Story 45【橙色の灯りの元へ】
ハロウィンですね
日によって霊的な存在が多い日、というのは存在する。
僕達が普段茶会を行う墓地などのような、そもそもが集まりやすい場所は除いての話だ。
何処を見ても霊的存在が闊歩しており、そして街へと溶け込んでいる。
そんな時期が現代日本には年に2回ほど存在している。
それが夏の盆の時期と、今。
所謂、ハロウィンの時期だ。
「と、いうことでホラ。君の分のかぼちゃだよ」
「……えぇっと……」
「あは、ハロウィンといったらやっぱりこれだろう?ジャック・オー・ランタン」
そして、何に感化されたのか。
僕の目の前で突然大きいかぼちゃを2つ取り出した先輩がそんな事を言い出した。
いや、理由は明確だ。
本人も言う通り、ハロウィンの時期には街にジャック・オー・ランタンを模した灯りなどが多く出てくるものなのだから。
だが、それはそれとして。
「一応聞きますけど、先輩はこのランタンについてどれくらいご存じで?」
「ん?一応、元はかぼちゃじゃなくカブをくりぬいたものだった……くらいだね」
「あー……それじゃあ作りながら話しましょうか。道具は?」
「当然持ってきてるよ。ほら、君の分も」
「ありがとうございます」
この人のやる事に逆らっても仕方ない。
というか、魔女的にもこういうイベント事には乗っかっておきたい、というのが本音だったりもするのだが。
「じゃあまず……そうですね。ジャック・オー・ランタンについて。まぁ諸説あるんですが、やっぱりここでは僕の好きな話をします」
「まぁ好きな話の方が覚えが良いだろうしね」
「それもありますね。……さて。ジャック・オー・ランタン、その元となった物なんですが……実は物じゃなく、人だったかもしれない、という話は知ってます?」
「いや、知らないね。どんな人だったんだい?」
「それはもう悪い人だったらしいですよ。悪魔を騙して地獄に落ちない、なんて契約を取り付けるくらいには」
「それは……何とも言えないねぇ」
死は救済である、なんて事は言わない。
地獄や天国、天使や悪魔なんて存在が死んだ存在を裁き、導き、そして輪廻の果てへと連れて行くのだから。
だが、ジャック・オー・ランタンはその内の1つの選択肢を生前から蹴り飛ばした。
「本当に何とも言い難いですよ。まぁだからと言って、その人は生前の行いからして天国に行けるような魂をしていなかったそうで。つまるところ、天国からも地獄からも受取拒否をされてしまったわけなんです」
「……ある種、本当の地獄ですらあるねぇそれは」
「えぇ。そんなその人はルタバガというカブに憑依して、自分が眠るための場所を求めてこの世を彷徨い続けているとも言われています。……あとは分かります?」
「つまりは、これはそんな馬鹿な人の晒し首……みたいなものだったりする?」
「似たようなものです。といっても、現代などではジャック・オー・ランタンは悪霊達を遠ざける効果がある、なんて事も言われているのでどちらの意味が正しいかは」
「諸説ある、って事なんだねぇ……うん。面白い話だったよ」
先輩はひとしきり笑った後、真顔となり、
「あれ?じゃあこれ作るのって私やばくないかい?魔除けなんだろ?……ねぇ、魔女後輩」
「ハハハ、さぁ沢山作りましょうか。まだ夜は明けませんよ、カニバル先輩」
「……まぁ自分で作るって言ったからには作るけどさぁ……覚えておきなね」
今宵はまだ、夜は長い。
どうか、親愛なる人が魔に連なる者に連れて行かれぬように。
そんな祈りを込めて、かぼちゃに彫刻刀を突き立てた。




