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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Story 10 【紫煙の香り】

11月らーすと!


10話目ですが、いつも通りです。

いや、いつもより少し会話多いです。


今日は僕の方が早くついてしまったようで。

先輩を出迎えるための準備を終わらせて、一息。


手持ち無沙汰になった僕は、最近始めてしまった新しい趣味を待っている間にすることにした。


「……ふぅ」


似合わないと思いつつ。

火をつけたそれを咥え、浅く息を吸い込む。

紫煙が空へと伸びていく様を見ながら、肺に溜まった煙を少しずつ少しずつ吐き出していく。


「おや、珍しい。煙草なんて吸うんだね君」

「……」


もう一息吸おうとした瞬間、背後から声をかけられた。

びくんと肩が上がりそうになるのを必死に抑え、持ってきていた携帯灰皿を使って火を消す。

……失敗したなぁ。


「先輩遅かったですね」

「煙草吸うんだね、君」

「……あ、もう紅茶とかの準備も出来てますよ。今日のお茶請けはこの前好きだって言ってたクッキーをですね」

「煙草吸うんだね、君」

「…………」

「煙草吸うんだね、君」


恐らく、今の僕は凄い間抜けな顔をしているんだろう。

冷や汗が止まらない。

先ほどから何故か顔を合わせられない彼女から、何故か圧を感じるのは僕の気のせいじゃないんだろう。


「煙草吸うんだね、君」

「……もしかして先輩、煙草お嫌いですか?」

「いやいや、君の知らない一面を知れて興味深いなって思ってるよ。でもいつもは吸っていなかったろう?大丈夫だったの?」


観念して先輩の方を向いた僕に、彼女は好奇心満々な目をこちらへと向けてきていた。


「大丈夫ですよ。これ、最近始めた趣味なんで。……臭いとか、本当に大丈夫です?」

「あぁ、問題ないよ。私は嫌煙家じゃないし、そもそも友人が割と吸っている人でね。これでも吸ってない割には銘柄とか知ってるんだぜ?」

「……その割には少し圧ありましたよね」


そう言いながら用意したお茶請けを差し出す。

「ありがとう」と少しだけ笑いながら受け取るも、その目だけは少しだけ笑ってないように見える彼女は……やはり、怒っているのだろう。

何にそんなに怒っているのかが分からないのだが。


「所で、君はなんでそんなものを始めたんだい?害はあっても益はないと思うんだが」

「あぁ、その点はちゃんと考えてますよ。これ自分で巻いたもので……中には少しだけ自分で作ったハーブを入れてるんで魔術的な意味合いもあったりするんです」

「ほう?詳しく聞いても?」

「構いませんよ……っと」


手持ちの試験官に入ったハーブを懐から取り出しつつ、それと一緒に先ほど仕舞った煙草も取り出す。

少しだけ先輩には話したくはない話だが、まぁ話さない限り解放されなさそうだし仕方ないと割り切ろう。


「簡単に言えば、薬効のある煙草を自作してる感じですね。魔術的な意味、とは言いましたけどかなり限定的な効果を持ったものを作ってます」

「ふむ」

「そうですね……例えば限定的な魔力抵抗なんかを付与できるハーブがコレ、精神安定用のハーブがコレ、あとは……これが肉体強化用のハーブだったかな。これらを配合して煙草にしてます」


僕がそれぞれのハーブを指さしながら説明すると、徐々に先輩の目が見開いていく。

その様子が少しだけ面白くて、僕は少しだけ頬を緩ませた。


「成程ね……ある程度予想出来るけど、なんでこんなものを?」

「……予想できるならいいじゃないですか」


ニヤニヤと笑いながらこちらに対して問いを投げてくる彼女に対し、僕はそっぽを向いて答えてしまう。

……あぁ、だからバレたくなかったんだ。

聞かれたら答えたくなってしまう性分だから。問いに対して、僕は凄く弱い。


「いやいや、私の考えと君の答えが本当に一致するかは分からないだろう?だからこういった答え合わせっていうのは重要なんだよ。ほら、テストなんかでもよくあるだろう?答えは分かるけど、解説しろって言われたら全然文章を書けない奴。それと同じさ」

「……そんなべらべら言わなくても」

「はは、それだけ聞きたいってことさ。さぁ、出題者さんは答えを教えてくれないのかい?」


先輩は悪戯っぽく笑う。

答えも、先輩が言う所の解説なんかも全部分かってるくせに聞いてくるのだ。

僕の口から聞きたいという理由だけで。


あぁ。

あぁ……なんて僕の事を弄るのが(・・・・)好きな(・・・)先輩なんだろうか。

僕が狼狽えているのを見て、そんなに楽しいのか。


「……はぁ。まぁアレですよ。先輩は最近魔力の扱いに慣れてきてますし、それに比例してか扱える魔力量も増えてきてるんで。僕もこうやって自衛しないと指導できないんですよ」

「それだけかい?」

「…………あとは、単純に。僕が先輩の歌を純粋な気持ちだけで楽しみたいってだけなんですけど」


それだけ聞くと、先輩は満足したかのような笑みを浮かべる。

……今日の訓練は少し厳しくしてやろう。

そう考えて、口をつけていなかった紅茶を一口。


そういえば、今日は気分を落ち着かせるためにハーブティーを用意していたのだった。

口の中に広がる香りが、煙草の味を思い出し逆効果に終わる。


「今日は厳しくしますね、カニバル先輩」

「おや、なんだい。逆切れかな?最近の若人は怖いなぁ……そんなんじゃやっていけないぜ?魔女後輩」


こうして、少しだけ恥ずかしい夜を過ごした僕は。

いつもよりも厳しくした訓練の所為でへとへとになった先輩をおぶって帰ることになった。


それが飲み会帰りの知り合いに見られてひと悶着あったことは……また別の話だ。


もう一話、別で書いてる話があるんですが……そっちは後輩くんが動いてくれないというか、度々フリーズしちゃってるので、もう少しかかりそうです。

話のテーマ的には【男たちの会話】とかそんな感じになります。

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