Sub Story 2 【男同士の会話・後】
遅れました~~
「まぁ、言っても俺が離れた理由はさっきのが大半で……っと。残りは『魔女達の監視が増えてきたから』ってのがある」
「……あぁーまぁ、はい。そうですね」
「まぁな。こんな事してるから割と君達の事は知ってるし……今も何人か視てるんだろう?コレ」
「えぇ。一応僕が殺された瞬間に色々襲い掛かってくることになると思いますよ」
「普通自分を殺すかもしれない相手にそんな事言うか?……君、やっぱり緊張してねぇな?」
……緊張していないわけないじゃないか。
ここに来る前は、少しだけ……というか。そもそも連続殺人鬼に会う事になるのだ。緊張しないわけがない。
「まぁ、こういう仕事はよくやってますから」
「……あぁ、なんだっけ?交渉余地のある危険人物とは繋がりを……っていう魔女内のルールだっけか?」
「そんなとこです。特に貴方や先輩みたいな殺人やらを犯している人物は後天的に魔の道へと堕ちる事が多いのでその時の対処が容易になるように、と」
「そんなこと教えて良かったのか?俺が堕ちた後の対策を練ったりしたらどうする?」
「あー……まぁ、そういう対策を練る人も実際に居るには居るんですけどね」
苦笑いしながら頬をかく。
実際にそういう事をする人は居る。
どういう方向で堕ちるかにもよるのだ。
先輩のように、魂喰いのように魂を喰らう事に特化した人外へと変わっていくか。
目の前の男のように、人を殺す事に特化した人外……存在へと変わっていくか。
それらを討伐、あるいは封印するのも僕たち魔女達の仕事ではある。
しかし、やっぱりそんな簡単にいくものではない。
魔女に目をつけられ、こうした話の場を設けられている時点でその危険人物は何かしらの『魔』をその身に宿している事が常だ。
だからこそ彼らは僕らに討伐、封印されないように対策を練る。
しかし、
「大体、そんな付け焼き刃で何年も何十年も、何百年も続いてきた魔女達の術を破る事が出来るとでもお思いで?」
「……成程、それがお前らがそうやって緊張してるって言いながらも畏れてはいない理由ってわけか」
「まぁ、僕にはそういったプライドなんてものはほぼ無いんですけどね。他にも僕と年代が近い……それこそ若い魔女達はそんな考えはほぼ無いですよ。上の方の人らだけです」
「でも、自信だけはあるんだろう?」
勿論、と短く答え息を吐く。その様子を見て、教授は喉を鳴らして笑う。
「とりあえずそんな感じですね。そろそろお暇しても?」
「そうだな……君も魔女である前に学生だろうしな。流石にそんな未来ある若人を長時間拘束なんて出来ないさ」
「白々しい」
「はは、これでも書類上とはいえ一人の娘の親だったこともあるんだぜ?そこらへんはきちんと分かってるつもりなんだがな」
……だった、か。
正直な話、僕が先輩の代わりに色々恨み言を言うというのもこの場ではありなんだろう。
恐らくだが、目の前の男もそれくらい言われるんじゃないかと頭のどこかでは考えてはいそうだが。
だからこそ、僕は何も言わない。
言った所でこの男は変わらないだろうし、それ以前に僕が言うセリフではないだろう。
そういった恨み言は、本人が言う事で本来の役割を果たすのだから。
「では、今日はありがとうございました」
「あぁ、こちらこそ。……っと、忘れる所だった。ほら」
「?……って、うわ!なんですかコレ」
僕が席を立とうとした所で、教授は何やら懐を漁りだした。
そして、何やら長方形の箱のようなものを取り出し僕へと投げる。
僕が慌ててそれをキャッチし確認してする様子を笑いながら見てる彼は、
「今年は俺の都合で会えないだろうからな。それ、お前の愛しの先輩に渡してやれ」
「……それは構わないですけど、中身は?」
「俺が作ったもんだ。……あぁ、大丈夫。あんたらの領域には踏み込んでないはずだぜ?実際手に触れなくてもそこらへん感じ取れるだろう?」
確かに、この箱……その中身からは魔力に類するものは感じ取れない。
恐らくは普通の物、いやこの男が作ったと言ったモノだ。普通なわけがない。
「……わかりました。これを渡せばいいんですね?」
「頼んだぜ。あ、俺の名前は出すなよ?どこで会ったんだとか問い詰められる事になるからな?」
「あー、はい」
そこから二言三言ほど言葉を交わした後、僕はその場を後にした。
その後の話は簡単だ。
魔力は感じられないが一応調べておく、と言われ教授から受け取ったモノを他の魔女に回収され何日か。
そしてそれが返ってきて、されど肝心の渡す相手がいつの間にか風邪を引いておりそれの看病でまた何日か。
結局いつも通りの夜会に戻ったのは、教授との会話から1週間以上経ってからだった。
「で?最近どうだったんだい?後輩君」
「何ですかその話題がないから振る感じの振り方は」
「いやね?最近は私の看病とか、それ以外も魔女としての仕事なんかもしてたんだろう?そこらへん、そういえば詳しく知らないなと思ってさ」
場所はいつもの墓場。
いつも通り先輩と魔力の扱いの練習をした後に、紅茶を飲みながらクッキーを食べながら。
和気藹々とまではいかないものの、適度に弾んだ会話をしていた。
「一応守秘義務ってのもあるんですけどね……あ」
「あ?」
「そういえば、先輩に渡すものがあったんでした」
「おっ?なんだいなんだい?まだクリスマスでもないぜ?プレゼントには早いだろうに」
そんな言葉を聞きながら、僕は懐から教授から受け取った箱を取り出した。
「これ。ある人から先輩にって」
「ほう?私もモテ期って奴かな?」
「馬鹿な事言ってないで受け取ってください。それ、まだ僕も中確かめてないんですから」
「ふーん……」
先輩はその箱を開け、中を確認し……そのまま固まってしまう。
何が入っていたんだろう?と僕も先輩の背後へと回り込み箱の中身を確認すると、
「これは……ナイフ?刀身が白いですね」
「これは人骨で作られたナイフだろうね。成程……これだけのナイフを作れる人は彼以外に知らないが……ふむ」
これはまずいな、と思い。
追及される前に逃げ出すように椅子に立てかけてあった箒を掴み空へと逃げようとしたが。
それと同時、肩を強い力で抑えられそのまま動けなくなってしまった。
後ろを向けば、良い笑顔をした先輩がそこにはいて。
「ちょっといいかい?これの出自について聞きたいんだ。いいだろう?魔女後輩」
「……守秘義務があると言ったらどうするんですか?カニバル先輩」
「そりゃ無理矢理聞き出すだけさ!さぁどこで手に入れたんだいコレ!しかも私ですらこんな作品知らない!さては本人と会ったのかな!?」
僕はその場に正座させられ、先輩からモノの出所について聞かれ続けた。
それこそ夜が明け街が活動を始めるまで。
関係のない話ですが。
恨み言っていうのは、割と言葉の中でも力を持つんですよね。
それこそ、恨み言を面と向かって言われたら何の力の無い一般人でも精神的にクるでしょう?
もう一つ関係ない話ですが。
先輩、結構魔力の扱い方が上手くなってきたようで……言葉に魔力を乗せる事も意識して出来るようになってきたそうで。
あは。




