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聖女様を探せ

ストーカーとマメな人の違いは・・・なんでしょう?

 「聖女様が消えた・・・?」


何を馬鹿な事を・・まだ神殿の裏口近くで、火花を飛ばし合っていた神官補佐達と女官長達は、怪我んな顔で問い詰めて来た侍従を見つめた。


「聖女様はすでに神殿騎士にエスコートされ、正門近くの貴族用玄関から出立された筈ですが」

「其方は、それを見届けたのか?まだ玄関に到着されていないから念の為に確認に来たのだ!」


女官長と神官補佐の顔色がサッと変わる、確かに確認は怠っていた。案内に付けていたのは、まだ年若い傍付のケイだけである。


「神殿騎士は、騎士はどうしたのです!?玄関の周りは彼らが沢山警備していたでしょう?」

慌てて、補佐が騎士を探す。いつもは壁に描かれた絵の様に、存在感も無くそこいらじゅうに居たはずなのだが。・・何故か、ひとりの騎士も居なかった。


「どういう事でしょう・・何が起こっているのでしょう・・」

聖女様・・まだ年若い可憐な少女を思い浮かべて、嫌な胸騒ぎを必死に否定する。


「聖女様はこの世界に、無くてはならないお方。滅多な事は起きないとは思いますが・・」

「では、そなたは聖女は攫われたと申すのか?自分から、隠れたのではないと言うのだな」

「聖女様は、そんな無責任なお方ではありません。完璧に神言を覚えられた方など、此処数百年おられませんでしたでしょうに。就任式も終えた今更、責任逃れの様に逃げ隠れする方ではございません!」


・・・神官補佐の話を聞きながら、女官長はまた違う事を考えていた。


『王宮に向かうにしても、まだ早い時間だ。寄り道しようと思えば出来る余裕は有った、神殿騎士は、聖女様の意向に絶体服従と聞いている』

もしや・・・。女官長は嫌な予感を覚えながら、神官の制止を振り払って神殿を突っ切り、最短の道で正面玄関まで戻った。


「女官長!どう言う事だ!!」

怒髪天とはこの事か、玄関の前では第2王子が地団駄踏みつつ待っていた。

いや、物理的に・・②の短い前髪が、ワックスで固められたのか逆立ってツンツン立っている。ちなみに横と後ろの髪は、黒のリボンでまとめられていた。聖女の黒髪を意識したのか?キモイ。

出来る男のイメージに苦しんだ、侍従たちの苦肉の作品なのだろう。・・出来る男か?どう見ても、我儘ワンコが髪を逆立てている様にしか見え無いのだが・・・。


「お静かにお願いいたします、魔力を押さえて下さい」

話をしようにも、怒った王子の魔力がダダ漏れで神官達はすでに青息吐息の惨状だ。


「神殿騎士の姿が1人も見えません。どう言う事でしょうか?軍に何かご指示を出されましたか?」

軍と聞いて、②の顔色が変わる。


神殿騎士は、騎士としては適性の乏しい魔力の弱い無害な者を配置してある。

しかし1部には、能力が有りながら上官の指示に従わないなど、アクの強い扱いにくい者も居るのだ。そんな厄介な者達を見張る為、目の届く所に置いておく為に、あえて無害な神殿に配置しているケースもあるのだ。たしかに面倒な奴が何人かいる、たしかプマタシアンタルの異母兄弟が神殿騎士の筆頭だった。憎らしい事に神殿側の代表として、聖女のエスコートを何度か務めていた。物腰の柔らかい気障ったらしい優男だったが、もしや・・聖女はああいう男が好みなのか!脳内妄想が暴走しかけている。


ぐぬぬぬ~~~。

「青と赤騎士はどうしている、通常の業務を続けているか。今すぐ確認しろ」

王子の秘書官数人が、それぞれ馬を返して走り出して行く。


『・・軍部に不満が有るのは承知しているが』


②は詩乃に糾弾された後、一応文官達に指示を出し平民騎士の不満を調べさせてはいた。まぁ、調べただけで、何も手を打たなかった訳だが・・・。

貴族の指示に平民が従うのは、当たり前の事だと思って今の今まで生きて来た男だ。急に意識を変えろと言われても、そう簡単には今までの常識は変えられない。


『正直言って動く気も無かったのだ、たかがオマケのチンチクリンが言った事に、王子ともあろう俺が何故煩わされねばならないのか!』


「王子様、気になる事が御座います」

女官長が近づいて来た。


「聖女様は、御仕度を例の少女に手伝わせるおつもりでした。風邪をひいたと誤魔化しましたが、居ない事に不信感をお持ちのご様子でした」

「離宮に寄ったとでも言うのか?」

「もしもの事が御座います、白騎士は聖女様のご意向を第一に考えますから・・或いはと」


あのチンチクリンめが、何処までも煩わしい・・・。

「馬車を出せ離宮に向かう!神官共は、神殿に聖女が残っていないか、今一度確かめよ!」

➁は馬車に女官長と駄犬を乗せると、離宮に向かって走らせた。


・・・聖女が失踪してから、②が騒ぎ始めるまで、わずか5分。

白騎士サイドとしては、かなり早い時間で事が発覚してしまったのだが・・本来ならもっと時間が稼げるはずだった。堪え性がない②が辛抱タマランと、白騎士がエスコートする予定を無視し、一刻も早く聖女に会いたがって神殿に押しかけて来た為に発覚が早まってしまった。

まさか犯人側も、王子がこんなにもストーカー体質だとは思いもしなかったに違いない。



馬車の中でイライラしながら②は考える。

『誘拐などとなったら大事だ・・聖女に被害が出ればそれこそ一大事だ。犯人は見当も付か無いが、聖女を欲しがる輩は山の様にいる。王族の日陰者の傍流でも、聖女を手に入れれば王座に返り咲くことも吝かではない。それとも魔術師達か?彼らも聖女の魔力には惹かれていた。聖女を頂きに据えて権力を持つこともを夢見ている神殿も怪しい。』

・・嫌な事ばかり思いつく。

『真に王族に敬意を払い、服従している貴族のなんと少ない事か。平民も又しかりだ、どいつもこいつも文句ばかり言いやがって・・』

②が、盛大に憤りを噴出している間に離宮に到着した、神殿と離宮は目と鼻の距離である。



「早く扉を開けろ!」

離宮は詩乃の逃亡防止の為に、魔術具を使い念入りに施錠されていた。

見た所、術を破られ扉を開けられた形跡は無い。


「何だって、其方はこんなに厳重に鍵を掛けているのだ。相手は魔力の少ない小娘だろう、聖女がこれを見たらどう思う?其方の独断でしたと聖女には説明せよ」

②は保身に走った・・どれだけ聖女様に嫌われたくないのか。


扉をやっと開け、中に入る・・・離宮の中は冷たく湿って、空気も重く異様な雰囲気だった。


「これは、どうした事か?」

「聖女様がお留守の間は、空調の魔術具も切ってありますから」省エネだ。

女官長の言葉に駄犬が反応した、

「では、あの娘の部屋はどうなっているのだ?春が早い今では、まだ朝晩に暖房も必要だろう」


女官長は何も答えず裁縫室に向かって急いで歩いた、日陰の窓には霜も付いている、平民の・・貧乏貴族の家では良くある事だ。このぐらいの事で騒ぐとは、あの忠犬も育ちの良い事だ。女官長は鼻で笑った、王子が命じて小娘を僻地に嫁に遣れと命じたのではないか、僻地の暮らしはこんなものでは済まされ無い。

・・世間知らずのお坊ちゃまが・・何故、騎士に造反される?坊やだからさ。




裁縫室の前に着いた②は、またしても絶句する。

取っ手に巻き付けられた鎖と、打ち付けられた板・・軍の懲罰房でももう少しマシだ。


「此処に来た形跡は有りませんでしたね、とんだ無駄足でしたか・・」

思い違いの様ですと、女官長が玄関に戻ろうとした時。


「いや、あいつは聖女の事を一番理解している奴だ。何か思い当たることが有るやもしれん。プマタシアンタル扉を破壊せよ。チビ!扉の近くに居たら離れろ!やれ!!」


忠犬で・駄犬のプマ(以下略)は、破壊活動は得意だった。

ドーーーーンンッ・・扉と言うか、扉の周囲の壁ごと木っ端微塵に吹き飛ばした。


「ゲホ ゲホ ゲホ・・・」

咽る女官長、身体は埃で白く覆われ、髪には木っ端が刺さっている。

②と破壊の当事者は周囲に結界を張って無事の様だ、仕方が無い事なのだ、②は基本聖女以外には優しくないし、駄犬は②以外を庇おうなどとは思い付きもしないのだから。駄犬は風を使い舞い上がる粉塵を強制的に玄関の方に流した、そうして飛び込んだ裁縫室には。


「・・なんなんだ、これは」

色々とごちゃごちゃ置かれていた道具や布など・・備品が、キレイさっぱり無くなっていた。


「どういう事なのだ、チビは何処にいる!」

裁縫室の中はガランとして、人がいた形跡も温かみも何もなかった。

机の上に<空の魔石>と質の悪い、いかにも平民が使いそうな紙が置いてある。


「置手紙か・・・?これは、聖女の世界の文字か?」


不思議な文字を近くで見ようと、手を出して触ろうとした瞬間、バチッと音がして手が痺れた・・弾かれたのだ、それは魔力で押し負けた事を意味する。

②の顔は、怒りで真っ赤に染まった。


「何なんだ!これは!どう言う事だ!どこまで俺を馬鹿にする気か!」

怒り狂って地団駄を踏む、椅子を蹴り飛ばし、机をひっくり返そうとして、また盛大にバチバチバチ・・・っと痺れた様だ。


「ゆるさん、ゆるさん!!ゆるさんぞ~~~~~」


離れて、扉(元、現・・穴)の近くで見ていた女官長は思っていた。


『お小さい頃と、少しも変っておられない。癇癪を起して、地団駄を踏んで、疲れ切るまで騒いで・・泣きながら眠り、そして決して忘れず恨み続けるのだ』


女官長は②が小さかった頃(躾が成っていなくて、面倒臭かった頃)ブラック人事で②の女官として傍に付いた時期が有ったのだ。権力を持つ小猿が人間に近づき、幼児から少年となり、話が通じる様になった頃にはお払い箱となったのだが。

幼児の頃にはもう傍に居た忠犬の駄犬も、➁の癇癪には慣れているのか騒ぎが収まるまで待つ体制だ・・仕方が無いのだろう、こうなった王子は誰にも止める事など出来ないのだから。



「うわ~ドン引き~あれが王子様だって、何この王家ブランド殺し」


探していた小娘が、いつの間にか裁縫室に現れ・・・王子に毒を吐いていた。


詩乃がやっと裁縫室に着きました。

実はかなり早いのです・・・オラに力を貸してくれた空の魔石が有ったので。

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