第2話.俺の王ではない!
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「御自身のステータスは御確認いただけましたか?御確認いただけましたら、ステータスについて詳しくお教え致します」
ステータスを確認し終えたところでルナが尋ねてきたので、頷いておく。
ルナの解説によると
『State』は自分の状態。毒状態なら“毒"、火傷をすれば“火傷"と表示される。
『Skill』は魔力を使わずに扱える技。先天性の物もあるが、ほとんどが後天的に身に付けた技術。スキルとして身に付けることで補正がかかる。
『Magic』は扱える魔法の属性の種類。
『Weapon』は所持している武器の種類。
『Armor』は装着している防具の種類。
『Title』は獲得した称号。
また、ステータスに表示されていることで詳しく知りたければ、ステータスを表示している状態で知りたいことを意識すればいいらしい。
ステータスはどうやって閉じるのかと思えば、勝手に消えた。閉じようと思えば閉じるみたいだ。
もう一度開いて確認する。まずは武器から。
聖剣セプタレム(ノーマル) : 変化の聖剣。不壊。魔力回復。ノーマル状態。剣を鞘から抜く前に柄を持って魔力を通すことで、様々な武器に変化する。鞘に戻すと解除される。
魔法の鞘ヴァサナ : 魔法で作られた鞘。不壊。魔力回復促進。自然治癒促進。瞬間砥石。アイテムボックス。
瞬間砥石 : 刃物の切れ味を一瞬で戻す。付与されているものに収めることで自動で発動する。
アイテムボックス : 空属性魔法。異空間を作り出し、そこに生き物以外を収納できる。
鞘の“瞬間砥石”と“アイテムボックス"が気になった為それを意識すると、非常に便利な能力だった。アイテムボックスは鞘さえ持っていれば他に荷物を持たなくて済む。
次に防具。
異世界の鍛錬着 : 異世界で使われている鍛錬着。“道着"、“袴"と呼ばれる。
これについては特に何もない。
三番目にスキル。
魔力生成 : 異世界から召喚された者は身体構造が違い、魔臓がないため与えられるスキル。魔力を生成する。
魔力の器 : 異世界から召喚された者は身体構造が違い、魔臓がないため与えられるスキル。生成した魔力を溜め、魔法を使えば溜めた魔力が減る。
精神異常無効 : 精神魔法を無効化する。
観察眼 : よく物事を観察する能力。相手の考えを読むことに補正。
剣術 : 剣の技を修めた証。剣の威力、速さ、命中率に補正。剣を持っている状態で身体能力に補正。
弓術 : 弓の技を修めた証。矢の威力、速さ、命中率に補正。弓を持っている状態で身体能力に補正。
槍術 : 槍の技を修めた証。槍の威力、速さ、命中率に補正。槍を持っている状態で身体能力に補正。
薙刀術 : 薙刀の技を修めた証。薙刀の威力、速さ、命中率に補正。薙刀を持っている状態で身体能力に補正。
合気術 : 合気の技を修めた証。剣、杖の威力、速さ、命中率に補正。素手または剣、杖を持っている状態で身体能力に補正。
四番目に魔法。
火属性 : イグウィスの加護。火の魔法が使える。
水魔法 : アクディアの加護。水の魔法が使える。
地属性 : テラウィスの加護。土の魔法が使える。
空属性 : スカイディアの加護。空間の魔法が使える。
光属性 : ラディアの加護。光の魔法が使える。
闇属性 : テネウィスの加護。精神の魔法が使える。
聖属性 : サンディアの加護。浄化の魔法が使える。
イグウィスやらアクディアやら知らないのがあるが、加護とあるし神の名前だろうか。
五番目に称号。
勇者 : 聖属性の保持者。選ばれし者。勇者召喚によって連れ去られた者。
気になる言葉があった。
「連れ去られた」。ルナは召喚に応じたと言ったが、やはり無理矢理連れてこられたってことか。
最後に状態。
これが一番気になっていた。なんだ、???って…。
??? : 詳細不明。
…まあ、この結果はある程度は予想通りなんだが…。
「お分かりになりましたか?」
「ああ」
「でしたら、宜しければ勇者様の聖剣の名前をお教えいただけませんか?」
「その前に勇者様と呼ぶのはやめてくれ。俺の名前は“楠木勇人"」
相手の名前で思考を縛る魔法というのを小説で読んだことがあった為、初めは名前を教えることに抵抗があったが、精神異常無効があるので問題ないだろう。
「ユウト様とお呼びしても?」
「好きに呼んでくれて構わないが、様付けはやめてくれ」
「では、ユウトさんと」
すると、周りにいたローブの集団から動揺していることに気付いた。
ルナもそれに気付いたのだろう、表面上は先程の不安そうな表情ではなくニコニコと笑顔だが、僅かだが怒気が漏れる。
ーーー少し突いてみるか
「なんだか周りが動揺しているように感じるが?」
ルナの顔が少し引きつる。
「…ああ、もしかしたらユウトさんの名が、勇者、に似ているからではないでしょうか?」
「それにしてはローブの彼らから特に感じたが?」
「それは気のせいでしょう。私はユウトさんの名が勇者に似ていて勇ましく感じます。ねえ、魔術師様?」
ルナが魔術師と呼んで同意を求めると、ローブの集団がコクコクと頷く。
「…そうか、俺の勘違いみたいだな」
あまり突き過ぎて蛇が出ても困る。適当にはぐらかす。
「ところで武器の名前だったな。この剣はセプタレムというらしい」
「セプタレム、ですか…」
聖剣の名を告げると、落胆の空気が流れてくる。感情を上手く隠していたルナからもその気配は窺える。
「どうしたんだ?」
「い、いえ…。ただ、過去の勇者様方の聖剣は“剣の分裂"や、“剣を自在に伸縮させる”等でしたので…えっと…」
どうやら聖剣の能力が不満らしい。
「つまり、それらに比べてセプタレムの能力が見劣りするってことか?」
「…はい。正直に申しますと…。変化した後も、言ってしまえば“ただの壊れない武器”で御座いますし、それに魔力回復が付くだけですので…」
確かに分裂やらに比べれば地味かもしれないが、俺にはこれが合っているし、臨機応変に対応できて十分に強いと思う。
何が強いかなんてのは人それぞれだ。俺からすれば武器が分裂したり伸びたり飛んだりするのは感覚的に馴染むのに時間がかかるだろう。
それなら、変化した後は普通の、馴染みある武器が良い。
まあ、魔王と戦うと思っている相手からすれば強い武器を持っているに越したことはないだろう。
というか、まだ魔王と戦うと決まったわけではない。こっちは睡蓮と恋人になったばかりだというのに…。
「落胆させているところ悪いが、そもそも魔王と戦うことは了承した覚えはない。還してくれ」
「えっ…?」
落胆から一転、ルナが呆けた顔をする。
「本当に、戦っていただけないのですか…?」
「申し訳ないが、俺が命を掛ける理由がない」
「…そう…ですが…」
魔王に怯えていると聞いていたので本当に申し訳なく思いはするし、人助けなんかは進んでやるようにはしていたが、俺だって聖人君子じゃない。
何の理由もなく、「命を掛けて戦って、知らない我々を助けてください」といきなり言われても、「はいそうですか」と了承できない。
ここからどうやって元の世界に還してもらおうかと思っていると
「もうよい!お前は下がれ!」
という声が玉座から聞こえてくる。
声の主はユーグ・ヴィ・ピティス=ゲルトン。つまり国王だ。
「ユウトとやら、元の世界に帰りたいようだが、我々に還す魔法はない。その魔法は魔王が持っていると伝えられている。帰りたくば魔王を倒せ!これは王命でもある!」
国王のその言い方にカチンとくる。
「折角の王命ですが、そもそも俺はゲルトン王国の人間でなければ、この世界の人間でもないのです」
「貴様、何が言いたい」
「俺に従う義務はない、ということです」
「我は王ぞ!」
「確かにあなたは王だが、この国の王だ。俺の王ではない!」
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