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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Story 37 【したいかしたくないか】


「先輩って、転生って信じます?」

「おや、宗教的な意味かい?」

「いえ、そういうのじゃなく……単純に、自分の意識があるままに別の誰かとして生きることになったら、とかそんな感じの話ですよ。それの前提の話として、信じるか否かって所です」


ふと、気になったことを聞いてみた。


「珍しい話をするねぇ。まぁ私は信じないかな」

「おや、何でです?」

「そりゃあ転生なんかしたくないからね。それって結局、肉体だけが変わって魂は変わらないって事だろう?」

「……あぁ、成程。それ(・・)が憑いて来ますもんね、先輩は」


苦笑いで答えた先輩に、納得する。

先輩の立場ならば、信じないというよりは信じたくない、が正解なのだろう。

転生をする、ということはそれ即ち転生後の人生でも、人肉を食べていかねばならないということなのだから。


「まぁ私の話はいいんだよ。君はどうなんだい?こういう話をしてきたってことは、最低でも信じてるんだろう?」

「そうですね、ある程度は。あったらいいな、程度ですけどね」


そう、こんな話を振っておいてなんだが……僕もそこまで『転生』というものがあるとは思っていない。

最近は創作が有名になり、アニメやゲームでも転生というものが題材となった作品が多くなった。

だが、結局の所……そうやって売れているものは、『転生』というものを体験して尚、その後の人生で成功した者らのサクセスストーリーでしかないのだ。


それ以前にどれだけ絶望していたとか、転生後も人として扱われずに幼少期を過ごしただとか、成功者たちにも不幸は存在する。

しかしながら、創作ではその後に成功が約束されているのだ。……所謂『召喚』系よりは。


「でも実際に転生なんてあったらその場で首を掻っ切って自殺するとは思いますよ?」

「おぉう、結構過激な意見が出たねぇ。それはなんでなんだい?」

「いや、だって普通に考えて僕が知っている人が誰一人として生きていない世界ですよ?もしあるんなら異世界に転生するのかもしれませんが、その場合なんてもっと最悪です。まだ同じ世界なら時間の流れ的に会えずともお参りくらいは出来るかもしれないのに、異世界ならそれすらできないんですよ?」

「あぁー……成程。それは確かにそうだったなぁ」


そう、転生した時の年齢にもよるが……この僕が生きている世界での知り合いと一切会えなくなる可能性を秘めている『転生』というものは、あったら面白いとは思うものの、自分がそうなりたいとは全く思えないのだ。


「ほら、創作なら転生の他に転移とか召喚とかあるでしょう?」

「あるねぇ。私はその手の奴には詳しくないけど、名前くらいは知ってるぜ?」

「あれらの方がまだ僕が言った意味では救いがあるんですよね。なんせ無理矢理とは言え、連れてくる術があるんですから」

「連れてこれたなら、送り帰す術もどこかにはあるかもしれない……って事か。成程なぁ」

「あくまで僕の意見ではありますけどね」


一息。

今日はなんとなしで緑茶を用意しておいたが、最近寒くなってきたからか、普段あまり緑茶を飲まない僕でも美味しく感じた。


「いやぁ、そう考えると異世界転生モノとかそういうのを読む時に観方が変わってくるねぇ」

「まぁ普通に楽しんで良いと思いますけどね。創作ですから」

「そうだねぇ。……とと、とりあえず今日はこれくらいにしておこうか。そろそろ向こうで忙しくなるしね、魔女後輩」

「そうですね。新作の薬とか色々用意しておかないと。あんまり無茶はしないでくださいよ?カニバル先輩」

「あは、それは無理な相談だ」


そういって、白み始めた空を背に。

僕達はいつもの墓場から帰路へとついた。


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