Story 34 【夢とは】
夢というものに、人間は昔から意味を持たせようとしてきた。
代表的なものだったら夢占いだったり。
一応、夢を見る理由としては。
寝ている間に、脳が記憶の整理を行うためだとかなんとか言われているため、色々と『夢』のない話ではあるのだが。
「で、そんな話をして急にどうしたんです?」
「いやね。丁度私も久々に夢を見てねぇ……どうせなら夢占いとかやってみないかい?」
「あぁ、成程。確かに魔術的にも昔から夢っていうのは重要視されてきたので……まぁありといえばアリですが」
今日も今日とていつもの墓場で紅茶を用意して先輩を待っていると。
走ってきた彼女が発したのは夢の説明だった。
魔術的に、夢というのは未来や過去を見るためのモノだと言われていたりもする。
僕の知り合いにも魔術的に夢の意味を調べていたり……実際に夢を見て未来視をしている魔女もいる。
それに、僕の専門である魔女学、魔女術でも夢に関する術は少しばかり齧っているため関係のない話でもないのだ。
「で、どんな夢を見たんです?」
「あは、正直普通の夢だぜ?バスに普通に乗って家に帰るってだけの夢さ」
「……先輩が普通の夢を見るんです?」
「お、喧嘩売ってるのかい?」
そんなことはないですと言いながら、先輩に紅茶の入ったマグカップを渡す。
ついでに先輩用のスコーンもだ。
「しかし、バスに乗って家に帰る夢ですか。……先輩らしくないと言えば先輩らしくない夢ではあるんですよね」
「お?ちゃんと夢占いとかそういうのだと意味があるのかい?」
「一応。体が休みたいーって時に見る夢ですよ。疲れが溜まってるんです」
「失礼な。私だってちゃんと疲れるんだぜ?普通の人間じゃあないから、それなりにスタミナはあるんだけどね」
「知ってます」
実際、先輩は人間だ。
未だその診断に首を傾げざるを得ないが、それでも魔女でもある医師からの報告によれば、彼女は化け物……亜人や悪魔、天使、魂を喰らっているものの、在り方はただの人間。
それに引っ張られているのか、精神的にも肉体的にも未だ人間であるとのこと。
これについてはまだ本人には伝えていないものの……それでいいのかもしれないと思っている。
……おっと、思考がずれてってるな。珍しい。
少しばかり脱線してしまった思考を戻すため、紅茶を口に含む。
「ちなみに、君は最近夢とか見たかい?」
「まぁ一応見ましたよ。……といってもまぁ、面白くない話ではあるんですけどね」
「ほうほう?」
「……簡単に言えば、人を殺す夢ですよ。割と気分が悪くなる感じの」
実を言えば、僕も今日夢を見た。
それも先輩には濁していっているものの……その話をしている先輩自身を殺す夢を。
しかもそれを僕が見たというのが問題だ。
「魔女がそれをみたっていうのは割と……なんとも言えないねぇ?」
「あぁ、先輩もそれは知ってましたか。そうなんですよね」
魔女……というよりは魔術に関係する者が視た夢というのは、先程も言ったように未来視、過去視的な意味が含まれている事が多い。
だからこそ、僕が見てしまった先輩を殺す夢というのは……現実になる可能性が高い夢、として夢占いで片付けるには重たいものになってしまっているのだ。
「まぁ、そうならないように祈る。もしくは……」
「もしくは?」
「そうならないように、その本人と一緒に考えるとかね?あは、話してみなよ。色々解決策が出てくるかもしれないぜ?」
「そう、なりますよねぇ……」
解決策など出てこない。
彼女がその在り方を続けるならば、半ば確定してしまっている事柄だ。
「先輩には甘えるもんだぜ?魔女後輩」
「……ありがたく、甘えさせてもらいますよ。カニバル先輩」
その未来が少しでも遠ざかるようにするしか手はないと。
僕は分かっていながら、先輩と共に将来それを犯さないための対策を話し始めた。
月よ、今だ天高く在ってくれ。




