館は、正面玄関を背に左の廊下の突き当たりから伸びる渡り廊下を渡った先にある。

 図書準備室は二部屋あり、一つは貸し出しカウンターの奥、もう一つは図書館内の最奥に位置している。

 カウンター奥の準備室は主に新着の本が保管されていたり、貸し出し準備や破損した本の修理をしたりする部屋だ。

 一方、図書館最奥の準備室には棚から下げた本が保管されており、滅多に使われることがない。

 その使われることがない準備室で、レイヤードはキャラメル色の革張りのソファに腰掛けて本を読んでいた。

 

 あれ?前はソファなんてなかったはず…

 

 私の疑問を察したらしいレイヤードがいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

 昨日の神々しさが嘘のような笑顔である。

 

「クレナと話した日の放課後、模様替えしたんだ」

 

「模様替え」

 

 たしかに、以前は本棚とテーブル、椅子が二脚ほどあるだけの部屋だった。

 それが今やソファと木製のローテーブル、さらにはポットやカップなどが収納された小さなキッチンラックまで持ち込まれている。

 それでもスチル絵になってる入り口正面の本棚と窓際付近は弄ってないあたり、ハブガへの愛を感じる。君は立派なハーバリアンだ。

 

 て、それはいいとして。

 私はちらりと隣のルイ先輩を見やった。

 

 レイヤードの親しげな態度をこの護衛はどう思っているのか。

 というか、もはやレイヤードはクーデレ王子というキャラ設定投げ出しているけど、そこのところはどうなんだ。

 

 するとそれに気付いたレイヤードが、私に座るよう促しながら微笑んだ。

 

「大丈夫、ルイは知ってるよ」

 

「知ってるって、何を…」

 

「クレナが僕と同じ転生者ってとこまで」

 

「そこまで!?」

 

 思わず見つめた私に、ルイ先輩は表情ひとつ変えることなく頷いた。

 

「そもそも、ルイにはすぐ気付かれたんだよね」

 

 一人掛けのソファに腰を下ろした私に、ルイ先輩が紅茶を差し出してくれる。

 ていうかルイ先輩、お茶も淹れるんですね。まあレイヤード自らには淹れさせないよね。

 

「レイヤード様が覚醒したのは入学直前でしたっけ?」

 

「そう。入寮する日、学園の門を見た瞬間に」



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