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Story 4 【休日はゆっくりと】

ちょっとリアルで忙しいものがあったので、すぐに投稿できるこっちから再開します。

もし良かったら、感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします


「そういえば先輩、少し聞いてもいいですか?」

「ん?なんだいなんだい。話してみなよ。結構私はなんでも答えてしまうかもしれないぜ?」


墓場の一角、テーブルを囲みつついつも通りの他愛無い雑談が行われている。


「先輩って休日何やってるんですか?……あぁ、いや。変な意味ではなく、正直気になるんですよね。貴女が昼間に何やってるのか」

「あんまり乙女のプライベートを根掘り葉掘り聞こうとするものじゃあないよ?」

「あー……すいません。答えたくなかったら答えなくていいですよ」

「いやいや、問題ないさ。乙女とは言ったが、私が乙女とはかけ離れているのは分かってるし、そも恥じらいなんてものはないからね」


先輩は食べていたクッキーを指揮棒のように振りながら話始める。

日が昇るまで、残り数時間といったところだろうか。


「そも、君は私が休日に何をやってそうだと思っているんだい?」

「えーっと……そうですね。こういった本性を知らなかったら読書とか、音楽鑑賞とか言ったんでしょうけど。正直まだ人皮とか使って家具作ってるって言われてもおかしくないとも思ってますね」

「……君。少しはオブラートに包むとかした方がいいぜ?そんな風に思われてるのか……」


先輩は咳払いを一つすると、改めて話始める。


「まぁ君の普通の方のイメージであまり変わりはないよ。本を読んだりだとか、音楽を聴いたりだとか。そうだね、あとは道具の手入れなんかもやってるかな」

「道具?趣味か何かに使うものですか……?」


そこまで言って改めて目の前の存在がどういったものかを思い出す。

彼女が言う『道具』なんて何に使うものかくらいは分かるじゃないか。


「あぁ、道具さ。流石に私の腕力は常軌を逸してるわけではないし、特殊な道具でも使わない限り人間を食べるために捌くのは難しいからね。……あぁ、普通の包丁じゃ小さすぎて使えないぜ?」

「……そうでしたね」


彼女は食人癖がある、少しばかり特殊な人間だ。

世間からのはみ出し者と言っても過言ではない。

……それを言ったら僕もはみ出し者の一員なんだけど。


自発的に行っているものではないとは言え、彼女の精神は基本的には人外に近くなっているのがよくわかる。普通の女子大学生は話ながら人間の肉を食べようとは思わないだろうし。

食べようと思ったとしても、それを実行に移すのは本当に頭がおかしい者か、それ以外の何者かだ。


「しかしそうだね。私はそういった普通な事しかしていないが……君はどうなんだ?魔女の休日とか結構面白そうなんだが」

「えーっと……そうですね。魔女の休日って言っても、僕はまだ普通な方ですよ」


と言いつつ、僕は持ってきてるカバンからスケジュール帳を2冊取り出す。

片方は白色、もう片方は黒色のものだ。


「ん?2冊も持っているのかい?予備?」

「いえ、白の方が日常で使う方。黒が魔女の方ですね」

「あぁ……そうやって分けているのか。混ざりそうだね」


先輩のその言葉に苦笑いを返しつつ、彼女の知りたがっている魔女の方のスケジュール帳を開く。

と、言ってもあまり特殊なことは行っていないのだが。


「えーっと……そうですね。明日からのゴールデンウィーク中のスケジュールでもいいですか?」

「いいよ。というかどうせ毎日会うことにはなるだろうけどね」

「そうですね……っと、ゴールデンウィーク中はあまり変わりないですね。基本的にハーブの栽培やら調薬くらいしかしてないです」

「ハーブ?」

「えぇ、ハーブです。まぁハーブと言っても一般的にいうハーブではなくて、魔法に使う特殊なハーブです。例えば……」


カバンの中を漁り、試験管を何本か取り出す。

その中には何本かの根っこのようなものや、乾燥した葉が入っていたりだとか、先ほどから話しているハーブが数種類入っている。


先輩に渡しても問題ないものを選び、何本か手渡す。

それを受け取った彼女は月明かりに照らしながらそれを視つつ、唸り声をあげた。


「うーん……これがそうなのかい?」

「えぇ、一般的にいうハーブのようなものではない、とは言いましたが……こういった魔術触媒として使用する植物の事を魔女の中ではハーブと呼ぶんです」

「へぇ、ちなみにこの根っこみたいのって?」

「それはマンドラゴラですね。そこまで特殊なものではないですけど、結構使う触媒なので持ち歩いてるものなんです」


先輩は分かっているのかどうなのか、適当にその試験管を視つつ飽きたのか僕にそれを返してくれる。

僕もあまりこの話について広げるつもりはなかったために助かった。


……先輩用のハーブも、何種類かあったりするしな。

彼女の精神はまだまだ人間ではあるだろうが、いつ人外側に傾いてしまうかは分からない。

食人という行為はそういった作用も引き出してしまうからだ。当然、そういった作用を抑えるためのハーブも何種類かは存在したりするし、現に僕はそれを最近栽培していたりもする。


「結構色々あるんだね。うーむ難しい……」

「簡単なものでいいのなら、今後教えますよ。まぁ今日はそろそろ時間なので終わりですけど」

「……おっと、もうそんな時間か。じゃここらでお開きに。またね魔女後輩」

「えぇ。また。カニバル先輩」


パチン、と指を鳴らし今まで使っていたテーブルなどをしまう。

今宵のお茶会も、これにて閉幕。


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