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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Sub Story 1 【男同士の会話・前】


「っとと、どうぞ。お座りください」

「あぁ、失礼するよ」


目の前のソファに初対面の男性が座る。

ある種面接のように見え、僕は少しだけ気後れしてしまうが……あぁ。そんなことを考えるためにここに来たわけではないのだ。


場所は都内某所。

僕とその男性が居る場所は薄暗く。しかし、相手の顔も分かる程度には明るい場所で。

まだまだ日は天高く輝いており、普通だったら僕はまだ大学の方に居るべき時間だった。

しかし、まぁ。今日は魔女としての行動なのだ。そこに学生という身分は関係ない。


「……?あぁ。緊張してるのか?大丈夫大丈夫、取って食ったりはしない。彼女じゃないのだから」

「あはは……まぁ、でも緊張はしますよ。表じゃ殺人鬼で名の通ってる相手に会ってるんですもの」

「おや、それは失敬。でも彼女も似たようなものだろう?」

「彼女はまだ表沙汰にはなってないですから。それにまだ手あたり次第に人を殺さず、きちんと理性的に……いや、この場合は食欲的にかな。そう、食欲的に自分を律してますから」

「君実は緊張なんてしてないだろ」


苦笑いしながらそう返され、僕は少しだけ緊張感を強めた。

一度大きく深呼吸でもした方が良いのだろうか、と考え……その考えを即座に捨てる。


「……緊張はしてますよ。なんせ、指定した場所に来たら死体の山が歓迎してくれたんですから」

「はは。そいつはまぁ……許してくれ。俺のライフワークみたいなものでさ。出来る限り近くに居る人間は少ない方が良かったんだ」


流石に血の匂いが充満している場所の空気を吸っても、僕の緊張は解けないだろうから。


「さて、では魔女が俺を呼び出した理由を聞いてもいいかな」

「分かってるんじゃないですか?」

「それでも君の口から聞くことに意味がある。そういうモノだ」

「……彼女について聞きたい事がありまして」


僕の言葉を聞くと、彼は二ィとその造形の良い顔を歪める。


「あぁ、なんだっけ?カニバル先輩って呼んでるんだっけか、君は」

「えぇ、その人の事を聞きたいんです。知っているでしょう?」

「知っているとも。むしろ俺が一番彼女の事を知っていると言っても過言ではないだろう。だからこそ、俺は言おう。……君が得られるものは特にないだろうさ」

「聞いてみないと分からない事もあります。それに……」


一息。


「それに、僕自身少し気になっている事もあるので」

「気になっている事?ふむ……あぁ、待ってくれ。答え合わせはまだ結構だ。こういうのは自分で考えるから面白い。……ふむ」


考えるように、顎に手を添えた彼は十数秒目を閉じ黙り込むと、カッと目を開きニヤリと笑った。


「もしかしてアレか?養子として、書類上では親と子の関係であったあの子の傍を理由も告げずに離れた事か?」

「……わざわざこちらが知らなかった関係まで交えて答えてくれてありがとうございます。そういうことですよ、合ってます」

「はは、そうだな。まずは何から話そうか……よし、こうしよう。まずは一つ、離れた理由から教えてあげようじゃないか」


そう言うと彼は立ち上がり、部屋にあったホワイトボードを僕が見やすい位置まで持ってきた。

インクはなく。ただ、ある種天然の液体ならばそこらに落ちている死体から今もなお流れ出しているため、書くものには困らない。


「よし、ある意味授業のようになるがそれもまたよし。ここは一つ、君も俺の事を警察のように『教授』と呼んでみるというのはどうかな?」

「……では、そう呼ぶことにします」

「素直な生徒は大好きだ。……さて、俺があの子から離れた大きな理由は言ってしまえば一つしかない」


そう言いながら、教授は人差し指を死体の傷口に突っ込み天然のインクを指に付け……そのままホワイトボードに何かしらを書いていく。


「……『嫌いになりたくないから?』」

「あぁ。これが一番の理由さ。嫌いになりたくない。周りの……特に一番近くに居たあの子の事を嫌いになりたくはなかったからさ。だから離れた。簡単な理由だろう?」

「また、なんで?」

「んー……まぁさ。アレだよ。嫌いなモノと付き合っていかないと社会で生きていけないとか言われるだろ?俺ってアレができねぇんだよ。どうしても嫌いなモノは嫌いだし、話したくもない。関わりたくもない。消えてしまえって思ってるし、それがどうにもならないから俺は殺人鬼って言われてる」


だから、


「俺があの子を嫌いになる前に、あの子を殺す前に、そんな自分が出てくる前に離れたんだわ。分かる?」

「成程……分かりました。でも、僕は大丈夫なんですか?」

「あ?んなもん……君、自分が人間って言えるとでも思ってる?流石にそれは自分の事分かってなさすぎだと思うぜ?」

「失礼。形だけでも人間だったんで気になって」


成程なー、と教授は呟いた後。

爛々と目を輝かせながら、こちらを凝視する。


「俺は、見た目が嫌いで殺してるんじゃない。人間『の』精神が嫌いなんだよ。だから人間を殺す。根絶やしにする。出来るだけそういったモノが近くにいる状態は避けたいし、そんな所に放り出されたらこんな感じになっちまう」


腕を広げ、周りに落ちているモノらを見渡すように彼は回る。


「一度死んじまえば、こいつらは精神を持たないモノになる。これだけでも十分俺の精神は安定するからな」

「……ふむ」

「だから君は大丈夫。人間の形はしてるけど、中身が全然ちげぇからな。……話を戻そう」


そう言うと、指に新しい血を付けてホワイトボードに新しく文字を書いていく。


ちょっと長くなるので、分けて投稿することにしました。

続きは少しお待ちを。

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