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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Story 16【その考えは】


「人ってさ」

「はい」

「知らず知らずのうちに誰しもが洗脳されてるよね。私も君も、それにここを見張ってるのであろう他の魔女さん達も全員さ」

「……どういうことです?」


いつも通りの場所、いつも通りの時間。

僕と先輩は紅茶とお菓子を味わいながら、適当に雑談していた。


「いや簡単な話でね。洗脳っていうのは、その人に対して新しい考えとかその人が考えてなかった思惑なんかを植え付けることだろう?」

「まぁ、えぇ。大体はそんな感じですね」

「それってさ、学校で行われていることだったり、各家庭で行われてる……所謂『教育』も同じことじゃないかなって思って」

「……あぁ、成る程。それでみんな洗脳されていると」


そう言えば、彼女は笑顔で頷いた。

確かに言われてみればそうだろう。

人間というのは、どうしたって育った環境で価値観が培われていく生き物だ。


しかしながら、それは見方を変えればそういう風になる様に、そういう風に考えるように『教育』されてきたからで。


「まぁ、洗脳とか言うには失礼だとは思うだけどさ。でもそうだろう?考えれば考えるほどそう思えてきちゃってね」

「実際似たようなものですから。……あぁ、でも」


一息。


「なんで『洗脳』と『教育』がこうも違う印象を与えているのかっていうのなら、少しだけ今の僕でも考えられることがありまして」

「ほう?」

「言ってしまえば、『洗脳』ってワードは特撮や女児向けアニメなんかに代表される非日常系創作物に良く出てくるんですよ」


あくまでも僕の考えを語っていく。

ここで詳しく話を聞いているのが先輩だけで良かったな、と思いつつ。

一応記録を録っているであろう監視役にも後で何かしらを言っておかねばならないだろう。


「悪役に洗脳されたーだったり。悪役に捕まった仲間が敵に!だったり。あれらを昔から……それこそ、周りからスポンジのように知識を吸収する幼少期から見せられていれば……」

「悪い印象にもなる、と。なるほどね。じゃあ『教育』は?なんで悪いイメージとか持たれてないんだい?」


僕の考えを分かっているのかいないのか。

そのまま話すように勧めてくる。


「まぁそっちに関して言えば、昔からのイメージですね」

「昔から……?」

「えぇ。『教育』する側の人間って、大抵昔の人からすると立場が凄く上に感じるらしくて。それこそ、よくお年寄りがいう『学者様』みたいに、様付けしてたりだとかしちゃうみたいなんですよ」


緩くなってきたアイスティーに口をつけ、もう少し続ける。


「だからこそ、そんな立場が上の人たちが行なっている『教育』は素晴らしいことなんだ!っていうイメージが昔からあるんですね」

「でも私は言っちゃあれだけど、これまで生きてきた中でそういうのは言われなかったぜ?」

「言われなくても、周りの空気は読んできたでしょう?」

「……あー、成る程?空気を読んで合わせていたからこそ、それが良い物だって思ってる人のイメージも雰囲気、空気として伝わって」

「そうして、周りもうっすらと良いものだと考えるようになる、みたいな」


そこまで言って、二人して口を閉ざした。

沈黙がこの場に浸透して。

どちらかがそれに耐えきれず、息を吐くように笑い出した。

それにつられ、残った方も笑い出し。


「あー、いやぁ、いいね。君にしては面白い考えじゃあないか」

「正直どこの陰謀論かってレベルですけどね。自分で言ってはなんですけど、流石にこれはない」

「私はアリだと思うぜ?」

「笑えるからでしょう?」

「あは、そうだよ」


根拠も何もない、ただの妄想を語っただけ。

陰謀論の方が、まだ根拠がある分いいかもしれないそれを二人で笑い合いながら。

明るくなってきた空を見上げて、片付けを開始する。


「また今日みたいな話、待ってるぜ魔女後輩」

「次は貴女の番ですよ、カニバル先輩」


こうして、夜の談合は終了する。

今宵も、人知れず。


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