11.チャラ男
微笑んだクリストフに、私は一つの可能性が浮かぶ。
ひょっとして、いやそんなまさか…だが、訊かなければクリストフからは答えが返ってこないようである。
自分を励ますように胸元で手を握りしめると、思いきって口を開いた。
「まさか、あなたも転生…」
「ブッブー!」
違うんかい!
勇気を振り絞って訊いたのにチャラっと返されて、思わずジト目で睨む。
「じゃあなんですか神かなんかですか」
「急に冷たい!…残念ながら神でもないですよ。俺、子供の頃から親について色んな場所に行ってるんですよね~」
「はい、キャラ設定で読みました」
「キャラ設定!興味深いけどとりあえず置いておきますね~」
クリストフの話によると、幼い頃から色々な人と会うことが多かった彼は、この世界に転生、転移してきたという人物と会うこともあったそうだ。
「子供だった俺に面白おかしく話してくれましたね~。きっと大きくなれば作り話として扱われると思ってたんでしょう」
「でも、クリストフさんは信じてるんですよね?」
「ええ、大体そういう人にはさっき言ったあるあるみたいな話がありますし、転移してきたという人は大抵この世界にない物を持ってたりします」
なるほど…たしかに転移してきた人ならば、元の世界の服装とか何かしら持っているのだろう。
それにしても、けっこうあるんだな、異世界転生と転移。
まあ私もだし、レイヤードだってそうだ。
でもなんかこれ、あれだわ。
「意外と多いのって、なんかがっかり…」
「まあまあ、意外と多いとはいえ、そうそういませんから。大体一つの国に一人いるかいないかですよ」
充分多い。
ていうか、転生とか転移先がこの設定ガバガバのハブガの世界って…同情しかないな…私もだけど。
ていうか、逆にハブガの世界だから多いのかもしれない。
「そうそう、もう一つ、転生とか転移してきた人達は新たなアイテムを作り出したりするんですよ」
「へえー!どんなのですか?」
お洒落なアクセサリーとか?ひょっとしたらPCとかゲーム機とかできてたりするんだろうか?
「なんとこの、スルメでーす!」
「まじか」
スルメはまさかの異世界の産物だった。




