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Story 8 【収穫祭】

DELTARUNEやってきます。


「少し聞いていいかい?」

「……なんでしょう?僕に分かる程度の事なら答えますけど」

「いやね、今日っていうか昨日ハロウィンだったじゃん?結構フィクションだったらハロウィンって魔術的にも重要な事柄だったりするから、実際はどうなのかなって」

「あぁ、確かに……そうですね。これくらいは話しても問題ないか……」


紅茶を口に含み、喉の渇きを潤しておく。

今宵も僕がメインの語り部となるのだ。喉の調子を整えておくのは大事だろう。


「先輩が言う通り、ハロウィンっていうのはフィクションではよくよく魔術的に重要視されている事柄、行事だったりします。……所で、先輩はハロウィンって元はどんな行事だったかは知っていますか?」

「ん?アレだろう?収穫祭。どこが発祥なのかは流石に知らないけど、それくらいなら知ってるぜ?」

「そう、収穫祭です。もっと詳しく言えば、この時期の……秋の収穫を祝い、悪霊なんかを追い出す意味合いもあった祭りですね。多分フィクションではここの、悪霊関係がピックアップされて魔術的に重要とか言われてるんでしょうね」


ふーん、と言いながら先輩は人肉入りマフィンをつまんでいる。

……分かってるのか分かってないのか、よく分からないのはいつも通りだなぁ。

まぁ分かっていても分からなくても喋る事は変わらない。


「といっても。現実的にも魔術に関係ある行事だったりするんですよね」

「ほう?詳しく教えてもらっても?」

「まぁ話すために前置きしたんで。……魔女、というよりかは魔術を使う人達の中にもやっぱり結構種類というか……主に使う魔術でジャンル分けされるんですよ」

「ジャンル分けっていうと……呪術師とかそういうのかな?」

「そうですそうです。魔女という大ジャンルの中に、呪術師等の小ジャンルが存在している感じです。今回の話でいうなら、主に自然の力を借りて魔術を行使するっていう人達が関係あるんですよ」

「あー、なんだっけ。ドルイドってのがいるんだっけ?」


そうです、と頷きながら先輩のカップに紅茶を注ぎ、自分用のマフィンを取られないように確保しておく。

こちらのマフィンには人肉が入っていないから、先輩が食べたところで関係ないのだが。


「ドルイド。古代ケルトの方に居たとされる魔女です。って言っても、今の世の中ファンタジー小説なんかやゲームなんかでドルイドをモチーフとしたキャラやモンスターが出てくるので、基本的な知識はあるでしょう?」

「あれだろう?自然の……それこそ森とかの力を借りて、結界やらなんやらを張ったりするの。あとは魔眼を持った幼馴染が居たりするんじゃなかったっけ?」

「最後の部分以外は概ね合ってますね。彼らはこの10月31日の夜に焚火をして1年のうちに採れたものなんかを神に捧げたと言います。それにより聖なるものとなった焚火を各家庭に届ける事で退魔……つまりは現代で言われる悪霊を祓う意味合いがあったそうですね」


事実、そういった事をしていたらしい。

他にも、ジャック・オ・ランタンは彷徨う男の霊が云々の話もあったりするが、今回の話には関係がないだろう。


「まぁこんな感じで、魔術的に……と言われると微妙ですが魔女が関わっているという意味ではハロウィンが魔女にとっても大事なイベント事であるのは間違いないですね」

「ふーん……ちなみにさ」

「なんです?」

「その悪霊を祓うっていう聖なる炎って、私には効くのかな?」


ニヤッ、と悪戯っぽく笑いながらこちらを見る彼女の目は、表情とは違い全く笑ってはいなかった。


「どうでしょうか。……多分効かないとは思うんですけどね」

「あれ?そうなの?魂喰い化していってる人間なんて悪霊みたいなもんだと思うけど」

「その人間って要素が難しい所なんですよ。まだ肉体という器があるからこそ、先輩なら耐えられるかもしれないっていうのがありますし……そも、弱いものでいいなら僕が毎回持ってきてるこのランタン。これに入ってる火も同じようなモノですからね?」

「おや、それは気付かなんだ」

「そりゃこういった場所でやるんです。退魔の一つや二つくらい持ってきますって」


それに、


「貴女の所為ですしね。ここの霊が多い理由って」

「あ、やっぱり多いんだここ」

「多いですよ。それも恨み辛みが強い……悪霊になりやすいタイプのが沢山」

「ははっ、まぁ殺したし食べたからねぇ」

「笑いごとじゃないんですよ……」


全く反省する様子もない彼女に、僕は思わず溜息をついてしまう。

これだからこの人は救えない。……いや、救わない。

彼女は救える程度には堕ちていないのだから。


「あぁ、ドルイドで思い出した。ここの正常化……というか、霊を鎮めるのに彼らの自然魔術も使われているんですよ」

「へぇ、それは興味深い。ヤドリギとか使ってるのかな?どこにあるとか教えてもらえるのかい?」

「教えるわけないでしょ、貴女なら壊しに行きそうだし。……そも、自然魔術はそこに在る自然の物を使って魔術を行使しているので。核を潰したと思っても、その場にある別の植物が次の核に変わったりするので無駄ですよ」

「チッ……」


……やっぱりやろうとしてやがった。しかも表情的に面白そうだからって理由でしかないだろうな、この人。


「……まぁいいです。とりあえず明日は少し早いので、この辺でお開きにしましょうか。先輩も早いでしょ?」

「あぁ、そうだったね。試験だったか……あっ」

「どうしました?」

「Trick or Treat. お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ?」

「何を言ってるんですか、お菓子はあげたでしょうカニバル先輩」

「アハ、いいじゃないか。もっとおくれよ魔女後輩」


こうして、僕たちの2人だけのハロウィンは終わりを迎えた。

少しだけ……というか、日付的には既に過ぎてしまっていたが。


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