Another Story 【人狼先輩と人間後輩】
いつも通りの場所。
いつも通りの時間。
そして、いつも通りのメンバー。
「おいおい、あの2人また抜け出したのか?」
「そうですよ。4人のパーティなのにまたです。去年と同じように抜けてますね」
「マジかよ。じゃあ今年もお前と一緒か……」
「何ですか先輩。嫌ですか」
「嫌ってわけじゃあねぇよ」
今日はクリスマス。
大学の友人らで集まってパーティを開く程度には、このクリスマスという文化を楽しんでいるのが俺達大学生だ。
といっても、世の中の男共から見られれば友人であろうとクリスマスの夜に女と2人でいる現状は、恨みで殺されても仕方ないと思える状態だった。
「はぁー。あ、先輩。耳出してもいいですよ」
「お前触りたいだけだろ?」
「そうとも言う」
溜息を一つ。
「仕方ねぇ。ほら、尻尾も」
「おぉ!あざます!」
俺の後輩……黒髪の短髪、活発そうな雰囲気そのままの性格の女の後輩は、俺が出した狼耳としっぽへと子供のように飛びついた。
そう、俺は人間ではない……といえば語弊があるのだが。
所謂狼男、人狼と呼ばれる人種だ。
祖の起源はヨーロッパ方面の戦士から来ているらしいが……個人的に興味がないため、そこまで覚えていない。
「……ホント、怖がらねぇのな」
「そりゃそうですよ。先輩は『汝は人狼なりや?』の人狼みたいに人を襲いませんしー……それに、豊穣関係では地位が高い方じゃなかったです?」
「俺に聞くな、そこらへんは知らねぇんだから」
実際の所、俺は人を襲った事はない……とは言い切れない。
1人、それこそ先程までここにいた男へと襲い掛かったこともある。
「ちぇー。でも先輩。気になってるんですけど……これ毎回どうやって隠してるんです?」
「これはなー……まぁうん。色々とやろうと思えば出来るんだよ。物理的に隠してるわけじゃないとだけ」
「えぇー気になりますよぅ。教えてくださいよーぅ」
「ダメだ。お前に教えたら野郎に睨まれる」
優しそうな顔をして、こちらへと全く笑っていない目を向ける魔女の事を思い出し。
……少しだけ、身震いしてしまう。
「おや、本当にやばそうですね」
「やばい、というか俺が手も足も出ねぇから。お前も最近やってるアレ、やめとけ」
「えぇ、何でですか?」
「何でもなにも当然だ。人間がこっち側に近寄るために研究するのは狂人のやることだぞ。……お前はまだ人間なんだから、それを大事にしろ」
そう言った瞬間、彼女は表情を消しこちらの顔をじっと見つめはじめる。
「匂い的に……吸血鬼か。人に一番近い外見をしちゃあいるが……アレは別モンだぞ。下手すりゃ変わる途中で魂がぶっ壊れる」
「……その鼻、厄介ですねぇ」
「はっはっは、割とこういうときは助かるイヌ科寄りの鼻だ。自慢なんだぜ?」
そう言って、テーブルの上に置いてあるシャンパンを自分のグラスに注いだ。
そこまで得意ではないものの、今は飲みたい気分だったのだ。
「お前が何を思ってその研究をしているかは知らねぇ。知らねぇし本当は見て見ぬふりをした方がいいってのも分かっちゃいるんだが……」
「だが?」
「俺は平和主義、というか博愛主義なんでね。友人らが殺し合いするとこなんざ見たくねぇのさ」
そして、間違いなく目の前のこのちっこい後輩は殺される。
あの魔女の男は知り合いだろうが容赦はしないだろう。
俺がそうだったように。
「……友人、ですか」
「そうそう。まぁ話を通すくらいはしとけ。ある程度は知ってるんだろう?」
「知りませんよ。墓場で楽しくしてることくらいしか」
「大分知ってるじゃねぇか」
そんな会話をしながら、俺達の夜は過ぎていく。
甘い展開なんてものはなく、あくまでも友人同士で酒を飲み飯を喰らい。
愉しい時間が過ぎていく。
「いやぁ、ところでなんで私達が突然抜擢されたんです?人狼先輩」
「そりゃ1つの答えとしてな。こういう関係も、あったはずなんだっていう答えを提示してるだけだよ。人間後輩」
今宵の月は、丸い。




