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10.過ち


 逃げる前に引き留められてしまった。

 これはモブとしての危機…いや、ちょっと奇行を働いたくらいでメインに躍り出ることはないだろう…

 とかいう以前に聞き捨てならない言葉があった!

 

「……今朝のことご存知なんですか?」

 

「はい、俺あの場にいましたしね」

 

 いたんかい!

 

 いたんなら出てこいや!と思ったけど、ポプリへの好感度が上がってなかったらどうしようもないんだった…

 それより。

 

「よく私だと分かりましたね」

 

「いやいや~、むしろ分からない方がどうかと思いますよ?」

 

「え?」

 

 聞き返した私に、クリストフは指を一本立てて見せた。

 そして続く言葉と共に一本ずつ立てる指を増やす。

 

「その一、編入生ちゃんは目立つ。その二、アンゼリカ嬢も目立つ。その三、その二人の不和はもーっと目立つ。そこに登場しちゃったら、もう目立つしかないですよね~」


 ご、ごもっともだけど…!

 

「教室とかでは皆さんいつも通りでしたけど!」

 

「そりゃまだ話が広まってないから~。あの場を目撃した生徒達はほとんどお嬢さんのこと知らないですからね。でも、見かける度に『あ、あの方今朝の…ねぇねぇあの方ご存知?』とか言うのが繰り広げられ、お嬢さんの知名度は徐々に上がって…」

 

「い、いやあぁ~!」

 

「なんてまあ冗談ですけど」

 

「…は?」

 

 固まった私に、クリストフは両手を広げ、まるで謎解きをする探偵のように話し始めた。

 

「たしかに以前よりは知名度は上がるかもしれないですけど、お嬢さんが危惧するほどは上がらないでしょう。二人のいざこざ…というか、ただ単にアンゼリカ嬢が絡みに行ってるだけですけど…それはまあ良くあることです。そこに一度登場したくらいじゃ、皆大して意識しませんよ。まあ急に環境が変わると、目立ちたくないのに目立つ行動とっちゃったりしちゃいますよね~。あるあるです。」

 

「ま、まって!」

 

 またしても発せられた聞き捨てならない言葉に、私はクリストフの怒涛の解説を遮った。

 

 急に環境が変わると?

 どういう意味?

 それはもしかして…いや、そんなまさか…


 呆気にとられている私に、クリストフはにっこりと微笑んだのだった。

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