Story12 【まだ歩いていく】
「今日も今日とて、と言ってみるとアレだけど。君はいいのかい?もうすぐ新年になるんだぜ?こんな辛気臭い所にいるべきじゃあないだろう」
「ところがそうでもないんですよね。僕の魔女としての仕事って、結局のところ先輩を監視っていうか、先輩の関心を他の人からこっちに向けることですし」
「……まぁ、そうっちゃそうか」
先輩の言葉を借りるわけではないが、今日も今日とて僕と先輩はいつもの墓場に集まっていた。
といっても、今日は灰皿と共に先輩が用意したと思われる日本酒をちびちびと飲みながらではあったが。
「そういえば、先輩こそ今日はお友達と初詣の予定とかなかったんですか?」
「いや、まぁ。誘われたんだけどね。……色々あって、私は神社や寺とかそういった系統の建物には入れないからさ」
あぁ、と一つ頷く。
彼女の身体には神の祝福が込められている。
それこそ彼女の生き方を根本から、概念から変えてしまったソレ。
ソレが身に宿る所為か、彼女は神や仏といった存在に関係のある場所に物理的に侵入することができない。
入ろうとしても、見えない壁があるかのように彼女は入口から先に進むことができない。
一度は無理にでも入ろうとしたのだという。だがしかし。それでもいつの間にか入口に戻されてしまっていたそうで。
「まぁ、そんなのはどうでもいいんだ。今日はさ、君の来年の抱負とか聞きたいんだよ。構わないかい?」
「いいですけど……先輩は抱負とかってあるんですか?人の殺害数削減!とかならこちらとしてもありがたいんですけど」
「あは、それでもいいんだけどね。私の抱負はもう決めてるんだよ」
一息。
「私の抱負は単純に『料理をある程度のレベルまで出来るようになる』だよ。女の子らしい可愛らしい抱負だろう?」
「……そうですね。ちなみに材料は何を使う予定で?」
「それを聞くのかい?分かり切っているだろうに」
クックック、と喉を鳴らして笑う彼女の姿をみて、つい半目になってしまうが仕方ないことでもある。
普通の材料を使ってくれるのなら、応援も出来るし僕もある程度その練習に付き合ってもいいと考えていたのだが。
「で、結局君の抱負は?」
「あー、えっと。了承したのはいいんですけど……僕まだ来年の抱負とか考えてなくて」
「おや、それはいけない。こういう願い事っていうのはきちんと内容を決めた方がいい。ほら、例えば……」
「例えば?」
「『もっと周りに気を配る』とかさ」
それは暗に僕が周りに迷惑をかけているといいたいのだろうか。
確かに、突然殺人鬼との面会をしたいだとか、こういった場を毎日毎日開いているために近場に住んでいる魔女達の心労はかなりのものとなっていることだろう。
「じゃあそれにします。他に思い浮かばないですしね」
「そうかい?……しかし、今年は本当に濃い一年だったなぁ……」
「確かにそうですね。僕もこんな場所で先輩と話ながらお酒飲むなんてことになるとは思いませんでしたよ。本当に濃い一年でした」
「ある意味良いだろう?自分で言うのもあれだけど、大学で有名な異性の先輩と夜な夜な一緒に語り合えるんだぜ?」
「本当に先輩自身が言わなければ、少しは特別な感じがするんですけどね」
……本当に。見た目だけは絶世の美女とか言われるかもしれないくらいには綺麗なのに。
僕が彼女に対して特別な感情を抱くことは……あるのだろうか。
一般的な人ならば、彼女を知れば特別な感情を一応は抱くことにはなる。
それがプラスの感情なのか、マイナスの感情なのかはその人の性癖によるのだが。
「あは、まぁいいかな。とりあえずそろそろ年明けだ。いやぁ、来年も楽しければいいねぇ魔女後輩くん?」
「あー……そうですね。少しは自重してくれるとこっちも楽しいんですけどね、カニバル先輩さん?」
そして二人で笑い合う。
空にはいつもと変わりない月が僕たちを照らしていた。
今年最後!ありがとうございました!!
2019年もよろしくですよ!




