Story 0 【いつもと違う夜を】
殺伐魔術の方も更新していますが、こちらも書きたかったので並行しながら書いていこうと思います。
初めましての方はこれからどうぞよろしく、殺伐魔術を知っている方はこれからもよろしくおねがいします。
感想やご指摘、評価もよろしくお願いしますねー^q^
これは、単純に言えばただただ雑談をするだけの話である。
「おや、今日も君は背が高いね」
「そういう貴女は今日も伸びてないッスね」
これが普通の男女がただ雑談しているだけならば、そこまで注目する必要はないのだろう。
しかし、彼らは普通ではない。
背の高い男はといえば、まずまず見た目がおかしい。
濡れ羽色のとんがり帽子に、同じ色のローブ。右手に箒、左手には年代物のランタンを持ち、足元に黒猫を連れている。
ファンタジーなどに登場する所謂『魔法使い』と似たような姿を、彼はしていた。
もう一方の女性の方はといえば。
姿自体はどこかボーイッシュではあるが、黒く長い髪に整った顔立ちをしている。
しかしながら、手に持っている物が異常だった。
普段見慣れているが、決して手に持つと言う表現はしないであろう物。
それは人間の腕だった。まだ血の滴るそれを隠しもせずに、彼女は話を続ける。
「で?今日もあれかな?また注意?忠告?」
「まぁそれもあるんですけど……どうせ聞かないと思うんで。お茶でもしながら、短く雑談でもしましょう」
「あぁ、いいね。これだけだと流石に口の中が鉄の味でいっぱいになっちゃうんだ」
場所は墓場。
足元には新鮮な人間の死体がある以外には普通の地面。
男が指を鳴らすと、そこに虚空からティーテーブルと二人分の椅子が出現する。
お茶会の準備だろう。手に持っていた箒とランタンはいつの間にかティーポットとカップへと変わっていた。
「さぁ、お話しでもしましょうか。カニバル先輩」
「そうだね、今日も食事の御供にさせていただこう。魔女後輩」
彼らが始めるは夜のお茶会。
墓場に静かに響く二人の話声は朝方まで続く。