Story 22 【赤い液体は何のために】
「なぁ、少年」
「なんですか、というか今日はそういうキャラなんですか?」
「つまらないリアクションをするねぇ、君は。……人ってなんでお酒を飲みすぎると記憶が飛ぶのか、知ってるかい?」
「あー……いえ、知りませんね。個人的には酩酊状態によって、全体的に見ているものを夢だと脳が勘違いして記憶があやふやになってるんじゃないかって思ってますけど」
今宵も丑三つ時。
ファンタジーに出てきそうな魔女の恰好をした可笑しな男と、既に11月だというのに未だに半袖短パンの綺麗な女が、誰からも忘れられた郊外の墓場にてただただ話し合っていた。
「ん、良いね。良い解答だ」
「おや、もしかして正解ですか?」
「いや、正解は『脳の記憶を司る海馬の働きがアルコールによって阻害されるから』なんだけど……個人的には君の答えの方が面白いから好きかな」
「なるほど」
そう話していれば。
先輩はどこからか、瓶を取り出した。
中には赤い液体が入っており、一瞬先輩の事だから人間の血かと思ったものの。
「……ワイン?」
「そう、赤ワイン。今日はこれを飲みながら話そうぜ?」
「グラスは持ってるんですか?」
「あは、私の使ってるグラスを使いたいかい?」
「結構です」
指を1度鳴らす。
すると、何処からともなくテーブルの上にグラスが2つ出現した。
「いつも思うけど、それ便利だよねぇ」
「まぁ設定しておくだけなので。……その設定作業が面倒なんですがね」
そう言って、グラスを渡しつつ。
「でもなんで突然ワインなんですか?」
「本当にそこまで深い理由はないんだけれど…….強いて言えば」
「強いて言えば?」
「ほら、吸血鬼って血の代わりにトマトジュースや赤ワイン飲むだろう?それと同じさ」
「……あ、やっぱりこの前の診断で吸血鬼って出ましたか」
推定吸血鬼らしき何かを喰らった彼女には、一度魔女の関係者がやっている健康診断に参加してもらった。
その結果が出たのだろう。
彼女的には意識してないのかもしれないが、割と大事な結果が。
「あは、吸血鬼の因子がどーたらこーたらーって言われたね」
「もう先輩が何処に向かって成長するのかってレベルですよ。そのうち悪魔や天使を食べたっていうんじゃないかって」
「いうわけないじゃないか。あんな不味いの食べたくないよ」
「……あんな不味いの?」
聞き捨てならない単語が聞こえたため、指摘すると。
先輩はヤベッという顔をこちらへと見せてきた。
「いつです?いつやったんですそれ」
「えーっとぉ、診断の後だったかなぁー……」
「昨日じゃあないですか!何やってんだカニバル先輩!」
「うるさいなぁ!仕方ないだろう襲ってきたんだから!魔女後輩!!」
今宵も、会話は続いていく。
いや、今宵は喧騒が続いていく、の方が正しいだろう。
夜はもうすぐ明ける。




