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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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23/56

Story 19 【それは何故なのでしょうか】


「そういえばの話なのだけど」

「はいはい?」

「何で私、お酒普通に飲めるんだろうねぇ」


今宵も、忘れられた墓場に男女の声が響く。


「恐らくの話でいいのなら話せますが」

「それでいいよ、話半分に聞こう」

「真面目に聞いてくれると助かるんですけどね。……まぁ、先輩がお酒を飲める理由っていうのは基本的には単純な話です」


一息。


「神の祝福(呪い)は、基本的に自身に善となるものを拒絶します。これは他の祝福持ちも同様です」

「だろうね」

「で、彼らは彼らの食い扶持って奴をやっぱり持っています。先輩で言う食人のように」


一応の話をすれば、そういった者らは基本的に魔女が管理している。

先輩だってそうだ。本人には感じてはいないだろうが、監視の目というのは何処にでも存在しているものなのだ。


話を戻そう。


「まぁその話は置いとくとして。彼らは結局体の相性の悪いものばかりを摂取しているわけなんですよ」

「だろうね、私の人肉も普通に悪影響のあるものだからね、基本」

「そうなんです。で、ここで話が一番最初に戻るんですが……何故お酒が飲めるのかと先輩が疑問に思った経緯を教えてくれます?」

「ん?いやまぁ簡単な話、お酒って結構『神に捧げる』だとか、『神の血』だとか言われてるものだろう?だからこそ、神社とかに入れない私は受け付けないって思ってたんだよねぇ」


そこまでいって、彼女は紅茶に口をつける。

先輩の疑問は尤もだろう。それこそ、神道あたりでは神酒と言うものも存在するし、神の血云々は血が葡萄酒らしいイエスさんの話だろうし。

酒というのは、人を良くも悪くも惹きつける。

だからこそ、そこに昔の人は神を見出したのかもしれない。


「僕の考えを言いますと」

「ほいほい」

「単純に、お酒って人を殺しうるものなんですよ。それこそ死因の何パーセントかはお酒が原因だった記憶がありますし。詳しい数値までは覚えてないですけど。で、先輩は単純に神という概念のような存在から殺意を向けられている(祝福を受けている)


指を立てながら、口からデマを吐いていく。

どうせ僕がいつの日かの暇な時に考えた妄想の類だ。

面白そうに聞いてくれる観客を飽きさせないように、僕は舌を回す。


「その2つから考えるに、単純に仮称神様は先輩に『アル中にでもなって死んでしまえ!』とか言ってるんじゃないですか?」

「あは、いいねぇその考え。面白い」

「意外と好評のようで。ありがたい限りです」


僕の語りが終わると同時、先輩は面白そうに笑い手を叩いた。

途中から適当な事を言っていたのがばれていたようで、語り手としては下の下なのだろうが……それでも、楽しんでくれた観客がいるのならそれでいいだろう。


「参考になったよ。そうか、殺意かぁ。そっちは考えてなかったなぁ」

「まぁ本当に妄想ですけどね。それこそ、だったらなんで水とかが飲めるんだって話にはなりますし」

「そうだよねぇ……所で、この紅茶はなんで飲めるんだい?魔女後輩」

「それは単純に自然由来の猛毒を隠し味に入れているからですよ、カニバル先輩」


そんな真実を適当に言いながら、僕達の茶会は幕を閉じる。


「あは、猛毒も効かなくなったかぁこの身体」

「僕らは解毒してますけど、先輩は素の肉体機能で何とかしてますからねぇ」

「いやぁ、一層化け物に近づいたぜ」


人外同士の語りは、まだ終わらない。


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