Story 24【その時間は】
いつもの場所……ではなく。
現在僕と先輩は、大学の近くのカフェへと2人で訪れていた。
時刻はおおよそ18時過ぎ。
まだまだ僕たちのいつもの談笑には早い時間だ。
「で?今日は先輩が話をするってことで呼び出されましたけど……まだ早いですよ?時間」
「いや、これくらいが丁度いいのさ。今日したい話はこれくらいの時間だからこその話だからね」
ウェイトレスが運んできた珈琲を受け取りながら。
今日呼び出された理由を聞いてみた。
いつもならば、夜の集合直前までは連絡が来ない先輩からの呼び出しだ。
表情を見るに、そこまで深刻そうな話ではないと踏んでリラックスはしているが。
「ん、君は逢魔時って知ってるかい?」
「……あー成程。丁度これくらいですよね。時間」
「あぁ、やっぱり知ってるよねぇ。……いや、今なら知ってる人も昔よりは多いのかな」
「某入れ替わる映画で増えましたからねぇ、知ってる人」
逢魔時。
大体時刻的には18時頃を示す言葉だ。
他にも誰彼時や、酉の刻なんても言われる時間帯。
そのどれもが基本的には「怪しいものに出会いそうな時間」と言われているものだ。
「まぁ、その逢魔時の話をしたいなぁと思ってね」
「僕はどっちかっていうと西洋の流れをくんでいる方ですからね。思いっきり和テイストのモノはあまり詳しくはないんですよ」
「おや、それは良いね。話甲斐があるってものだ」
といっても、と先輩は前置きしてから。
カフェのウェイトレスに珈琲のお替りを頼んだ。
「逢魔時の話、と言っても色々と……そう。私達の間じゃ相応しくないんだよね」
「確かに妖怪や幽霊なんかに会うって言われても……今更感はありますね」
「そうそう。目の前に魔女、それに私自身もかなり特殊な……それこそ妖怪に近いものだしねぇ」
確かにそうなのだ。
詳しい話は知らないものの、逢魔時という時刻は僕や先輩のような者たちに出会う可能性がある時間。
それ以外にも、「不幸な時間」という意味での大禍時という言葉もあるが……先輩に会う事自体普通の人に言わせれば不幸であると言えるだろう。
「あー、でも確か……異界と現実を繋ぐ時間とも言われてますよね」
「そうだね。詳しい事は流石に専門じゃないからわからないけれど……ほら、日本人って昔から神隠しとかあるじゃない?」
「成程、逢魔時に消えた子が多かったからそう言われ始めたと」
「そうじゃないかなぁって私は思ってる。……実際どうかは分からないけどね」
その神隠しに関わっているのが、僕たち魔女ですと言ったら先輩はどんな顔をするのだろうか。
基本的に、そういった言葉が広まり始めたのは魔女や亜人たちがまだ取り締まられていなかった時代だ。
当時は人を使った実験も多かったと聞く。
そのため……言っては何だが。攫いやすい子供はよくよく使われていた。
現代ではそんなことはいけないと、きっちり取り締まってはいるが。
「いやぁ、こういう事実が分からないことを考えるのは楽しいだろう?魔女後輩」
「そうですねぇ……これをきっかけに日本のオカルト関係を調べてみるのもいいかもしれないですね、カニバル先輩」
その後しばらく雑談を交わした後、今日は解散した。
事実は小説より奇なり、とはいうものの。
知らない方がいい事実というものも存在するのだ。




