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お茶会のお誘い

女の子が来てみたい服・・4位ぐらいにメイド服は有るはず(≧▽≦)。

 聖女様はソファに深く腰掛けると、静かに目を閉じた。


『なんだか疲れた終電のリーマンみたい、TVでしか見た事ないけど』

詩乃は声を掛けられるのをジッと待っていた、此処でのマナーでは目下の者からおいそれとは声を掛けてはいけないみたいだし、聖女様は声を掛けずらい雰囲気を醸し出しているし・・。

それによく考えてみたら、彼女とは友達でも知り合いでも何でもなかった。


「この何日かの間、王家を初め有力者と言われる方達に御目にかかり、一通りの挨拶を済ませてきました。それが終われば、この世界の事を学ぶ時間を作れると第2王子に言われたからです。何処の派閥にも属さない事を、態度で示してきたつもりです。私だけで事は済むはずでした、人に値踏みされるようにジロジロ見られるのは、正直言って気持ちの良い物では無いですからね」

目をつむったまま話す聖女様。

詩乃の知らない間に、聖女様も相当ストレスを溜めていたようだ。


女官長がお茶を入れ始める、寝る前なのでハーブティーみたいだ、香りが良い。

「お嬢様が焼いた、リンゴンのパパイでございます」

そう言って、小さく切られたアップルパイを差し出した。


聖女様は目を開けると、無理をしているように薄っすら微笑んで

「美味しそうね」と、力なく言った。


「お嬢様が無断で改造された衣装が評判を呼びまして、お茶会のお誘いが聖女様共々きております」

冷たい視線を詩乃にくれると、女官長が話し出した。


『女官長さんの目、瞼に埋もれていると思っていたけれど・・開くんですね』

詩乃は碌に話を聞かず、余計な事を考えている。


招待主は公爵令嬢、王子たちの幼馴染で両方の婚約者候補だと言う。


『悪役令嬢?』


「私は(あんな)王子達に思う所など(これっぽっちも)無いと言っているのに、いちいち絡んできてウザイ(面倒臭い)ったらありゃしないのよ』

聖女様の心の声がダダ漏れで居た堪れない、虐めでも受けているのだろうか。

心配そうな詩乃の視線に答える事もせずに、女官長は再び目を瞼に埋もれさせた。


「私が隙を見せないから貴方を巻き込みに来たのよ、恥をかかせようと何か仕掛けてくるはずなの、断れればいいのだけれど・・公爵家が多額の寄付をチラつかせて圧力を掛けて来るから、神殿長には泣き付かれてるし・・もうウンザリよ」

吐き捨てる様に言う聖女様、確かにあの神殿長に泣かれると断り難そうだ、見た目はサンタさんみたいな好々爺だしねぇ。


「う~ん、基本的に言葉が解らない振りをして、微笑んで座っていれば良いのならおkですけど、こちらの対貴族用のマナーとか知りませんし」

暖簾に腕押しでガッカリさせる自信ならある、中学生のスル~力を侮ってはいけない、詩乃は両親・爺婆の説教を右から左へと流すスキルも習得しているのだ。


基本的なマナーなら私がお教えしますと女官長の目がまた開いた、重要事項の通達時に目が開く様だ。

お茶会まで4日間、ドレスコードはゴスロリ、リメイクするにもギリギリだね。

『はぁ~っ』

詩乃と聖女様は二人で盛大にため息をついた。


    ****


 聖女様とご一緒 IN 馬車の中である。

この馬車どの様な仕掛けなのかピクとも揺れない・・この前乗った馬車は何だったのか?酷い揺れで酔ったんですけど。何?この待遇の格差、オマケの我が身にしみじみとする。


本日のイベントはお茶会との事で、聖女様は肌の見えないドレスだ。

そう、ルネッサンスの頃のベネチアの貴婦人みたいな、ロミジュリのジュリエットみたいな服?と言えばいいのかな?落ち着いた深緑色で、庭に潜めば保護色になりそうだ。出来るだけ王子達&腰巾着共とは関わらない方向で行くと言う、この短時間でこれだけ嫌われるのも、得難き才能ではあるまいか?①と②よ。あんたらいったい何をした?


オマケの詩乃はメイド服である。

御伴と言えばメイドでしょうアキバ系のスタンダードだ、こちらのメイドのお仕着せはロミジュリの頃の使用人服を少し派手にした感じで可愛い物では無い。黒のメイド服は襟と袖に白いカフス、白のフリル付きのエプロンに、頭にはホワイトブリム。リアル・シャアー〇ーである。〇マでも良かったが、裾の丈が違うので諦めた。


意外だったのは私の御伴にミアが行きたいと言い出した事だ、貴族の御曹司の集まりに行ってみたいらしい、結構可愛い顔をしているからね目指せ玉の輿なのだろう。服を貸せと言われたが、前にリメイクしたロリ服では胸がきついと言う。


ムキーッ!


ミアの裾はふくらはぎのミモレ丈だし、詩乃とは仕様が違う。

自分でリメイクするならどうぞと言ったら、タンスの中から一番派手なゴスロリを持って行った、真っ赤だってさ・・悪目立ちしたらどうするのだろう?

まぁ、自己責任でお願いします。

二人で裁縫室に籠り無言で作業する、ミアは器用でなかなか上手にリメイクしていたが、半魚人のフリルに思うところが有るのかそれを取らずに温存していた。結局は女官長のチェックで駄目出しをされて、泣く泣く外していたが。あんな半魚人みたいなフリルでも、貴族のお嬢様の目印で、重要なアイテムなのだなぁと改めて思った。


 そんな四人で馬車に乗っていると、

聖女様>女官長>ミア>私・・・の序列に見える。

髪が黒いから、聖女様のオマケとバレてしまうが、出来る事なら面倒臭い挨拶などミアに任せてしまいたい。


 やがて馬車の中から王宮のホールが見えて来た、薄い黄色み掛かった大理石の様な石で造られている。黄金色(実際には薄い黄色なのだが)は王家の象徴の色であるそうだ。聖女様は王宮の外に出る事は叶わないので、公爵が王宮のホールを借り受けてお茶会を開催するらしい。ホールでお茶会?何人ぐらい貴族が集まって来るのだろう?大層な規模に見える。

駐馬車場?に入いったようで、数多くの馬車が止められている所に着いた。

馬車の間を縫うように、聖女様の馬車がホールの玄関に近い奥の方まで進んで行く。下級の貴族程遠くの場所、ホールの入り口まで歩く距離が有る様だ。

外を眺めているミアの鼻が何故だか膨らんでいる様だ、興奮でもしているのだろうか?女官長の埋もれている目が、そんなミアをジッと見ている・・なんか怖い。



    ****



 ホールに着き、聖女様が馬車を降りようとしたらエスコートに②が現れた。


『むむむ?落ち着いた赤レンガ色のダブレットを着ているだと』

あんたは聖女様の補色かい?事前にドレスの色を知っていたのかな?

2人はホールの中ほどを静かに進んで行く、女官長は彼らの後を付いていった、詩乃は置いてきぼりである・・安定の影の薄さ。


会場の奥にはすでに①の派閥の塊が形成されているようだ、チラチラと主役の2人を眺めている。パシリでも派遣して、どうにか自分の所へ呼び寄せたい(自分から行くのはNGらしい)様だ、貴族達の駆け引きが始まる。


貴族が沢山集まったら嘸かしノイズが五月蠅かろうと、悲壮な覚悟をしてやって来たのだが、ノイズは思っていたより気にならなかった。TVのホワイトノイズくらいか?メイド服の彼方此方に、量産したオニキスを隠し縫い込んでおいたから、その効果なのかもしれない、トゲトゲも我慢出来ないほどの痛さではない。


=詩乃先生のオニキス実験結果では、平民のA級ぐらいならノイズもトゲトゲも気にならなくなった。現在の離宮で軽いノイズ持ちなのは、女官長と一部の女官ぐらい、②たちが来なければ平和なものである。=



 いつの間にかミアがどっかに消えてしまったので、一人で壁に張り付くべく移動を開始する。ひたすら目立たぬように、私は忍者の国の人だもの~っと影に隠れて、お菓子の一つも食べてやろうと思っていたら、突然半魚人軍団に囲まれた!


『不覚!むうぅ、パシリの下級貴族か?ノイズも少ないから気が付かなかったぞ』

それにしても本当に見分けが付かない、メイクも流行りなのだろうか同じ仕様で、付け黒子なのか全員泣き黒子が有る、泣き黒子愛好会か?個人識別も個性も皆無だ。一人の半魚人が何か喋って、詩乃の頬をハンカチで擦った。痛い!


『それ違うから、左頬の黒子は本物だから』唖然とする詩乃。


何やら、ほほほ・・・と、愉快そうに笑いだす半魚人達。

付け黒子の位置で、隠された意味でもあるのかなぁ・・・迷惑な話である。

あれよあれよという間に連行されて、半魚人の親玉?の前に連れていかれた、ソフトクリームの様な渦巻く髪にプラスチック製の様なお子様ビーズが盛られている。


『ダサい』


周りの半魚人達がヘコヘコしているので、この人が公爵令嬢に違いない

『悪役令嬢にしては、貫禄が(物理的に)ありすぎる。大量に付いたフリルのせいで、余計ガタイが大きく見える、残念臭が漂うお嬢様だ』

詩乃は女官長に教わった通りに、極力優雅にカーテンだったか、カーテンシーだったかをした。


くすくすくすくすくす・・・・扇で隠しての忍び笑い。


『う~~~ん、優雅に感じ悪いね』

半魚人軍団を後ろに従えて一人優雅にソファに座っている公爵令嬢、詩乃真ん中に立たせた、ぐるりと周囲を囲むようにご歓談だ。う~ん、悪役にしか見えないだろう、ロットワイラーが柴犬相手に眼飛ばしている様だ。

遠くにいる聖女様が、詩乃を気にしてハラハラ見ているのが解る、彼女も周りを囲まれていて、こちらに近づけない様だ。


『大丈夫』詩乃は目線で合図した。


暫くの間半魚人達は<異世界人>の鑑賞会を楽しんでいたようだが、詩乃が微笑んだまま目線を下に向け、一向に反応も返さないので飽きてきたようだ。


『よしよし、このまま飽きてどっか行ってしまえ』

願いもむなしく、半魚人共は詩乃を連行したまま移動をし始めた。

何処に連れて行くのか・・少々不安に思っていると、ホールの片隅で音楽を演奏している一団がいた。


『おぉう・・・生演奏だぁ~、凄いね』

詩乃の知ってる楽器に似ている物もある、界は変われど似たものはあるらしい。

中央では可愛らしい半魚人・ミニがピアノを演奏している、聞いたことが無い曲を、なかなか上手に弾いている。当人も自信があっての演奏なのだろう、演奏会所の隅に両手を胸の前で祈るように組んでいる半魚人(若奥様風)がいる、あの子のお母さんなのかな?子供の演奏にドキドキするのはお約束だね。


演奏が終わって大きな拍手が贈られた、ミニの頬がピンクに上気していて可愛らしい。誇らしげに、カーテンシーをすると楚々と退場していった。優雅に歩いていたが、お母さんの傍に近づくと小走りに駆け寄りハグしあっている。



『お母さん・・・』

2人をボケッと見ていた詩乃だったが、強く腕をひかれて意識が戻った。

『はぃ?』

下っ端の半魚人が悪い笑顔で、詩乃の腕を引っ張っている。

半魚人軍団がザッと空間を開けて、1本の道が開かれる・・・その先にはピアノが有った。


≪恥をかかせようと、何か仕掛けてくるはずよ・・≫



これでしたか・・・。

半魚人が集団で登場だぁ。


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