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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Story 3 【彼女の起源は】

遅れました。

これともう一話こっち投稿したら、殺伐魔術の方を書き進めていこうと思います。


もし良かったら、感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


「そういえばなんですけど」

「ん?なんだい?」

「なんで先輩が食人しないといけないのかっていうのを聞いてなかったような気がして」

「あぁー……聞きたいかい?」

「できれば」


今宵も開かれた深夜の談合。

既にちょっとした雑談をしつつ、紅茶を飲んでいた僕の頭にふと過ったのはそんな話題だった。

現代日本には食人文化というものはどこかの村にでも行かない限りは存在しないアブノーマルなものとなっている。

しかし、このカニバル先輩はそんなアブノーマルなことを習慣として行っている。

今は僕とした約束通り食べる量や殺す数も減ったようだが、それでも今も少しずつ行っているものだ。


気にならないといえば嘘になる。

特に大学での彼女を知っている僕にとっては尚更だ。

何故あんなにも恵まれた彼女が、そんなアブノーマルな習慣に手を出したのか。それでいて今もそれを続けているのか……いや、続けねばならないのか。

魔女的にも、気になるところだった。


「うーん……まぁいいだろう。でもあんまり面白くはないよ?」

「いいです。彼を知り己を知れば百戦殆うからず……ともいいますしね。先輩のルーツを知ることは魔女的にも色々と後で便利になるんですよ」

「そうなのか。じゃあそうだね、どこから話していこうか……そう。あれは小学生高学年だったかな?」


そうして先輩は現在に繋がる話を僕に話し始めた。


「言ってしまえば、私は親に実験体にされたのさ」

「そりゃまた初めからハードな……」

「ふふ、そうだろう?小学生高学年……早ければもう反抗期に入っていてもおかしくはない歳に、親に身体を弄繰り回されたのさ」


と言いながら、彼女は着ていたシャツの腕を捲る。

白く細い腕が露わになるが、それよりも目を惹くものがあった。


「それは……呪い、ですか?」

「おぉ、分かるのかい?流石はそっちの専門家である魔女だね。……そう、これは呪いさ。人という身で、神達の土俵に上がろうとした愚かな人間に対してのね」


先輩の腕には赤黒い、目のような入れ墨が入っていた。

たったそれだけの入れ墨なのに、込められている力が大きすぎて詳しく調べなくても分かるほどに……それは凶悪なものだった。

魔法をかじったことのある人間ならば誰でも分かるほどに禍々しいそれは、見ているとこちらまで吸い込まれてしまいそうになる。


「これが所謂『神の呪い』って奴さ。これが神様から刻まれる時声が響いてねぇ。『汝、禁忌に触れる者よ。永劫の苦しみを味わうがいい』とかなんとか言ってたかな?」

「先輩の所為じゃないのに、ですか?」

「うん、私の両親にはこの呪いは無かったよ。私だけだった。……というか、普通なら成功しなかったんだろうね。そのはずだったのに……私がちょっとその適正があったおかげで成功しちゃったのさ」


そう語る先輩の顔は笑顔だが、いつものような悪戯っ子のような笑みではなく、少し泣き笑いのような悲しそうな笑みだった。

呪いというのは残酷だ。魔女になればそれは身近なものだが……一般人には全くもってそんなことはない。

先輩がかかったような『神の呪い』というものは、呪いが身近な魔女の中でも最悪と言われている類のものだ。


「ちなみに、それの影響で?」

「あぁ。私はその日から一日に一度人肉を食べねばならないという呪いがかけられてしまった。……今更だが、この呪いは人類の三大タブーに基づいてかけられたのかもしれないね」

「三大タブーといえば……殺人、近親相姦、食人の三つでしたっけ」

「君は良く知ってるねぇ。なんでも知ってるんじゃあないかい?」

「そんな彼女のお決まりのセリフは言いませんよ。……しかし、三大タブーですか」


これ以上踏み入るのも違うだろう、ということで丁度出てきた三大タブーの話へと移る。

その時に僕の事を見る先輩の目は、なんだか何時になくやさしい目をしていたような気がする。


「人類における禁忌に分類されているその三つ。先輩はもう二つほど犯していますが……まぁやはり、調べてみればこの禁忌って歴史上でも結構破られているものなんですよね」

「やっぱり?」

「えぇ。先輩に一番身近な食人で言えば、過去に何人も食人をしている犯罪者もいれば、今もそれを行っている民族もいます。殺人についてはそこらへんのニュースを見ればいいです」

「じゃあ近親相姦は?」

「近親相姦は、まぁ確かにここ日本でもあることです。悲しいことに。でもちょっと外へ見てみるとその数は一気に増えますね」


こうやって雑学を披露する場は、表と裏の普段を合わせてみても数少ない貴重なものだ。

だからこそ、自分の舌がいつもよりも早く回ることにちょっとした可笑しさがこみあげてくるが、自重せずにこのまま話していく。

その方が、僕の目の前にいるカニバリストが喜ぶだろうと思ったからだ。


「宗教の話ではありますが、近親での結婚が認められていたり、場合によっては最高の美徳だなんていう所もありました。他にも、やはり悪として裁いている国もあったりします」

「三大タブーだ禁忌だ言ってもそれが守られてないんじゃあ形無しだね、天から見下ろしてる神様も」

「えぇ、彼らも始めはこうなるとは思わなかったんでしょうね。ただ、彼らも彼らで人の事は言えませんから」


そういうと、先輩はきょとんとした後にブフッと噴き出した。

神話というのをひも解いてみるとかなりの数、近親相姦のようなものが出てくる。

いや、近『神』相姦が正しいか。


「確かにそうだ!はぁ、考えてもなかったけれど、そう考えてみるとそうだね。彼らも守れてないものを、彼らが作ったものが守れるとは思えない!」

「そうですそうです。だからといって守らない、というのもそれはそれで問題なのですが。まぁ、先輩は少しずつですが自重はしてくれているので、ありがたい限りです」

「まぁ、一応は約束だからね。そこは守るさ。当然だろう?」


悪戯っぽく舌を出しウインクまでしてくるが、やはり信じられない。

こうやって楽しんでもらえているからこそ穏やかな時間が過ぎていっているが、それもいつまで続くか分からないのだ。

だから僕は今を生きるために語り、先輩はそんな僕を笑いながら話を聞くのだろう。


「あぁ、夜明けですよカニバル先輩」

「そうだけど……そろそろその呼び名辞めないかい魔女後輩」

「そっちが辞めたら考えます」

「じゃあこっちもそうしようか」


今宵も幕が下りる。


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